2010年10月31日日曜日

相可高校監修の「和風ご飯弁当」に思う



 今日、近所のスーパーに買い物に行ったら、三重県立相可高校の監修によるというお弁当を売っていました。

 相可高校は、数年前に食物調理科が設けられてから、一躍、三重県を代表する高校に大躍進した感があります。料理の技術を身につけようという意欲の高い優秀な入学者が多く集まり、今や高校生を対象とした技能コンクールの入賞常連校になっています。卒業生の多くがホテル・レストラン業界に迎えられているほか、地域とタイアップした特産メニューの開発などの地域連携にも学校を挙げて熱心に取り組んでおり、同校の地元である多気町には常設のレストラン(まごの店)まで建設されています。

 このお弁当も、それに目をつけたスーパーが同校とタイアップして開発したものでしょう。(500円と、値段はちょっと高めでしたが、スーパー弁当に多いパターンである揚げ物がなく、焼き魚とか煮物などヘルシーな献立で、大変おいしくいただけました。)

 相可高校のこの戦略は、製造業からサービス業への産業構造の転換が不可避な三重県をはじめとする地域社会において、非常に意義深く、示唆に富むように思われます。

 職業高校が花形だった昭和40年代までは、右肩上がりで拡大していく生産や取引に従事する単純労働者や技能者として卒業生が重宝がられたからです。しかし経済が複雑高度になり、大学卒業生が多くなると、技能者の地位は次第に大卒者に奪われ、職業高校は低迷の時代に入ります。

 しかし、製造業からサービス産業への産業構造転換が進むと、決めたれたルールに従って、決められた仕様の製品を正確に作り続けるスキルとは別の能力が労働者に求められるようになるでしょう。すなわち、一定水準の技量や技能に加えて、提供するサービスの中に自分なりの工夫や創造性を加えることが求められる(「アドリブが聞く」)局面が大きくなってくることと思います。

 一般的に、体で覚えることが必要な技能は、トレーニングを始める年齢が早いほうが良いですから、調理の知識や技術の訓練は、相可高校がまさにその役割を果たしているわけです。

 次に必要になるのは発想やひらめきといった創造性の開発トレーニングですが、これは高校はもちろん、大学でも専門的にカリキュラムとしているところは、まだないのではないでしょうか。

 イノベーションは単なる発明やひらめきとは別次元のものですが、今まで自分が持っていた知識や仮説が、ある時点で重層的に一つにつながり、まったく新しい展望が開ける創造的瞬間(石井淳蔵氏のいう「ビジネスインサイト」)はイノベーションに欠かせない要素です。一概には言えませんが、高校時代に技能は習得し、次にそれをビジネスとして高度化させるための発想方法などを、大学や社会人教育で行う、という役割分担を、新しい教育システムとして制度設計していくべきです。

 教育の荒廃が言われますが、これは教師の質が下がったとか、モンスターペアレントのせいだとかの前に、社会の変化に対応できていない(集団行動的な)学校教育のスタイルとか、産業構造のサービス化に対応できていない(暗記重視型の)カリキュラムに原因があることは間違いないと思います。



2010年10月30日土曜日

台風の中、東京に行った



 台風14号の影響で伊勢は朝から雨でした。しかし風はそれほど強くなかったし、意を決して出発。
 今日は、東京ビッグサイトで第25回日本国際工作機械見本市(JIMTOF)が開催されているのと、御茶ノ水の明治大学で第11回政策メッセが行われており、一回で二つの仕事ができる、いわば一粒で二度おいしい状態の日程だったので、台風の中、あえて東京に行ってきました。

 JIMTOFはともかく、政策メッセは相変わらずマニアックなテーマの分科会が色々開かれており目移りしたのですが、仕事に関係ありそうな「サービス産業の活性化に向けて」というセッションに参加してきました。

 このブログでも何度か書いていますが、経済のサービス化が進むと、商品価値の本源は「モノ」ではなく、そのものが持っている「モノガタリ」に移ってきます。

 物質的な豊かさはある程度充足してきたので、物質以外で充足される心の豊かさとか、ゆとりとか、優越感とか、そのようなコンテンツに消費者はお金を払うようになります。
 産業構造が、モノの収穫産業(農林水産業)や製造産業から、サービス産業、もしくは収穫+サービス、とか、製造+サービスのような産業形態に代わってくるわけです。

 しかし、サービスは目に見えず(無形性)、あらかじめ作り置きしておくこともできません(同時消費性)。また、基本的にマンツーマンの、提供者と消費者が一対一で向かい合うスタイルの産業であるため、提供者の資質や能力、コミュニケーションのスタイルがサービスそのものの質を大きく左右します。
 このような中で、いかにサービス産業の生産性を向上していくかが、あらためて大きな課題として認識されるようになってきています。

 今回の政策メッセのセッションは、ある意味で、サービス産業の生産性向上にあたっての入り口レベルの議論という印象でした。 
 しかし正直言って、三重県内ではこのような議論をする場がほとんどないので、研究者からの報告を聞き、それを受けての会場での質疑応答が、限られた時間ではありましたが、新鮮で貴重なやりとりになりました。

 午後3時、セッションが終わって明治大学校舎の高層ビル(リバティタワーというそうです)を出ると、雨風が大変強くなっていました。

 東京駅に向かう車内で、東海道線は運転を見合わせているという表示があったので、東海道新幹線も止まっているのかなーと心配になりましたが、やはりというか、台風の最中でも新幹線はきちんと定刻運転していました。(ほんと、日本ってすごい国だな、と思います。)

 朝6時に自宅を出て、夜8時に帰宅。
 雨は上がったけど、東京の喧騒からは想像もできないほど静かで暗い伊勢市内です。


 

2010年10月29日金曜日

建設業はどう生き残るのか



 先日の三重県議会でも、構造的な不況に陥っている建設業(特に地域に根ざし、重要な地域雇用の受け皿になっている中小建設業)をどうするかというような議論が出たようです。

 以前から何度かブログでも書いているように、国民の高齢化が進み、医療費や年金に充てる国の支出が増大していく中では、公共事業費の削減はやむを得ない状況であり、それは回りまわって、建設業に依存している地域の経済をますます深刻化させることでしょう。

 そのような中、三重県では、11月5日(金)に四日市ドームで開催するリーディング産業展2010において「新産業進出セミナー」を開催します。
 地域を支える重要な産業である建設業の新たな展開を目指し、国土交通省が昨年度実施した「建設業と異分野とのコラボレーション促進支援事業」の成果をベースに、建設業が抱える現状の課題と、業態転換・新事業進出への取り組みなどを紹介するものです。

 建設業関係者はもちろん、地域産業やまちおこし活動などにご関心がある方にも有益なものかと思いますのでご紹介させていただきます。

◆開催日時:平成22年11月5日(金)13時00分~14時30分
◆会  場:四日市ドーム 第3セミナー室
◆講  師:宮崎 信行 氏
      株式会社テクノアソシエーツ 取締役 ヴァイスプレジデント
◆定  員:60名(無料)
◆参加方法:平成22年11月2日(火)までに申し込み要。
詳細は下記URLでご確認ください。
http://www.pref.mie.jp/SSHUSEKI/HP/leading/2010/annai2.pdf
●お問い合わせ先:三重県農水商工部 商工振興室
TEL:059-224-2227 E-mail:shinsan@pref.mie.jp

2010年10月27日水曜日

過去から学ぶ、「やっかいな隣人」との付き合い方



 遣隋使が隋の皇帝、煬帝(ようだい)に届けた国書の中に「日出る処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無き(つつがなき)や。」という一文があり、それを読んだ煬帝が激怒したというのは有名な話です。

 しかし、それは隋から見ればはるか辺境にある小国の日本の王が、中国皇帝だけに許されるべき「天子」という尊称を名乗ったことが不遜だと怒ったためであり、一般的に言われているような、当時の中国全土を治めていた隋帝国を「日が没するところ」と不吉に例えたことに対して怒りを買ったわけではないそうです。

 日出る処、日没する処、という表現は、「大智度論」という仏典に使われている表現を借用したもので、単に東と西の文飾に過ぎず、優劣の意味はないそうで、あえて日本がこの表現を使ったのは、日本では仏教が盛んであり、隋と信仰を共有していることをむしろ強調しようとしたためとも考えられるとのことです。

 このような逸話が数々残っている遣隋使、そしてそれを引き継いだ遣唐使について、基礎的な解説がされているのが本書「遣唐使」です。(東野治之著 岩波新書)

 先ほどの日出る処、の話のほかに常識として理解されている、たとえば、「遣唐使がよく遭難したのは当時の造船技術や操船技術が未熟だったためである」とか、「遣唐使は、第20回目(849年)の遣唐使に選任された菅原道真の建議によって、制度が廃止された」などの逸話も、史料をよく検証すると真実かどうかは疑わしいという、目からうろこが落ちるような話題がたくさん書かれており、それだけでも歴史ファンには興味深い内容と思います。

 しかし、昨今のわが国と中国の外交関係を考えると、飛鳥時代、奈良時代、そして平安時代と300年近くにわたって、日本の朝廷が巨大な帝国であった中国(隋。その滅亡後は唐。)との関係維持に、いかに腐心していたかにあらためて気づかされます。
 
 唐にとって日本は属国であって、日本の王(天皇)は唐の皇帝に定期的にご機嫌伺いの使者を遣わし、貢物を納めるべき立場でした。
 しかし、日本にとっては、少なくとも日本国内には「天皇は中国皇帝の家来ではなく、対等の関係である」と知らしめておくほうが統治しやすかったわけですから、あくまで強気のポーズをとっている必要がありました。
 この矛盾が、遣唐使にまつわる外交文書のやり取りや、唐における遣唐使一行の待遇などに大きく関連してくることになります。同時に、朝鮮半島の情勢も日中両国のパワーバランスに影響を与えます。

 当時の日本の支配層が、限られた情報源を駆使して独立を確保するのに奮闘するさまは、現代の外交に比べても数段センスが優れており、したたかだったような気にさせられます。
 それと同時に、仏教をはじめ、さまざまな文化や芸術、技能が遣唐使を通じて中国から取り入れられ、深く日本の社会に根ざしているかについても思いが馳せられます。


2010年10月25日月曜日

ベンチャー起業が映画になる国



 日本に比べて、必ずしもアメリカのほうが起業数が多いとか、いわゆる「ベンチャー」と呼ばれるようなハイテク型の起業が多いとかはないそうです。
 アメリカでも、新規企業のほとんどは小売業や飲食店などの既存型の業種であり、その半数は開業から5年以内に廃業か倒産しています。

 ただ、これは統計データというより印象とか実感に近い感覚の話になりますが、日本は社会が全般的に安定志向で、大学生もほとんどが卒業後は大企業への就職を目指し、自分で起業しようとする人は少ないし、社会の側も新規創業といったリスクの高いチャレンジは敬遠する傾向があるように思います。

 しかし、社会が変わるのは、革命とか戦争などといった政治的なアクシデントを別にすれば、その多くが産業界のイノベーション(変革とか創新などと訳されます。)によって、新しい商品やサービス、技術が供給され、人々のライフスタイルが変化することによって起こります。
 その意味で、創造性が高く、常に変化し、進化している生き生きとした社会は、構成員の年齢構成などのほかに、いかに起業やイノベーションが次々起こってくるかということと相関関係がありそうです。

 アメリカで最大の(というか世界で最大のSNSであるFacebookの創業者を主人公にした映画 The Social Network(ソーシャルネットワーク)が、来年早々日本でも公開されるようで、Youtubeに予告編がアップされています。
 アメリカって基本的に自己中心主義でダメダメな国だとは思いますが、世の中を変えたい、とか、お金をたくさん稼ぎたい、という本能的な欲望がオープンにできるし、リスクをとってそれにチャレンジする人をバックアップする態勢は、確かにあるのだなあ、と思います。


 
 Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグ氏は、ハーバード大学在学中の2004年に、友達をたくさん作る(女の子にモテる?)ことを目的に学内にソーシャルネットワークのサイトを立ち上げます。
 そのビジネスモデルが大ヒットして、2010年4月時点でユーザー数は4億人、サイトへの訪問者は毎月5億人という世界最大のSNSに成長し、創業者ザッカーバーグ氏の推定総資産額は約40億ドル(約3574億円)にまで膨れ上がっているということです。

 しかし、そのサクセスストーリーが映画になるというのは、彼が弱冠25歳で億万長者になったからという理由以上に、チャレンジする起業家への尊敬のようなものがアメリカ社会にはあるのではないでしょうか。
 リスク最小化が社会のコンセンサスになっており、危険性が少しでもあるものは取り除こうとする日本とは全く事情が違うようです。

2010年10月24日日曜日

上野天神祭と伊賀鉄道



 10月23日、24日、25日は伊賀市の中心地、上野(伊賀上野)地域における最大のイベントである上野天神祭が開催されます。
 今もそうなのかどうかはわかりませんが、以前聞いた話では、この10月23~25日というのは曜日に関係なく、この日にやることが決まっていて、平日の場合は学校も休みになり、職場や企業でも休暇を取る人が多いと聞いたことがあります。(もう事情は変わっているのかも知れませんが)
 今年はたまたま23日土曜日に、何も予定がなかったこともあって、天神祭の見物に上野に行くことにしました。



 Wikipediaその他の情報によると、
・天正13年(1585年)筒井定次が伊賀の領主となり菅原神社(「上野天満宮」)を祀ったことに起源を発し、その後、新たに領主となった藤堂高虎が天満宮の新改築、寄進等に力を注いだ。
・元禄元年(1688年)には復活し藤堂高久が祭礼を城内假御殿より見物、田楽、能、狂言等が行われ、三之町の鬼行列も始められたとされ、おおよそ現在の形態を整えた。
 とのことです。
 ちなみに上野天満宮は、かの俳聖松尾芭蕉が、伊賀藤堂家に仕官していた武士の身分を捨て、俳諧で身を立てることを決意した時に、自分の文運を祈願して「貝おほい」という作品集を奉納した神社としても有名です。寛文12年(1672年)のことだったそうです。
 
 はんわしが行ったのは夕方でしたが、旧市街地(伊賀上野は戦災にあっておらず、大路と路地が入り組んだ城下町の複雑な地割がほぼそのまま残っている)の辻辻に、「だんじり」と呼ばれる贅を尽くした山車が停められ、展示されています。
 これに明かりがついたり、巡行される様子は見事なものだったことでしょう。

 ■伊賀上野観光協会 http://www.igaueno.net/index.html

 さて、ここからマニアックな内容になります。
 上野は城下町で家屋が密集していており、近くに大きな川もあったりして、明治時代に鉄道が敷設された時、市街地を遠く離れた場所に駅が作られました。
 このため、駅と市街地を結ぶ軽便鉄道が敷設されました。これが上野のまちに風情を与えている伊賀鉄道です。長らく近鉄の支線でしたが、経営難から平成19年10月より伊賀鉄道という別会社となって再出発しています。

 実は、はんわしは伊賀鉄道になってからこの路線に乗ったことがなかったので、それも楽しみにしていた今回の訪問でした。
 三重県南部の住民にとっては常識ですが、例えば伊勢から上野に行くには普通はクルマを使い、30分おきの、しかも各駅停車しかない電車で行くことは、よっぽど時間とココロに余裕があるとき以外はありえないからです。

 近鉄伊賀線時代は他の路線のお古が狭軌の伊賀線仕様に改造されて使われていたのですが、驚いたことに新型車量が導入されていました。これは東急1000系の貫通扉が中央タイプの車両を「忍者列車」に改造したもののようです。


 従来の860系に比べて揺れの少なさは顕著で、室内も一部クロスシートに改造されて広々しており、非常に快適でした。
 しかし、もし電車に魂があったら、東急時代とはあまりに違う伊賀の田園風景に一種のカルチャーショックになっていることだと思います。


 たまにはのんびり伊賀鉄道で上野を訪れるのもいいリフレッシュになると思いました。(ただし帰りは860系だったので、3次元的な激しい揺れに見舞われましたが。)

 

2010年10月23日土曜日

私的「ウォークマン」雑記



 ウォークマンを初めて見た日のことを、はんわしはハッキリと思い起こすことができます。

 高校2年の修学旅行での列車内のことでした。友達が集まって騒いでいるので何だろうと思ったら、人だかりの輪の中にいたのが誇らしげにウォークマンのヘッドホンをしていた友人でした。

 長さ15センチ、幅8センチくらいの弁当箱のような箱型で、濃いブルーのボディの中に小さなガラス窓があって、中でカセットテープが再生され、くるくると回っているのが見えました。

 はんわしも他の友人と同じように順番にヘッドホンを借りて頭にかけ、音が鳴るのを聞かせてもらいました。曲が松田聖子とかの歌謡曲でなく、高中正義のフュージョンだったので、よけいその友人を尊敬しました。
 値段が当時で3万円くらいしたはずです。

 ウォークマンの大ヒットを受けて、マネシタ電器と呼ばれソニーの真似ばかりしていた松下電器をはじめ、AIWAとか、東芝とか日立とかが次々と類似品を発売し始め、屋外や好きな場所でカセット(テープ)の音楽を聴くことが大流行し、そのスタイルはやがて完全に市民権を得ていきます。
 世界で初めてトランジスタを使った超小型ラジオ(ポケットラジオという名前でした)を発売し、その技術力を世に知らしめたソニーというメーカーが、さらにウォークマンを発売し、世界を変えた。
 ソニーが、日本が、光り輝いていた時代でした。

 今でも、イノベーション(革新)を語る時、ウォークマンの例は必ず取り上げられます。
 ウソか本当か、ウォークマンは当時のソニーの経営者が、出張先でも音楽を聞きたいから持ち運べるカセットプレーヤーを作ってくれ、と注文を出したのがきっかけだったそうです。
 技術陣は一斉に反発しました。
 そんな小型のものは技術的に不可能だ。仮にできたとしても音質が悪く、ソニーの看板に傷が付く。再生専用で録音もできないようなカセットなど売れるはずがない。などなど。
 しかし、ソニーの優れた技術は不可能を実現可能にし、発売してみたら世界で爆発的な大ヒットとなった。
 小さなアイデア(思いつき)は、結果的に世界の音楽ファンの潜在的なニーズを掘り起こし、今までになかった全く新しい巨大な市場をゼロから作り上げたのです。

 イノベーションが単なる「技術革新」ではない、というポイントはここです。
 カセットの小型軽量化は素晴らしい技術革新ですが、音楽というソフトの多様化 ~流行歌とジャズ、クラシックしかなかった時代は変わって、1979年には、ポップス、フォーク、ニューミュージック、ロック、フュージョンなどたくさんの新しい音楽が生まれ、ファンも細分化し始めていました~ や、家庭でレコードやFMラジオから音楽をカセットに録音できるような機器の普及、などといった社会状況がマッチした結果であり、このような環境がなければウォークマンのヒットは絶対にありえなかったのです。
 実際に、その後ポータブル音楽機器を技術的にリードし続けたソニーですが、音楽のネット配信の普及や著作権管理などといった社会的な革新についていけず、第一位の座を追われることになってしまいました。

 このような社会的な状況変化を技術革新と結びつけたイノベーションは、その後の日本ではなかなか生まれなくなってきています。ある人は技術偏重の結果だというし、ある人は大衆消費社会が終わったからだとも言います。しかし、社会を変えようという意欲やアイデアが、技術者やメーカーをはじめ、日本社会そのものから薄れているような気はします。

 カセットウォークマンの国内販売が終了するという報道を見て、そんなことを考えました。
 (写真はヤフーニュース(産経新聞)の記事から引用しました。)

 

2010年10月21日木曜日

岡田文化財団の助成を使ってみては



 「補助金」にはデメリットも大きいことは、時々このブログでも書いています。

 行政による中小企業支援策には、融資や債務保証、商品の販路開拓や商談マッチング、品質保証、ブランド化支援、技術相談など多種多様のものがありますが、その王様とも言うべきものが補助金です。
 三重県では平成14年、シャープを亀山市に誘致するのに何と90億円もの補助金を支給することを決定しました。名目は「液晶産業」という成長分野に集中的にお金を投資し、三重県内に一大液晶産業集積地を建設するというものでした。
 この補助金支出が成功だったかどうか、亀山工場の製造設備の一部を中国に売却することをシャープが決定した今となっては判断が難しい面があります。
 しかし、「亀山ブランド」のアクオスが全国を席巻して亀山の知名度が上がり、関連工場や物流拠点、ビジネスホテルや従業員用のマンションなど多くの投資が市内になされたことは事実であり、その呼び水となったことは間違いありません。

 しかし、一方で補助金制度そのものには多くの問題があります。
 一つ目には、補助金の目的が正しいかどうかということです。シャープの例で言えば、液晶は今や日本メーカーからサムスンなど海外勢に主流が移り、当初の三重県内に液晶の集積地を作るという目的は達していません。
 二つ目には、県の限られた財源から補助金を支出するので、シャープのようにトクをした人がいる反面、そのお金が別のことに使われたならきっとトクをしたであろう人もいたはずです。このようなトレードオフを生み出してしまいます。
 したがって、補助金はやはり劇薬であって、行政が産業振興や中小企業支援に補助金を出すのは慎重であるべきです。

 その意味では、民間企業や財団法人などが、利益や基金の運用益によって補助をするのは、行政の補助金に比べてまだデメリットが少ないと言えます。
(もっとも、民間企業が利益を補助金などに還元するのは配当を受けるはずだった株主との利益相反行為かもしれませんし、財団法人にも税金が補助されていたりすれば、やはり同じ問題は起こるわけですが。)

 すでにご存知の方も多いと思いますが、現在、岡田文化財団が助成事業の公募を行っています。(締め切りは11月30日)
 三重県出身者または三重県在住者、団体などが
・地域における文化芸術の振興(創造活動・人材育成・普及活動への重点的な支援)
・伝統芸能の継承・発展(歴史的、文化的価値の理解・普及・公演等への支援。後継者育成など。)
・文化財などの保存・活用(文化財の建造物、美術工芸品その周辺環境の計画的な保存・修復。無形文化財の伝承者確保、養成等の支援。)
 などに、「営利目的でなく」取り組む場合に、ポスター、チラシ、パンフレット等の印刷費、通信・運搬費、会場使用料・設備費などを助成してくれるというものです。
 もちろん申請すれば誰でももらえるのではなく、審査がありますが、せっかく三重県に縁があって制度を設けているのでしょうから、地域おこし活動などに取り組んでいる方は、ぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。

 ■岡田文化財団ホームページ http://www.okadabunka.or.jp/

2010年10月20日水曜日

(メモ)特別会計の事業仕分け



 ニュースで10月27日から始まる事業仕分け第3弾のことがしきりに報じられています。
 第1回目ではノラリクラリ答弁する官僚をばっさり斬った蓮舫サンが一躍「時の人」となり、民主党やるじゃん、と多くの国民が政権交代を実感した出来事でした。
 しかし第2回目は、かなりトーンダウン。
 第3回目は、かつて自民党政権下で塩川正十郎財務大臣(当時)が「母屋(一般会計)でおかゆを食って辛抱しているのに、離れ(特会)ではすき焼きを食っている」との名言を残した、まさに官僚の牙城である特別会計にメスが入ることになりました。しかし、実効性には疑問符が付く報道が多いようです。

 仕分けの対象となるのは48事業で、毎日新聞が詳しく報じているので記事を引用させてもらいます。(web記事はこちら

●ワーキンググループA

1地震再保険特別会計

2国債整理基金特別会計

3財政投融資特別会計
(1)財政融資資金勘定
(2)投資勘定
(3)特定国有財産整備勘定

4外国為替資金特別会計

5エネルギー対策特別会計
(1)エネルギー需給勘定
▽住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金▽家庭用太陽熱利用システム普及加速化事業(うち家庭用太陽熱利用システムリース支援事業)▽温泉エネルギー活用加速化事業▽先進的次世代車普及促進事業▽廃棄物エネルギー導入・低炭素化促進事業▽省エネ自然冷媒冷凍等装置導入促進事業
(2)電源開発促進勘定
▽電源立地地域対策交付金▽電源立地等推進対策交付金(うち原子力・エネルギー教育支援事業交付金)▽原子力施設等防災対策等委託費(うち環境放射能水準調査等委託費)▽原子力施設等防災対策等委託費(うち防災訓練実施調査)▽廃止措置・放射性廃棄物研究開発▽高速増殖炉サイクル実用化研究開発(日本原子力研究開発機構運営費交付金+施設設備補助金)

6労働保険特別会計
(1)労災勘定
(2)雇用勘定
▽ジョブカード制度普及促進事業▽キャリア形成促進助成金(ジョブカード制度関連)▽介護雇用管理改善等対策費▽特定求職者雇用開発助成金▽若年者等正規雇用化特別奨励金▽職業能力開発校施設整備費等補助金▽離職者等の再就職に資する総合的な職業能力開発プログラムの展開▽職業情報データベースの運営等▽産業雇用安定センター(運営費補助)▽介護労働安定センター(交付金)
(3)徴収勘定

7年金特別会計
(1)基礎年金勘定
(2)国民年金勘定
(3)厚生年金勘定
(4)福祉年金勘定
(5)健康勘定
(6)業務勘定
▽日本年金機構運営費交付金▽紙台帳等とコンピューター記録との突き合わせ▽ねんきんネット▽ねんきん定期便事業▽コールセンター運営事業▽所在不明高齢者対策
(7)児童手当及び子ども手当勘定
▽子育て支援サービス事業費等(こども未来財団)▽児童館巡回支援活動等事業(児童育成協会)

8貿易再保険特別会計

9特許特別会計
▽特許電子図書館事業(工業所有権情報・研修館運営費)▽知的財産教育セミナー開催事業

◆ワーキンググループB

10交付税及び譲与税配布金特別会計
(1)交付税及び譲与税配布金勘定
(2)交通安全対策特別交付金勘定

11登記特別会計
▽登記情報提供システムの維持管理

12食料安定供給特別会計
(1)農業経営基盤強化勘定
▽農地保有合理化促進事業▽農地利用集積事業
(2)農業経営安定勘定
(3)米管理勘定
(4)麦管理勘定
(5)業務勘定
(6)調整勘定
(7)国営土地改良事業勘定

13農業共済再保険特別会計
(1)再保険支払基金勘定
(2)農業勘定
(3)家畜勘定
(4)果樹勘定
(5)園芸施設勘定
(6)業務勘定

14森林保険特別会計

15国有林野事業特別会計

16漁船再保険及び漁業共済保険特別会計
(1)漁船普通保険勘定
(2)漁船特殊保険勘定
(3)漁船乗組員給与保険勘定
(4)漁業共済保険勘定
(5)業務勘定

17社会資本整備事業特別会計
(1)治水勘定
▽治水事業(河川事業、砂防事業)▽スーパー堤防事業▽水資源開発事業交付金▽河川・砂防の管理
(2)道路整備勘定
▽道路整備事業▽直轄国道の管理
(3)港湾勘定
▽港湾整備事業
(4)空港整備勘定
▽空港整備・維持運営
(5)業務勘定

18自動車安全特別会計
(1)保障勘定
▽政府保障事業業務委託費
(2)自動車検査登録勘定
▽自動車検査独立行政法人▽自動車登録検査業務電子情報処理システム(MOTAS)の維持管理
(3)自動車事故対策勘定
▽自動車事故防止対策事業▽被害者保護対策事業

 実にたくさんあって、訳がわからなくなりそうです。(数えると48事業以上あるような気がするのですが・・・)
 国の予算というと、普通は一般会計のことばかりがクローズアップされ、各省庁が独自に持っている特別会計は治外法権でした。
 これが明るみに出るのはいいことだと思いますが、この世に一方的な悪とか不正が存在しないように、特会もこれで恩恵をこうむっている国民や「社会的弱者」がいるからこそ、これまで批判を浴びても存続してきたわけです。
 ねじれ国会で、特会の設置根拠となっている法律の改編さえままならない菅政権。
 さてどこまで事業仕分けの神通力が通用するのでしょうか。国民は期待していますよ。

2010年10月19日火曜日

特産品ビジネスのボトルネックは・・・



 先日、熊野の新兵衛屋かまぼこのことを書きました。地域資源活用型ビジネスにしろ、農商工連携ビジネスにしろ、例えば伊勢志摩の真珠とか、宇治茶とか、銚子の醤油とかのように全国的なブランド名が確立している場合はともかく、新しく商品を作り、これから市場に新規参入しようとする場合、自社製品の特長をPRし、他との差別化をはかるのは並大抵のことではありません。

 また、これらに取り組んでいるのは比較的小規模で零細な事業者が多いこともあって、マーケティングが不足しており、たまたま手直にあった材料で作ってみました、という感じの安直な商品が多かったり、PRや販促活動のセンスとか手法が今ひとつであったりと、売り込んでいくための戦術に失敗している例も実に多く見かけます。

 先日、あるイベントで、三重県内のこんにゃく業者さんから「こんにゃく麺」をいくつか買ったことがありました。
 こんにゃく麺とは要するにこんにゃくをきしめんのように平べったい麺にし、スープと一緒に調理してラーメンのように食べるものです。たまたまこの業者は、国産の原材料を使っていることや、坦々麺風とか、カレー味とか、バリエーションが豊富だったので面白いと思って購入してみたのです。

 家で調理したのですが、なかなか美味しく出来上がりました。(写真うつりは今ひとつですが・・・)

 しかし、この事業者、ホームページを見ると内容があまりに貧弱です。せっかくのこんにゃく麺もホームページに載っておらず、通販コーナーも閉鎖されていてNot Foundと表示される有様。
 非常に残念ですが、このブログでも紹介することはできないと判断せざるを得ませんでした。

 このように、モノが良い(競争力のある商品を持つ)事業者がそもそも少ないうえに、いい商品を持っている事業者も、失礼ながら売り方がわかっていない例が非常に多いのです。
 そこで、行政の出番です。
 行政は、どんな商品を開発すればいいのかを事業者に教え示すことはできません(国家が市場より優れていたのなら、社会主義国家が破綻することはなかったはずです。)。
 しかし、優れた商品をPRすることはできます。行政の一定の信用力をバックに、広く県民市民に商品を知ってもらう機会は提供することができるのです。

 10月24日(日)、三重県では松阪農業公園ベルファームで「農商工連携フェア」というイベントを行います。
 「農商工連携の取り組みを促進するためには、県民の皆様に県内の農林水産物を活かした新商品等を知っていただくことが大切であると考えています。」という開催主旨は、たいへんに時宜にかなった、タイムリーなものだと思います。


 詳しくはホームページをご覧いただきたいのですが、この種のイベントには付き物の展示即売会(60ブースが出店)のほかに、新商品開発大会なる催しもあって、三重県内の各事業者が開発に取り組んだ、さまざまな良いモノに出会えそうな予感がします。
 ひょっとして、こんにゃく麺の事業者さんも出店してくれているといいのですが・・・

2010年10月18日月曜日

「もしドラ」がNHKでアニメ化決定



 もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら という長い名前の本がベストセラーになっています。
 ドラッカーとは、アメリカの高名な経営学者のピーター・ドラッカーのことで、マネジメント(経営)をテーマにした非常に多くの著作を残しており、世界中に翻訳されて今でも経済界に大きな影響を与えています。
 
 はんわしはちょうど1年くらいまえに、この「もしドラ」を書店で見かけて立ち読みしたのですが、萌え系の漫画がいかにも
 「アニメおたく」×「経済学とか経営学が好き」
 という、どうしようもない人々をターゲットにしているのが見え透いていて、立ち読みしている自分がなんかそんな人種みたいで気恥ずかしく、ささっと目を通しただけで買いませんでした。
 まったくキワモノ本だと思っていたので、まさか130万部も売れるとは夢にも思わなかった自分の不明を恥じるばかりです。


 驚くことに、NHKが来年3月から、このもしドラを連続アニメにして放送するようです。午後10時55分からの放映なので、若いサラリーマン向けなのかもしれません。
 実際に、ドラッカーは参考になります。
 コミュニティビジネスとかNPO関係者には「非営利組織の経営」はぜひ読んで欲しいし、「イノベーションと企業家精神」というのも、読むのは大変ですけど非常に示唆に富みます。
 
 よく考えると、野球部のマネージャーって、マネージする人ということですよね。
 野球に代表されるスポーツ界は非常に男尊女卑的なので、マネージャーとは、長らく部室の掃除とか、汚れ物の洗濯とかボール磨きをする女子だと思われていました。要は雑用係として部員の下でかいがいしく働く女の子が「マネージャー」だったのです。
 けれど、もちろん、これは正しくありません。
 組織を把握し、良いところを伸ばし、悪いところを克服し、組織のミッション(使命)を果たすのがマネージャーの役割なのです。

 今にして思えば、野球部のマネージャーが「マネジメント」という題名に引かれて(勘違いして)ドラッカーの本を手にとって見た、というストーリーの導入部は、なかなか良い着眼点だったように思います。じっくり読んでみるべきでした。
 かといって、今さらベストセラーを書店で買うのはこっぱずかしいし、どうしたらいいのだろう・・・

2010年10月17日日曜日

熊野灘産地魚の「新感覚かまぼこ」が農商工連携認定



 三重県熊野市に本社があり、新兵衛屋(しんべえや)蒲鉾のブランドで地元をはじめ全国各地のサービスエリア等で店舗を展開している有限会社浜地屋が、このほど国の農商工連携事業計画の認定を受けました。テーマは熊野灘産地魚を使用した新感覚スライスかまぼこ等の製造・販売事業というものです。


 かまぼこやちくわなどの練り製品の原料は魚のすり身です。しかし、価格が安いことや、大量に確保が必要なことから安価な輸入物のすり身が多く使われており、これが練り製品の差別化を難しくしている遠因になっています。
 熊野市の目の前は茫洋たる熊野灘であり、実に多種多様な魚が獲れますが、すり身の原料とするには漁獲量が少なすぎたり、獲れる季節が決まっている、などの問題があって、せっかくの地魚は利用されることがまれだったようです。

 そこで浜地屋は、漁業者である丸光大敷と連携し、タカベなどの低利用地魚を使い、スライスかまぼこやフレークかまぼこといった多用途な新感覚かまぼこを開発することになりました。魚食ニーズが高い高齢者層および魚離れの進む中若年層をターゲットに業務用と家庭用両面で販路開拓を行う予定のようです。(詳しくは農商工連携パークをご覧ください)

 農商工連携は、いわゆる小泉改革によって農林水産業や商店街など、地域の地場産業が疲弊した(これは実はデータとしては必ずしも正しくはないのですが)、という世間一般に信じられている話を前提に、国が対策として作り上げた「地域資源活用促進法」や「企業立地促進法」などと並んだ「農商工等連携促進法」という法律に基づいた制度です。

 簡単に言えば、農林水産業者(この場合なら丸光大敷)と、商工業者(新兵衛蒲鉾店こと浜地屋)が「有機的に連携」し、お互いの強みを生かした新商品の開発や販路開拓に取り組む場合、あらかじめ事業計画を作って、それに国がお墨付き与えた場合(認定した場合)、補助金や低利融資などの支援策が受けられるというものです。
 認定自体がマスコミに公表されるので、製品や事業をPRする意味あいも大きいでしょう。
 法律と制度の詳しい内容は、やはり農商工連携パークのこちらを。

 問題は、要件である「有機的連携」とは何か?ということです。
 3年ほど前、この法律ができたばかりの時は、「単なる原材料の仕入れや、製造委託のような関係は有機的連携ではない」と国は説明していました。

 今回のかまぼこの場合、丸光大敷は地魚捕獲用の定置網の仕掛け角度を変えることで捕獲量を確保したり、鮮度保持による品質の確保に工夫を凝らしているようです。一方、浜地屋は、自動魚肉脱水機の導入により魚質の均一化を図ったり、保存料を一切使わない、練り加工の工程を調整などの改善を実現するようです。
 このように双方が工夫や改善を凝らし、お互いの付加価値を固めていく連携が「有機的連携」ということなのですね。

 地域産業活性化に取り組んでいる皆様は、農商工等連携制度の活用も検討されてはどうかと思います。商工会議所や商工会でも相談に乗ってくれるはずです。

 ちなみに、新兵衛蒲鉾店のホームページはこちら → http://www.sinbeiya.com/
 トピックスに農商工連携計画の認定という大ニュースに一切触れられていませんが、これは東紀州の事業者さんはガツガツと自分のアピールをすることがキライだという理由以外考えられませんので驚くには値しません。要は「蒲鉾で勝負!」ということでしょう。たぶん。

2010年10月16日土曜日

つまらない日々とおバカ本



 お蔭様でこのブログもコンスタントに3桁のページビューを得られるようになりました。もっとも、ほとんどの方は海空花子とか、美しすぎる海女さんとか、伊勢自動車道無料化とかを検索したら偶然このページに来てしまったというケースでしょうから、三重県の地域産業とかイノベーションかにどれだけ関心があるかは別問題ですが。

 はんわし的には、最近デスクワークがほとんどの毎日で絶不調です。

 役所はいかに費用対効果のパフォーマンスを上げるかではなく、いかに予算を大きくするか(費用を増やすか)という議論に注力する傾向があるので、その予算がどういう効果を生むかについては、昔から実はあまり重視されていません。
 もちろん、予算を作るための根拠は必要なので、予算を何億円使ってこの事業をやれば、こんな効果がある ~たとえば田舎に道路が何十メートルできる、とか母子家庭の負担が月々何百円軽くなるとか~ は計数的に示さなくてはいけません。
 しかし、何十メートルのはずが実際には何メートルしかできなくても、予算化から事業完了まで数年は時間がかかるので、厳密な検証など誰もできないし、そもそも人事異動していく役人は責任も取りません(取れません)。
 なので、成果はあくまで作文であって、エネルギーはもっぱら予算額の獲得に注がれることになります。
 なので絶不調。

 このようなバッドコンディションの時に出合う本もロクなものがありません。

 まず「日本は財政破綻しない」という類の本を見てしまいました。日本政府と地方自治体は負債が900兆円(!)近くもあるのにです。
 その理由は、
その1 これだけ悪い悪いと騒がれているのに金利が上がっていない。これは世界の債権者が日本にはまだ余力があると認めているから。
その2 借金というが、誰かの負債は誰かの資産(債権)であり、お金の総額は変わらない。日本の国債はほとんど日本の銀行が買っており、政府が破産しても国内でチャラになるから心配ない。
 というもの。
 お金を貸してくれるのは、そもそも、借りる人がすでにそれほど莫大な借金を抱えているなどと貸すほうが「知らない」からではないでしょうか。
 商売人なら常識ですが、あそこは危ないという噂が立った時点で貸す人など誰もいなくなってしまい、たちまち資金はショートします。
 合理的に考えて、日本が破綻しないと思うほうがおかしい。今日は地震がなかったから、明日もあさっても地震はこないということになるのでしょうか。

 もう一冊、日本はこうすれば成長できる「戦略」なる類の本も見てしまいました。
 著者は有名な経営コンサルタントで、かつて「日本にもベンチャー文化を根付かせる」という活動をしており、はんわしも本を何冊か読んだりしていました。
 しかしこの本はヒドイ。この人、こんなにまで落ちぶれてしまったのか・・・
その1 日本は真面目に勉強してきた高校生が、卒業後も自分の街で就職できるような経済、社会にすべき。文学、法学、経済学などの文科系の大学はつぶし、大学は理系だけにせよ。
その2 サービス産業は雇用を吸収できない。日本はやはり「ものづくり」でしか生き残れない。
その3 真面目な勤労者を守るため所得税はゼロにし、相続税は100%にしろ。
 というもの。
 独立志向のベンチャーなどやめて、みんな大量生産型工場の労働者になればいいのですね。ただ、今のままでは賃金が高くて製造業に国際競争力はないので、賃金を大幅に下げる必要はあります。非正規雇用が爆発的に増加するでしょう。
 親の財産を相続することは100%課税によって不可能となるので、生涯賃金が低い人は老後の安心もままならないということなのかなあ。よくわからないけど。
 日本のものづくりの弱さは、まさに「創造的」な高付加価値型製品が生まれてこないことにあります。今の理系は理系バカが多く、日本の歴史や古典文学もろくに知らないし、芸術作品も知らない。したがって、文科系の知識も含めた総合的な人格でしか戦えない国際的なイノベーションの競争に、ことごとく敗れ去るのではないでしょうか。

 あー、バカ本には要注意だ。よけい疲れてしまいました。

2010年10月14日木曜日

究極のとばーがー登場!一万円なり!



 今日の中日新聞(10月14日付け)伊勢志摩版によると、鳥羽市役所が市内の飲食店に呼びかけて開発と売り出しをはかっている御当地ハンバーガー「とばーがー」(トバーガー)に新メニューが追加されました。

 とばーがー公式ホームページによれば、とばーがー認定の条件は以下の3つです。

1 パテ部分に地元食材を一品以上使っていること
2 注文を受けてから作ること
3 鳥羽市内で販売されていること

 この定義に従って市内の書く飲食店が提供しているとばーがーは、めかぶ入りみそカツバーガー牡蠣燻(かきくん)バーガーさざえバーガーなど11種類でしたが、これに新たに3種類が追加されました。

 新しいラインナップは、鳥羽市特産の浦村牡蠣を使った浦村かきジューシーバーガー(500円)、シラサエビとちりめんじゃこの鳥羽の幸 潮騒バーガー(1500円)、そして何と1個1万円の伊勢えび、あわび、松阪牛、フォアグラを使ったM・O・L・Fプレミアムバーガーの3種類です。ちなみに1個1万円のバーガーは、三重県を代表する高級リゾートホテルの鳥羽国際ホテルが販売するものです。敷居高い・・・
 マックなら1コ100円。本来、ハンバーガーってその程度のファストフードなのでしょうけれど、とばーがーはコンセプト自体が「賑やかし」、「鳥羽市の観光PR」ですから、こうやって新聞に載ったり、それをブログに書く奴が出たりすること自体で、狙いは成功しているといえます。

 それにしても、B級グルメは完全に社会に定着したようです。今は全国どこであっても、一定そこそこの規模のイベントや祭りには「B級グルメ対決」とか「ご当地グルメ屋台村」みたいな催事をやっています。
 三重県でも、津ぎょうざとか、四日市トンテキとかは、このB級グルメブームに悪乗りしたイメージを強く感じたものですが、今や完全に市民権を得ており、それ以外に亀山のホルモンうどん(だったか?)だの、伊賀の牛汁だの、はんわしはつい最近まで聞いたこともなかった
メニューまで「発掘」されてB級をアピールしています。

 これら庶民の味は価格も庶民的であるはずですが、ブームになってくると、この「逆張り」で高級志向が出てくるのも想定内の出来事です。秋ですから松茸プリンとか、ズワイガニワッフル、なんかも出てくる可能性大ではないでしょうか。

 地域資源活用型の産業振興が難しいのは、富士宮やきそばを嚆矢としたB級グルメも、すでに全国で乱立状態になっており、すでに知名度が高いものを除いて、ご当地メニューでの差別化が非常に困難になることです。
 B級グルメは地元に愛されている定番メニューであることが出発点だったはずであり、単なる受け狙いの特産品は、観光客向けで結局地元に定着せず、淘汰されるものがますます出てくることと思います。
 この分野のイノベーターであった富士宮なんかは、おそらくB級の「次」のステージを考え、もう青写真を描いているのではないでしょうか。

 

2010年10月13日水曜日

身近なところで廃業は続く



 タバコの値上げは社会正義ですが、これをきっかけにして、はんわしの身近なところでもタバコ屋さんが2軒続けて廃業しました。

 かつて、酒や味噌、しょうゆといった生活必需品を売る店とか、塩、タバコのような専売品を売る店は地域で独占的な営業権が認められていた(塩やタバコは貴重な税源であったので、国によって生産や流通が管理されていました)ため、一般的にはその地域にある旧家や名家が多く、絶対安泰な商売だと思われていました。
 どの町の、どんな街角にもタバコ屋さんがあり、店番をしている美人の看板娘を目当てにタバコを買いに通った、などという話もよく聞かれました。

 しかし、国民のライフスタイルが変化し多様化するにつれて、タバコ屋は「自動販売機がずらりと並ぶ」独特の店構えをとるところが多くなり、看板娘は今では「サザエさん」の中でしか見ることはできません。

 やがて、規制緩和によって専売制は廃止され、コンビニやスーパーでの販売も認められるようになり、さらに近年はタバコは体に有害であることが広まってくると、喫煙率も低下し、タバコ屋のビジネスモデルそのものが苦境に立たされるようになります。

 そして、昨年のタスポ導入、今回の値上げで、規模が零細で経営者も高齢化しているような店は多くが退場する潮時を迎えたかのようです。

 ひょっとすると、タバコ屋のプライドというものが(もしあるのなら)許さなかったのかもしれませんが、これだけ禁煙が叫ばれている世の中、たとえば禁煙グッズを売るとか、委員とタイアップしてたばこ販売組合が禁煙教室をやるとか、消費者である愛煙家とタイアップして取り組んでいけるような業態転換が進まなかったのはなぜなのか、という気がしないでもありません。
 タバコを仕入れて、売る、という単純なビジネスモデルでなく、新しいビジネスモデルの創造こそが必要だったはずです。

 いずれにしろ、何十年か後は、未来の若者たちが2010年の日本の町並みが映った写真や映像を見て、「昔はこんなにたくさんタバコ屋があったのかぁ」とか、「その当時は20歳以上なら誰でも安価にタバコが買えたのか!」などとなかば驚き、なかば呆れるような世の中に、きっとなっているのでしょう。

2010年10月12日火曜日

「あまご屋」に行ったことがなくて熊野を知っているといえるか!



 熊野の木箱職人 上古代さん(Yahoo!で「木箱」と検索するか、こちらを)のブログによると、三重県熊野市の赤倉にある古民家レストラン「あまご屋」が夏前から営業を再開しているようです。


大きな地図で見る

 ここの特長は3つあります。一つは、熊野市という三重県でもかなり南のほうにある町の、さらに赤倉地区という中心市街地からクルマで30分ほどかかる山紫水明の地(というか、一般的には「秘境」というほうがイメージに近い)にあるということです。
 二つ目は、その清流を使ってアマゴを養殖している有限会社赤倉水産の直営レストランであって、料理の素材であるアマゴは間違いなく産地直送(なんせ徒歩3分ほどの場所)のとれとれピチピチであるということ。
 最後に、あまご屋は完全予約制で、しかも「一日一組」限定というレストランであることです。

 詳細はホームページをご覧ください。ブログを見ると、こんな秘境のような地でもそこそこお客さんが来ていて(失礼)、しかも評判が非常によいということがお分かりになると思います。一人前の代金が3200円という値段であってもです。

 しかし、なにせ遠方の地。本当にいいところなのか、美味しいのか、不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。
 はんわしも、2年ほど前に訪れたことがあるのですが、正直言って、ここは本当に良いです。
 最近は旅なれた方が多く、東紀州や熊野といっても鬼が城や獅子岩、花の巌神社、熊野古道松本峠、丸山千枚田などのスポットは一通り押さえたという方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、あまご屋は絶対にオススメです。保障します。
 もしどこか、日常と全く違う環境で静かに時間を過ごしたい、と真剣に考えておられるなら、思い切って熊野赤倉のあまご屋に行かれてみては如何でしょうか。

 行く方法ですが、熊野市までは国道42号線で。地図では、国道311号線の金山交差点から県道52号線で札立峠に行くほうが近いように見えますが、この道は非常に道幅が狭く、カーブの連続で、相当に運転に自信がある人でないとお勧めできません。
 国道42号線を熊野警察署、ジャスコ熊野店方面に曲がり、県道34号線で神川、七色峡方面に向かいます。ここも部分的に狭い道で急な登り坂ですが、ここを3キロほど行くと、赤倉方面と書いた看板があるので、そこを左折します。後は道なりにひたすら進みます。
 あたりに全く人家はなく、人の気配も一切ありません。木立の切れ間から熊野市街や熊野灘が見下ろせます。本当にこのまま進んで大丈夫だろうかと、ハンドルを握りながら不安が頂点に達する頃、赤倉の童集乃村という看板と、水車が見えます。ここがあまご屋のある場所です。
 携帯電話は圏外ですので、くれぐれも運転にはご注意ください。

2010年10月11日月曜日

ジャスコってなくなっちゃうの?



 デフレ傾向や消費者の嗜好の変化(これは「市場の成熟化」と呼ぶべきものだと思いますが)によって、GMS(食料品から日用品から衣料まで、あらゆる品揃えしている「総合スーパー」)というビジネスモデルが苦境に陥り、イトーヨーカドーやイオン(ジャスコ)といった大手スーパーが軒並み苦境に陥ったのは、2~3年前のことでした。

 イオンは不採算店舗を全国で100店閉店するプランを打ち出し、ジャスコと縁が深く比較的安穏としていた三重県内にも衝撃が走りましたが、現在のところ業態転換などにとどまり、県内で実際に閉店されたジャスコはないようです。

 しかし、最近、ジャスコを運営しているイオングループは、店舗名として定着している「ジャスコ」「マイカル」などを廃止し、「イオン」に統一すると共に、業務効率化をいっそう促進することを発表しました。
 ジャスコはローマ字でJUSCOですが、これはJapan United Stores Companyをあらわしています。1950年代に吉田日出男氏が提唱した「主婦の店」活動や、流通業界の革命児ダイエーの中内功氏などに代表される、日本小売業界でのイノベーションが勃興した時代、岡田屋など幾つかの地方中堅スーパーが消費者主義を掲げて団結したのがその由来です。
 時代の流れとはいえ、ジャスコの名称が消えてしまうのは寂しい気がしますが、今はまさに日本社会全体の転換点であり、GMSも生まれ変わる必要があるということでしょう。

 一方、気になるのは、いわゆるGMSには、大手スーパーだけでなく地域の小売業者が協同組合を作って入居している形態も少なくないことです。これはテナントとして賃借入居しているケースと、協同組合自身がGMSの建物の建設費を負担しており、実際に区分所有権を持っているケースがあります。
 1970年代後半になると地方都市にも大型小売店が出店し始め、それまで主流だった大店法下での出店反対運動と同時に、積極的に大型店と連携し、商店街との相乗効果を生もうと考える経営者たちも生まれてきます。具体的には小規模商店主たちで協同組合を作り、大手スーパーと共にGMSを建設したり、入居する動きです。この積極策は商店街近代化事業などによって国や県も支援した経緯があり、三重県内の大型店でも、大手スーパー直営店と協同組合店が同居している形態は多くあります。(思いつくだけで、ジャスコ鳥羽店とハロー、オークワ御浜店とピネ、オークワ名張店とパークシティなど。その後、事情は変わっているかもしれませんが。)

 その多くは、大型店で打撃を受けては生き残りが厳しいと考え、乾坤一擲の勝負に出た若手商店主たちでした。それについていけない商店街は衰弱し、現に多くの市町ではシャッター街になっています。
 今ここで、ジャスコが名称と共にGMS形態を見直し、テナント構成を変えることになれば、共に生き残りを図ってきたかつての若手商店主たちも路線の変更が求められるかもしれません。そして、これは地域の商業にとってあまりにも大きな荒波となるのです。

2010年10月9日土曜日

ノーベル賞受賞は特許を取らなかったから!?



*マニアックな内容なので特許権に関心がある方以外は読み飛ばしてください*

 今年のノーベル化学賞は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」を確立した、米パデュー大学特別教授 根岸英一氏と、北海道大学名誉教授 鈴木章氏ら3氏の受賞が決まりました。
 
 日経新聞(10月7日付け)によると

 社会や人々の暮らしは様々な工業物質に支えられているが、その多くは炭素が複雑に連なった骨格を持つ「有機物」。プラスチックも医薬品の多くも有機物の一種だ。だが、炭素を自在に操って目的の有機物を人工的に作るのは難しく、化学者にとって有機物の合成方法の確立は20世紀に入ってからも長く課題だった。

 3氏は別々に1970年代、パラジウムという金属を触媒として混ぜることで2種類の有機物の炭素骨格をつなぎ、目的どおりの骨格の新しい有機物を得ることに成功。「鈴木カップリング」などと名付けられた。

 この合成手法を利用すれば自然界にあるような複雑で様々な機能を持つ有機物を作れる。また、扱いが難しい有機溶媒でなく普通の水溶液中で反応が進む長所もあり、この手法は世界に広まった。現在は高血圧症や腎臓病の治療薬などの医薬品や農薬、液晶材料のような次世代電子材料の製造にも利用されている。

 とのことです。
 これは素晴らしい発明で、日本人として誇りに思います。

 一方で、
根岸、鈴木両氏は、受賞対象となった技術について特許を取得しておらず、部の新聞は「経済的なメリットは逃したかもしれないが、特許を取らなかったことで技術は世界へ広く普及し、研究者最高の栄誉へと道を開く一因にもなった。」などと報じています。
 また、根岸氏は「特許を取得しなければ、我々の成果を誰でも気軽に使えるからと考え、半ば意識的にした」などと述べているそうです。(たとえば、読売新聞の記事

 しかし、はんわしにとって、根岸氏のこのコメントは理解が難しい面があります。
 特許制度の目的は、発見や発明を、それを考えた研究者に秘匿させることではありません。
 そうではなくて、(特許法にも規定があるように)発明の保護および利用を図ることによって、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することが目的です。
 発見や発明は、それを隠したり、囲い込んだりしていては広く世の中で応用され、活用されることがありません。しかし、無原則に公開してしまえば、それにタダ乗りして製品を作ったりする人が現れて収拾がつかなくなります。
 なので、発明者に「特許」というかたちで一種の独占権を与え、その特許を使いたいという人から対価を取って使用を認めることで、次なる新しい発見や発明のための研究意欲を保障しようというのが狙いです。

 特許を申請しない。だからお金は儲からなかったが、技術が世の中に広まった、というのは美しい話であり、誰にでもできることではありませんが、それでは両氏の研究費用は誰が出し、研究活動は誰が支えていたのでしょうか?
 
 慈善活動やボランティア活動なら、そのような無償行為も成り立つのでしょうが、企業に在職する研究者や、ほとんどすべての大学などの教育機関で研究に従事する人々も、発明を特許化し、一定の経済的な利益をあげなくてはそもそも研究活動自体が金銭的に行き詰ってしまい、持続しなくなります。

 世間的には、ハブアンドスポーク特許に代表されるプロパテントが行き過ぎているとの反省から、アンチパテントに転換する兆しも生まれてきているようですが、これと「特許を申請しない」ということは、もちろん全く別次元の話です。
 今回の報道が、知的財産の金銭的対価の軽視や、いわゆる発明対価訴訟に影響を及ぼさないかが他人事ながら心配になります。

緊急経済対策とは良くも悪くも「時間稼ぎ」に過ぎない



 平均的な田舎の住民 ~たとえば、いわゆる中山間地域とか地方都市とかで生活している住民~ にとって、建設業がいかに地域産業にとって重要な地位を占めているかは日常的によく実感できます。
 田舎道を車で走れば、目に入ってくる大き目のビルやこぎれいな建物は、ほとんどが建設業者の本社ですし、家族親族の誰かが建設業関連で働いている(事務員としてや、ダンプの運転手としてなどの間接的なかかわりも含めて)のはごくふつうの日常光景です。

 これはデータで見ても実証されており、三重県の例では産業活動別県内総生産に占める建設業の割合は5%(約3900億円)であり、事業所の数は11%(約9300事業所)、従業者の数は7%(約58000人)となっています。
 よく世間一般では、田舎の地場産業といえば農業、漁業、林業であると誤解されていますが、この数字を見れば建設業は第1次産業などはるかに凌駕している、まさに地域の基幹産業であることが理解できます。

 さて、しかし、公共事業は国民一般の評判が悪く、10年ほど前から公共事業費は減り続けています。
社団法人日本土木工業協会のHPより)

 「コンクリートから人へ」を標榜する民主党政権の誕生によってこの傾向は決定的となり、田舎にとっては基幹産業の崩壊が秒読みとなっていると言っても過言ではないと思います。

 なので、昨日、菅内閣が閣議決定した、緊急経済対策で4500億円が公共工事に費やされるとの報道は、まさに干天の慈雨といったところでしょう。
 ひとり建設業だけの問題でなく、地域が産業を失い、失業した人が仕事を求めて故郷から出て行く、その流れがいくらかでも緩和されるかもしれないのです。

 ところが、このグラフを見てもわかるように、かつては全国で26兆円もあった公共工事の発注額は半減しています。いま、ここに4500億円を全額投入しても、微々たる効果しかないことは明白です。
 つまり、緊急経済対策は、あくまで「緊急」の対応なのであって長続きはしないのですから、この間に建設業以外への多角化や、新事業への方向転換を考えるべきなのです。

 産業政策は、いわゆる「成長戦略」に代表されるように、先端的な産業を振興し、国全体の産業をそちらに向かわせていくという政策も(実は成長戦略にはあまり意味がないというのがコンセンサスとはいえ)、それなりに重要ではあります。
 しかし、地域の産業を、いや、地域の生活を守る、という意味では、成熟し、飽和した産業をいかに再生していくかは決定的に重要です。官民が力を合わせて進めていくべき行政分野は、まさにこのような部分ではないかと思います。


 

2010年10月7日木曜日

文化人になったロックスター



 アメリカ黒人による自然発生的な、いわゆる土着の庶民の音楽としてのジャズが、「芸術」として世間に認知されたのは1940年代に活躍したジャズサックス奏者 チャーリー・パーカーの登場によってでした。
 当時、主流のジャズだったのはビッグバンドによるスイングジャズであり、あくまでダンスの伴奏音楽の位置づけでした。
 これに比べてパーカーらのジャズはビーバップ(Be-Bop)と呼ばれるもので、4ビートの早いテンポ、複雑なコード進行、そして超越的な演奏テクニックによってアドリブを競う演奏スタイルが特徴で、ニューヨークやシカゴといった大都会の夜を彩るのにふさわしい、カウンターカルチャー的な音楽でした。

 パーカー自身、麻薬中毒であり、晩年は自宅に放火するなど奇行が目立ちましたが、絶頂期の演奏は今聞いても素晴らしいものです。「オマエが真実の音を出そうと思ったら、真実の生き方をしなければいけない」などミュージシャン仲間に残した哲学的なコメントも多く、酒と薬と女におぼれていく自堕落な生き方と相まって、多くの天才伝説を残しました。
 間違いなくパーカーは、芸術家と認められた初めてのジャズミュージシャンでした。

 時代は下って、若者の心はジャズから次第に離れていき、ポピュラーミュージックの主流はロックンロールになっていきます。
 1962年にイギリスでデビューしたザ・ビートルズは、奇抜な音楽スタイルと、長髪、スーツ姿でステージに立つロックバンド。しかし過激一本やりでなく、ヨーロッパのクラシック音楽の香りも感じられる才能の豊かさで、またたく間に世界を席巻し、ポップスターの座に上り詰めました。

 60年代のイギリスは、かつては7つの海を支配した世界の盟主国の座をアメリカとソ連に明け渡し、構造的な不況に苦しむ英国病と呼ばれる閉塞した社会状況に苦しんでいました。

 ビートルズのメンバーは4人とも労働者階級の出身です。彼らが大スターとなってレコードが世界中に売れたことが「イギリス経済に貢献した」という理由で、エリザベス女王から勲章を授けられたことは、当時のイギリス社会に大きな衝撃を与えました。(実際に、ビートルズが受賞したことに納得できないとして、叙勲者が勲章を返上する例が続出しました。イギリスは民主主義発祥の地ですが、実はすさまじい階級社会なのです。)

 メンバーの中で実質的なリーダーだったのがジョン・レノンです。
 彼も天才でしたが、パーカーと同様、麻薬や覚醒剤の常用者であり、その影響を受けたと思われる哲学的な歌詞がさまざまな解釈を生み、論争を起こしました。また、優れたメロディメーカーであり、ヒット曲には枚挙のいとまがありません。

 後に前衛芸術活動や反戦平和運動に身を投じたジョン・レノンも、やはり文化人となった最初のロックスターだったのではなかったでしょうか。

 10月9日はレノンの誕生日です。1940年生まれなので、生きていれば70歳になっているはずでした。
 40歳で非業の死を遂げたレノンですが、全速力でこの世を駆け抜けたゆえに、その生き様は伝説となっています。今の混沌とした状況を見たら、彼は何を思い、どのような名曲を生み出したことでしょうか。

2010年10月6日水曜日

地域資源活用ビジネス・地域課題解決ビジネスのために



 (財)三重県産業支援センターでは、みえ地域コミュニティ応援ファンド助成金の公募をスタートさせています。
 助成金の対象となるビジネスは、大きく二つの種類に分かれます。

(1)地域資源活用型ビジネス
 中小企業地域資源活用促進法に基づき、県が指定した特定地域資源を活用した商品づくりやサービスの提供を行うビジネス。
 または、知名度は低いものの、地域の特徴的な農林水産品、加工技術や観光資源で、新たな価値を見いだし、今後の地域資源活用促進法による指定の可能性のある地域資源を活用した商品づくりやサービスを提供するビジネス。

(2)地域課題解決型ビジネス
 地域の課題を解決するための事業を、新たに地域の特性を生かし、ビジネスの手法によって行う事業。(一般的な意味での、いわゆる「コミュニティビジネス」とよばれるもの)

 申請できるのは、、三重県に在住するか営業拠点がある、創業者、新事業を行おうとする中小企業者(個人経営含む)、NPOや大学など中小企業以外で新事業を行おうとする者が申請することができます。

 補助対象や補助金の額、補助率などの詳細はホームページをご覧ください。
http://www.miesc.or.jp/cb-fund/
 公募の締め切りは平成22年11月19日(金)です。

 なお、この助成金は募集すれば誰でももらえるのではなく、書類審査、津市で行われるプレゼンテーション審査を経て、採否が決定されます。落選した場合も、費用や手間は申請した側の負担ですから注意が必要です。

 また、何につけ、行政の補助金や助成金には、そのカネを払ってでも実現させたい「政策目的」というものがあります。
 申請者にとっては、まず事業の内容に関心が向き、この点について、つい後回しになりがちですが、助成金の目的は何かということを理解しておかないと、いくらいいアイデアだとしても採択されることはありません

 みえ地域コミュニティ応援ファンド助成金の場合は、同センターのホームページにもあるように「多様な主体が、新しい時代の担い手として、地域の発想や工夫による特色あるビジネスを創出する」ことを支援する制度なので、これらのキーワード(多様な主体、とか、新しい時代、とか)と、申請しようとする事業に関連があるか、整合性があるかは事前に十分チェックし、説明できるようにしておくべきです。

 その辺がよくわからないという方は、過去の採択事例も紹介されていますし、三重県内各地で説明会も開催されるようなので、ご利用いただくことを強くお勧めします。

2010年10月4日月曜日

週刊ダイヤモンド「怪しい商法・騙しの手口」



 今週の週刊ダイヤモンドは悪徳商法の特集でした。

 世の中の仕組みが複雑になるにつれ、「未公開株」とか「外国通貨」をギミックに使った新手の詐欺商法が次々と生まれています。
 一方で、昔ながらの訪問販売、かたり商法、マルチ商法、キャッチセールスなどなども進化し続けており、特に一人暮らしのお年寄りなどを狙った卑劣な商法が蔓延しています。

 しかも、これら悪徳商法グループは、アイデアを出す、資金を出す、商品を実際に販売する、代金を取り立てる、などのグループによる分業が確立しており、仲間同士でノルマを競わせるなど、その仕組みも大企業顔負けに組織化しているそうです。


 そして、被害届が出ているなど悪徳商法として明らかになっている被害額だけでも年間6548億円。もちろんこれは氷山の一角なので、推定できる全国の総被害額は何と4兆8500億円という巨額にのぼります。これは日本のGDPの1%に相当するというとてつもない金額です。

 よく、現代日本社会の異常さを示すたとえに、年間の自殺者が3万人以上あることが言われますが、悪徳商法の被害が5兆円近くになるということも、ある種の異常事態と言えるのではないでしょうか。

 はんわしは地方の個人商店など小規模な事業者は販路拡大するのにインターネットによる通販が最も有効なツールだと信じていますが、現実に取り込み詐欺などの被害も多いと聞きます。
 商売のプロが騙される事件だけにプライドがあって誰にも相談できないなどの悩みを抱えている経営者もいるようです。以前このブログにも書いたように、消費者保護はもちろん最優先ですが、小規模な事業者が犯罪や悪徳商法に巻き込まれないための何らかの支援もあってもいいのではないかと思ってしまいます。

 不思議なのは、司法制度改革によって司法試験合格者が激増しており、多くが法曹資格を得て弁護士になっても、現実には仕事がなく生活に困っている若手が多い、と伝えられることです。
 確かに高度な専門職である弁護士が高額な報酬を望むのは当然といえば当然ですが、一方で、悪徳商法被害者のように法の知識がなく、弁護士などによるサービスをあまり受けられない人々もいるのです。
 医師と同様に、弁護士の地域的な偏在(田舎にはほとんど弁護士がいない)の解決は、日本が「知識集約型社会」になるために必須の社会基盤整備だと思います。

2010年10月3日日曜日

旨辛ラー油納豆を食べてみた



 今日、ジャスコの食品売り場でふと見たら、旨辛ラー油納豆というのが売られていました。
 この、赤色のバックに黄色の毛筆文字というのは「辛さ」を表す定番のデザインらしく、健康志向を前面に出している商品群が多い納豆売り場の地味な雰囲気の中で、ひとり、朝青龍的な(今日、断髪してしまったけれど)アクの強さを際立たせていました。

 はんわしは基本的に二番煎じとか、二匹目のドジョウ、みたいなのが大好きな性格なので、さっそく購入してみました。


 中身は普通の小粒納豆です。ただ、一般的によくある、納豆のたれと練りからしの2つの小袋ではなく、納豆たれと、もう一つはラー油の袋が入っています。唐辛子と揚げニンニクも入っていてコッテリした感じのラー油です。
 この2つを入れ、よくかき混ぜてご飯に乗せるとこうなります。


 見にくいと思いますが、ところどころ赤く見えているのがラー油部分です。
 食べてみると、これはもう、納豆にラー油が入った味 としか表現の仕様がありません。そのまんまです。激辛というほどではないので、平凡な毎日の食事にちょっとした刺激を求めている方は、一度お試しになってみてはいかがでしょうか。
 ただし、揚げニンニクの匂いが若干はするので、朝食に食べる場合は自己責任で。

 この旨辛ラー油納豆を作っている豆紀という会社は、本社は和歌山にあるようですが、ホームページによると和歌山県下初の本格的納豆製造販売会社であり、元々は、リポビタンDなど医薬品ドリンク剤でおなじみの「タウリン」の化学薬品、医薬品メーカーとのことです。
 病院向け医薬品も製造しており医薬品対応のGMP工場を持ち、納豆の製造販売事業に進出したのは1998年のことだそうです。
 このラー油納豆も、通常の納豆が3パックで100円程度の売価なのに対し、2パックで98円という高付加価値商品です。ラー油ブームの便乗商品には違いありませんが、このようなチャレンジングな会社歴と関係がありそうな気がしてちょっと面白いと思いました。

2010年10月2日土曜日

商工政策と広域連合

*マニアックな内容なので、産業振興関係者および自治体関係者以外は読み飛ばしてください*

事例1
 自動車の場合、1台に使われる部品点数はおよそ2万-3万点だが、航空機1機の部品点数はおよそ300万点。関連する産業のすそ野は広く、製造業にとってビジネスチャンスでもある。
 県内の企業でも自動車、工業製品に続く次世代の産業として航空機産業への参入を視野に入れた動きも見られる。そのような背景から県も10年度予算に航空機実態調査事業費や航空機産業新規参入研究事業費を組み込んだ。
 また、5月には「航空機産業研究会」を発足。知事をはじめ、アドバイザーに三菱航空機会長を招き、大学教授、県内企業の代表者や多くの有識者、関係者などが集まり、航空機産業界の現状説明や意見交換会が行われた。
 「10-20年先を見据えて産業育成をしたい。県としても支援する」(知事)。このように同県でも官民が一体となって航空機産業への参入を模索する動きが本格的となった。

事例2
 県の産業構造は、製造業が占める割合が高い。これは県内を製造拠点とする一大メーカーの高い技術力が受け継がれているからだ。
 また、県内企業の99%が中小で、製造品出荷額では55%を占めている。これは大企業が少ないといった県の課題でもあるが、中小企業が集積しているため、モノづくりを支える基盤技術が整っている。
 これまでアナログ技術、基盤技術、健康科学の3分野で企業立地促進法を策定していた。10年度から、新たに『環境関連産業』を加えた。今後、需要の伸びに期待できる新エネルギー分野、省エネルギー分野、新素材分野などを掘り起こしていく。

事例3
 電子部品や精密機械を中心に発展してきた県の産業が大きな転機を迎えている。リーマン・ショック直後の大幅な受注減を経て、少しずつ回復傾向にあるものの、目覚ましい発展を遂げているアジア諸国の工業力を前に「ものづくり」のポテンシャルを発揮しにくくなっている。
 そこで県では4月、世界に負けない次世代産業の確立に向けて新プロジェクトをスタートさせた。プロジェクトは地域産業の特性をもとに「環境・省エネ」、「健康・医療」、「航空」を成長分野をして位置づけ、重点的に県が支援していくことを目的としている。
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 事例1から3を一読して、似たり寄ったりの内容であるという印象をお持ちのことと思います。しかしこれは、三重県の産業政策の説明ではありません。
 事例1は富山県、事例2は群馬県、事例3は長野県のそれぞれ政策であり、日刊工業新聞WEBの「地域応援隊」というコーナーに掲載されているものです。(文章ははんわしが一部修正しました。)

 国が示した「新成長戦略」でも、環境産業や健康産業が今後の成長が期待できる有望分野であると書かれています。また、事例1のように、日本の主力産業であった自動車は主役の座を中国や韓国に明け渡しつつあり、自動車より付加価値の高い航空・宇宙産業分野に企業を誘導しようという政策(つまり、自動車の代わりにジェット機やロケットを作るように変えていこうという政策)を中部経済産業局あたりが進めています。

 しかし、これらの将来像は、国がわざわざ言わなくても、ある意味、日々経済活動をしている企業経営者にとっては自明のことでしょう。生き残りのために、航空機分野への新規参入を目指す企業もあるでしょうし、エネルギー分野に進む企業もあるでしょう。
 現代はもはや高度成長時代ではないので、国(行政)が「この成長産業分野に国の産業全体を引っ張ろう」などということはできないし、意味もありません。

 むしろ、ある県が「ウチの県は航空宇宙を産業政策の主役に決めよう」とか、「環境・省エネを中心に据えよう」などと決めたとしても、実際の経済活動は県境などまたいでいるし(それどころか、国境さえも軽々とまたいでいます。)、一つの県の県内に存在する企業は何万社もあって、業種業態、規模も千差万別です。
 なので、航空機以外、環境・省エネ以外の企業はどう支援するのか、という問題になり、それらを見捨てるわけにもいかないので、そちらにも融資だの補助金だので支援を継続する、結局は「うす撒き」型の政策になりがちです。

 わが国の製造業を取り巻く状況は危機的です。円高やデフレ傾向は収束する気配がないし、新興国は追い上げの段階ではもはやなく、日本と肩を並べるレベルにまで成長しています。
 人口たかだか何百万人しかない「県」が、政策で独自性を競っても、実はそれは独自でもなんでもないし、そもそも新興国に対抗できる集積の規模では全くありません。

 このような独自性競争は全くムダではないでしょうか。研究開発利権そのものと言っていいかもしれません。

 残念ながら三重県は参加を見送っていますが、近畿地方の2府5県が関西広域連合の設立に向けて動きを進めています。この事業内容の中に「広域産業振興」というものがあり、関西圏全体での産業振興ビジョンの策定や、産業クラスターの連携、公設試験研究機関の連携、合同プロモーション・ビジネスマッチングの実施、新商品調達認定制度によるベンチャー支援などに取り組む予定のようです。

 基本的に、中小企業振興策(保護政策を含む)や、地域資源活用ビジネス振興、コミュニティビジネス振興などは府県が単体で担うのがいいとしても、いわゆる研究開発型の製造業支援や、港湾・道路・研究施設などの建設といった産業基盤整備は、規模の面から考えても、経済活動のパフォーマンスの点から考えても、県境を越えた地方公共団体である広域連合が担うのが最もふさわしいのではないでしょうか。