2011年6月30日木曜日

地産地消から、地産地商へ

 労働政策研究・研修機構の伊藤実氏の著書「成功する地域資源活用ビジネス」(学芸出版社)を読みました。

 離島や中山間地などの、いわゆる「田舎」は都市部に比べて経済的な疲弊が進んでるのは事実です。
 これらの地域では、もともと産業構造が農林水産業やその加工業中心であったものが、高度経済成長期に人口流出が進み、同時に建設業など官需に依存した産業が伸張してくる傾向がありました。
 
 その結果、小泉内閣以降の公共事業削減のあおりをまともに受け、同時並行していた高齢化・少子化もあって、経済活動はもちろん、コミュニティ機能や、集落の存続すら難しくなっているのです。

 しかし、全国を丹念に見まわすと、官民一体となって戦略的に新しい特産品を開発したり、ビジネスモデルを創造・構築して経済的に自立している「地域おこし活動」の成功例が多く存在するのも事実です。

 伊藤さんが本書で取り上げるのは
●小川の庄(長野県小川村)-おやきビジネスの主役はおばあさん
●吉田ふるさと村(島根県雲南市)-本邦初の卵かけご飯専用醤油の大ヒット
●明宝特産物加工・明宝レディース(岐阜県郡上市)-希少価値を高める手作りハム&ケチャップ
●ふるさと海士(島根県海士町)-上質な海産物や肉牛で離島をブランド化
 の4つです。
 これらはいずれも非常に有名な事例なので、地域産業振興に従事している方にはおなじみの地名かもしれません。

 伊藤さんの切り口が新鮮なのは、この4事例が、実はいずれも「第三セクター」が主体となった成功例であることに着目する点です。
 行政が民間と共に出資し、株式会社や財団法人などを設立するのが第三セクターと呼ばれるもので、バブル時代の「リゾート法」や「ふるさと創生1億円事業」が全国をフィーバーに陥れていた頃、地域活性化の装置として全国各地、津々浦々で雨後のタケノコのように無尽蔵に設立されました。
 あなたの住む市町村にもきっと2つや3つはある(あった)はずです。特産品開発、物販施設、レストラン、リゾート施設、宿泊施設、温泉、スポーツ施設、博物館・美術館などなど。
 そして、その多くが放漫経営によりバブル崩壊と共に経営破たんするか、現在も細々と継続しています。

 伊藤さんは、その原因の多くは、第三セクターが大口出資者である県庁や市役所、町村役場の「出先機関」化し、経営がわからない役人が経営陣に送り込まれ、しかもその人事がルーティン化してしまい、誰も経営責任を取らない無責任体制になってしまったことにあると指摘します。
 取り上げられた成功事例は、役所は出資や事業に協力はするものの、経営には口を出さず、そのかわり決して過保護にもせず、民間の人材がみずからの創意工夫と努力によってビジネスを軌道に乗せたものです。
 すべてが事業の芽が出るまでに長い期間を有しており、現在の「成果主義」に偏った近視眼的な地方自治体が増えている中で、やはり稀有な事例だとしています。
 また、事業の中心になったのは並外れた情熱を持ち、人の二倍も三倍も努力する優れた経営者(リーダー)の存在も見逃せません。
 俗に「よそ者、若者、ばか者」と言われるのは誤りだということは以前このブログにも書きましたが、ここで取り上げられるリーダーたちも、静かに情熱を燃やし、人柄と人徳で他のメンバーを引っ張っていく賢者です。決して粗野な「ばか者」ではないことに注意が必要です。

 伊藤さんも言うように、従来の特産品開発や地域ビジネスは、ともすれば「地産地」などと言われていましたが、一定の範囲内で完結してしまうような響きがある地産地消よりも、大都市圏に積極的に売り込んでいく地産地の視点が求められます。

 はんわしが思うに、三重県内でも多くの心ある地域ビジネス従事者はそのことに気づいています。問題なのは、それでは実際にどう商品化し、売り込んだらいいのかというスキルが不足していることと、そもそもその前提となる「ビジネスを大きく拡大しよう」と踏ん切る経営者が、決して多くないように見受けられることです。
 踏ん切るか踏ん切らないかの違いは、つまりは「リーダー」の資質とか、踏ん切りに至る地域事情の違いなのでしょうが、イノベーションがどうすれば起こるのかが科学的にはよく解明されていないように、地産地商ビジネスへの踏ん切りがどうすれば生まれるのか、その機序の学問的な追及が待たれる気がします。

2011年6月29日水曜日

今年初のカキ氷in尾鷲

 今日は尾鷲市に出張しておりました。国道42号に設置してある気温の表示が35℃になっていたので覚悟はしていましたが、クルマを降りた途端、熱風が全身を包み、直射日光が容赦なく照りつけ、まさに灼熱でした。尾鷲をはじめ全国の勤労者のみなさま、本当にご苦労様でした。

 驚いたのは三重県尾鷲庁舎が耐震工事を行っている最中で、すっかり外観が変わってしまっていたことです。竣工してから相当年数も経っているので、この手の建物に良くある、外壁部につっかえ棒というか、しんばり棒みたいなのをクロスさせた補強が施されていました。
 また、高速道路の工事は着々と進んで、国道42号から尾鷲北インターチェンジへのアクセス道路も拡幅工事が進んでいて、付近の家々はすべて立ち退かされ、墓地も改葬されて姿を消しており、尾鷲庁舎周辺の様子も2年前とすっかりかわってしまっていました。

 ただ、暑くてボーっとしていて写真を撮るのを忘れたのが残念でした。

 その後、打ち合わせをした夢古道おわせで今年初のカキ氷を食べました。暑さにこれは効きます。
 と同時に、打ち合わせメンバーみんなで、まだ6月なのに7月になったらどんなに暑苦しい毎日になるのだろう・・・と心配し合いました。

 さて、話は変わりますが、イオンリテール㈱東紀州観光まちづくり公社の共催によ「熊野古道講座」が開催されるそうです。
 7月7日(木)はイオン尾鷲店で午前11時からと午後1時からの2回。
 7月9日(土)はイオン明和店で同じく
午前11時からと午後1時からの2回、の合計4回行われます。

 内容は、熊野古道伊勢路でボランティアガイドを務める方々が結成している語り部友の会の副会長 川口有三さんによる講座と、熊野古道クイズとのことです。
 参加は無料ですが、どちらも当日午前10時から申し込み手続きが必要で、先着30名だそうです。
 詳しくは東紀州観光まちづくり公社のホームページを。

 岩手県平泉や、小笠原諸島が世界遺産となり、先輩の世界遺産である熊野古道への関心も再び高まってきそうな気配です。
 高速道路無料化実験が終了し、東紀州の観光交流はまさにこの夏が正念場です。さまざまな集客イベントも行われるようですが、イオンのような大手企業とのタイアップも有効なPR手段だと思います。このような企画もどんどん実現させてほしいものです。

2011年6月28日火曜日

「工業国」の発想から脱却できない日本(その3)

日本経済が何をやってもダメな本当の理由(櫨 浩一著 日本経済新聞出版社)の読後感です。
承前(平成23年6月27日 「工業国」の発想から脱却できない日本(その2)

 さて、サービス業を中心とした内需型産業構造への移行が日本のために不可欠だとしても、製造業に比べてサービス業は生産性が低いことが長年問題とされてきました。サービス業は生産性向上のスピードも遅く、現在のような経済成長は達成できないのではないかという疑問が生じます。

 櫨さんによる反論のひとつは、日本の今の産業構造は製造業の比重が高く、欧米に比べてむしろサービス経済化が遅れているということです。ここ20年間の経済成長率は、欧米が日本を上回っている事実からすると、日本の産業構造はむしろサービス経済化が遅れており、欧米型産業構造への追随こそが必要なのです。

[世] 実質経済成長率の推移(1980~2011年)の比較(日本、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス)

 また、櫨さんは日本のサービス業は決して生産性が低くないといいます。きめ細かく丁寧なサービスなのに、そこから代金を徴収しない(価格転嫁しない)ので売り上げを高めることできないことが原因だとのことです。

 また、製造業は生産性が急激に上昇しても、薄型テレビのように価格も急速に低下するので結果的に利益が上げられない体質になっています。逆に、サービス業は生産性がなかなか向上しません。20年前の理髪店も今の理髪店も、一日で対応できるお客の数はそれほど増えていないはずです。しかし調髪代金は値上がりしています。消費者が必要とする商品(サービス)であれば。生産性に関係なく価格は相対的に上昇し、産業としての利益も賃金も高まるのです。

 それでは、具体的に日本はどのような改革に取り組んでいけばいいのでしょうか。
 まず、必要な資源を海外から輸入すること、その代金を得るための輸出が重要なことはこれからも変わりません。海外資産を上手に運用して経常収支黒字化をキープすることも重要です。

 これと並行して輸入で対応可能な財は積極的に輸入し、これによって代替される産業の労働力や生産施いつ日は、医療、介護、子育てサービスなど海外から輸入できない産業に投入すべきです。
 しかし、医療や介護は政府が強く関与しており、実際には国民のニーズは大きいにもかかわらず主に財政上の原因から医療費・介護費は抑制されています。これを直すには「自分のお金を使って自分が欲しいサービスを買う」という市場原理を現在よりも大きく取り入れるしかありません。

 もっとも、これによって政府の役割がなくなるわけではありません。健全な経済市場には公正で公平なルールの適用が不可欠です。よき審判としての政府の役割は、今以上に重要になります。

 また、消費拡大のためには企業の利益をより多く消費者に還元することが必要で、企業が株主に利益を配当する際に、企業への課税を軽減することも提唱します。
 
 以上、雑駁ではありますが、レビューしてみました。地域産業振興に関心がある方には必読の書であると思います。
 地域産業政策にとって、堅実な製造業を重視しつつも、軸足をサービス業に移動させていく展望と戦略が強く求められてくるでしょう。それは、おそらく輸出型製造業の海外移転が円高のうちに加速され、かつ、国家財政が破綻の兆しを見せ始める、もう間もなくです。

2011年6月27日月曜日

「工業国」の発想から脱却できない日本(その2)

日本経済が何をやってもダメな本当の理由(櫨 浩一著 日本経済新聞出版社)の読後感です。
承前(平成23年6月25日 「工業国」の発想から脱却できない日本

 日本には原油がなく、国内産の鉱物や食料なども十分ではありません。これらは海外からの輸入に頼らざるを得ません。
 しかし、「貿易は必要不可欠である」ということと、「外需に頼って経済を維持・拡大すること」とは似て非なる話だと櫨さんは言います。

 GDPに輸出が占める割合は、日本は15%程度に過ぎず、ヨーロッパ諸国と比べても低くなっています。しかしドイツなどヨーロッパ諸国は、GDPに占める輸出の割合は多いのですが、同時に「輸入」の割合もはるかに多くなっています。

 日本は輸出の比率と輸入の比率が並行しておらず、このことは日本が「資源を輸入するために輸出する」のではなく、輸出と輸入の差を拡大して経済成長するという、「外需依存型経済」であることを示しています。

 日本が輸出型産業で経済成長しても、輸出で稼いだお金が資源や製品の輸入に回って初めて、国民の生活が豊かになることに役立ちます。

 しかし、現状は日本国内の需要不足(=生産過剰)を補うために輸出拡大が叫ばれているのです。経済学では貿易を「比較優位の理論」で説明しますが、日本はたくさん輸出はするのに、外国に比較優位がある製品の輸入をブロックしていては国際的な水平分業が成り立たず、結果的に国民生活も豊かにならないのです。

 また、日本では貿易収支が黒字であることに対して異常な執着を燃やします。貿易収支が赤字なのは国家にとって損失であるというイメージが強く定着しています。
 しかし、(当たり前ですが)貿易収支(経常収支)の「黒字」とは「利益」のことではありません。貿易収支は単に日本の輸出額から輸入額を差し引いた数字であり、企業の利益(売り上げ-コスト)とは考え方がまったく異なります。

 世界経済全体では、ある国の輸出はどこかの国の輸入なので、世界中の輸出金額の合計は(理論的には)世界全体の輸入金額の合計と一致します。日本が貿易収支を黒字にするためにはどこかの国は赤字になるわけで、日本が貿易黒字を続けて対外債権をどんどん増やしていくことは、他の国にとって対外債務が増え続けることです。このような「一人勝ち」が世界経済全体にとって望ましいことでないのは明らかです。
 しかも、日本は所得収支も大幅黒字なので、仮に貿易収支が赤字になっても当分の間、困ることは何もありません。

 このように、3つの呪縛に対して実証的に反論したあと、櫨さんはこれからの日本は「消費主導型」の経済に移行しなくてはならず、産業構造もサービス業を中心とした内需型に移行することが急務だとします。(つづく

*グラフは経済財政白書(平成22年度)から引用

2011年6月26日日曜日

伊勢高柳商店街の「夜店」をのぞいてみた

 超ローカルな話題ではありますが、伊勢市民と、伊勢市を中心とした度会、鳥羽、志摩地域の市町の住民だけがよく知っているものの一つに、「高柳(たかやなぎ)の夜店」があります。

  高柳商店街(エスポアたかやなぎ)は伊勢市を代表する商店街の一つですが、「夜店」は何でも大正時代から続いている恒例行事だそうで、6月中旬から7月上旬にかけての時期、普段は夕方で店じまいしてしまう商店街が営業時間を夜間まで延長し、それにあわせて縁日のように露店が立ち並んだり、踊りなどの余興が開かれたりするという、 「夏のイベント」とでもいうべきものです。(日程は「みえの中心市街地活性化NAVI」をご覧ください)

 聞いた話では、もともと高柳近郊の農家の人々が、田植え(昔は6月に行うことが多かった)の作業も終わり、ちょっと一服する時期、あるいは暑さが厳しい夏にかけて季節の日用品をまとめ買いするニーズに応えて始まったものだそうです。
 今では伊勢市の初夏の風物詩として、家族連れで楽しめるイベントとなっている感じです。
 俗に、いち、ろく、さんぱちと言われ、1と3と6と8の日に夜店がっ立ったそうで、現在は土・日の週末にも夜店が行われています。(なので、開催期間中も毎晩やっているわけではありません。)


 ふだんはあまり活気があるとは言いがたい高柳商店街ですが、夜店の日は普段の50倍くらい、つまり500名くらいの人は集まってきます。特に週末の夜7時くらいには、まっすぐ歩けないほど大変な混雑になります。


 今年は何年ぶりかで「おばけ屋敷」が復活することになったそうです。手づくり感いっぱいですが、子どもたちにとっては良い思い出になることでしょう。

 はんわしが注目したいのは、ここ高柳商店街は、三重県が生んだ全国区フランチャイズチェーンの一つである、百円コンビニUSマートの発祥の地であることです。
 この場所にあった田口砂糖店が業態転換して、百円均一とコンビニを合体させたビジネスモデルになったもので、同社のホームページによると現在時点で全国27都道府県にフランチャイズが展開しています。


 小売店という最も地域に密着した業種であっても、商圏人口の減少や高齢化、生活様式の多様化など市場の成熟化と向かい合わなくてはなりません。
 その意味では、品揃えなどの強化とあわせて、USマートのような新しいビジネスモデルの創造がますます求められてくると思います。

2011年6月25日土曜日

「工業国」の発想から脱却できない日本

 日本経済が何をやってもダメな本当の理由(櫨 浩一著 日本経済新聞出版社)を読了しました。非常に有益な本でした。

 我が国を代表する民間シンクタンクであるニッセイ基礎研究所の研究理事という立場からの、先入観のない非常にスタンダードな立論を分かりやすく展開しています。
 
 バブル崩壊から20年、日本の経済は低迷したままです。政府はさまざまな経済対策を講じてきましたが、そのほとんどは成果が上がっていません。

 短期的には、生産過剰による需要不足が最も大きな問題です。
 しかし、長期的な日本経済の持続可能な解決策は、日本経済を内需主導型に転換させるしか方法はないというのがこの本の論旨です。

 この、外需型から内需型への産業構造転換論は、日本が景気後退期に入ると必ず出てくる議論ですがいまだに実現していません。なぜでしょうか。

 櫨さんは言います。
「日本経済の内需主導への転換を阻んでいるのは、我々の考え方が、日本経済が供給力不足の発展途上段階だった時代から変わっていないからです。すなわち、とっくに先進工業国になったにもかかわらず、いまだに、経済発展のために生産性を高め、企業の国際競争力を強化して輸出を拡大しようという生産優先の考え方から脱却できていないから」です。

 その結果、企業は消費者が本当に欲しいと思っているものを供給せず、(需要がないのに)作りやすいものを作って売ろうとか、作っているものを何とか売り込もうとしているミスマッチが生じているのです。

 客観的に見て、今の日本で最もニーズの高い「商品」が、医療・介護・子育てといった「サービス」なのは明らかです。これらは極端な供給不足であって、仮に労働力などの生産資源をスムーズにこの分野に振り向けることができれば、これらの課題は解決に大きく近づくことでしょう。

 一方で、中国など新興国が工業化し、大量の資源を消費するようになっているので、今後は資源やエネルギーの確保が我が国にとって大きな制約になります。海外の需要に頼って、海外の資源を大量に輸入し、国内で加工して大量に輸出するという手法をさらに拡大することで日本経済の成長を持続させることはもはや不可能なのです。

 では、日本はなぜ生産優先の考えから脱却できないのでしょうか。
 櫨さんは幾つかの呪縛があると言います。呪縛というくらいですから、もちろんこれらはすべて誤解であり、正されなければなりません。

1 消費は浪費であるという呪縛
 資本はすべて将来の生産拡大のために設備投資に向けられ、消費を増やして需要を大きくしようという発想が生まれなかった。

2 日本は無資源国であるという呪縛
 日本には資源が少なく、それを得るために輸出が必要なのは事実だが、「資源を輸入するため」という理由が忘れられ、輸出を増やすことが自己目的化してひたすら追求されている。

3 少子高齢化(国内市場は縮小する)という呪縛
 生産活動を行う現役世代に比べて高齢者の割合が増えるので、その高齢者の分が供給不足になることが少子高齢化の本質的な問題。しかし現在は需要不足であり、状況がまったく違う。

 それぞれの「呪縛」の正体の詳細はぜひ本書をお読みいただきたいのですが、櫨さんの言う「日本経済に必要なのは輸入代金として必要なだけのお金を輸出で稼ぐことであり、それ以上のお金を輸出で稼ぐ必要はない」ということをここでしっかりと押さえて、次に進みたいと思います。(つづく

2011年6月24日金曜日

あなたはオンリー・ワンですか?

 三重県中小企業家同友会が主催したセミナー「地域中小企業が生き残る道」に参加させていただきました。
 講師は愛知淑徳大学ビジネス学部の真田幸光教授。国際経済情勢に精通しており、その知識の上で日本の中小企業はどうあるべきかを提言している先生です。
 夜7時から9時過ぎまで、大学の野球部で鍛えられた(?)という大きな声で、2時間以上、熱く語っていただきました。

 以下、はんわしのダイジェストです。(文責はすべてわし個人にあります。)
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 全国の中小企業の現場を回っていると、多くの中小企業が売り上げの低迷に苦しんでいる。売上の確保は企業にとって最も大事なこと。そして、国内市場と海外市場のうち重要なのは国内市場である。
 海外市場には多くのリスクがある。言葉、為替、法制度などなど。
 経営資源が限られている中小企業は、このようなリスクを避けるべきで、まずは国内市場での生き残りを考えるのが本筋。

 しかし、自らのビジネス形態や市場の将来性を考え、海外に行かざるを得ない理由があるのなら、思い切って海外に目を向けるべき。
 海外進出で注意すべきなのは、売上げでも利益でもシェアでも、何か目標を数値化してあらかじめ明確にしておくということ。リスクが高い海外に、思いつきで出てはダメ。事前に十二分の検討がいる。
 数値目標化しておくと、うまく行かない時にどこがうまく行っていないのかがわかり、失敗の原因を検証して、それに対処することができる。
 ではどの国でビジネスをするべきか。中国、インドは人口が急増し、国民生活や意識も一定レベル以上になってきた。もう一つ、アメリカにもっと注目してよい。

 経営者がよく考え、決断すべきなのは、自社のビジネスモデルがマス・マーケットを対象にしたビジネスか、少量多品種ビジネスかということ。そして、そのどちらで生き残っていくべきか、あるいはこの2つで、どう事業ポートフォリオを組むかということ。
 大事なのは、「世界の中で必要とされているもの、求められているもの」をイメージし、わが社でそれが作れるのかどうかという視点である。
 言い換えれば「わが社にしか作れないものは何か」の問いに答えられるかということである。

 オンリーワン企業になれば、商品を「言い値」で売ることができる。つまりハイマージンを確保できる。
 そのためには、自社の実力を把握し、立ち位置をハッキリ認識することが必要。世界中を見渡し、「誰が最も高く自社を評価してくれるのか」を調べることである。
 それには他流試合が必要。独りよがりはいけない。
 展示会に積極的に出展し、同業他社や、他業界の企業の実力がどれほどのものかをよく知らなくてはならない。
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 だいたい、こんな内容でした。もっとも、先生の話術はもっと迫力も説得力もありましたが。

 興味深かったのは、講演終了後の、聴衆(中小企業経営者)との質疑応答でした。
さすがに皆さん、国際経済情勢への造詣が深く、マクロからミクロまでさまざまな質問が出たのですが、その中で
「このたびの震災で影響が世界中に波及した、自動車用のマイコンを一手独占的に製造していたメーカーは、果たしてオンリーワン企業なのか?」というものがありました。

 真田先生の定義によるオンリーワン企業は、コストを適正に価格に転嫁できる企業(言い値で売れる企業)のことです。価格決定権を握っていることで、きちんと利益を確保しているかどうかがメルクマールなのです。
 ところがこのマイコンメーカーは、シェアは世界的ですが例年大幅な経常赤字を計上しています。このような安売り型の企業は、経営戦略が間違っている(自社の製品の本当の価値が経営陣に分かっていない)、というのが先生のコメントでした。
 最近の一連のSCMの問題を、企業の経常利益から捉えた視点は新鮮でしたし、大変説得力を感じました。

 このような貴重な勉強の機会を与えていただいた真田先生と、三重県中小企業家同友会の皆様に感謝します。 

2011年6月23日木曜日

ピントを後から合わせるカメラ、匂いが出るテレビ

 Lytro なるアメリカのメーカーが、「light field camera」という、撮影後にピントを修正したり、写真内の好みの被写体にピントを合わせるといった加工が可能な画期的なデジタルカメラを開発していることが公表されました。年内にも発売予定だそうです。

 IT Media Newsによると、通常のカメラのレンズでは、ピントが合う位置は常に1点で、広角レンズで絞り込むと全体的にピントが合ったように見える(被写界深度が深くなる)のですが、この場合もピントが合っているのは1点であり、あくまで“全体にピントが合っているように見える”に過ぎない、ということだそうです。(実はわし、よくわかっておりませんが・・・)
 しかしこのlight field cameraは、メインレンズで光をとらえた、センサーの前の配置した無数のマイクロレンズアレイを通過した光の方向を、マイクロレンズごとに記録する方式。
 このデータをソフトウェアによって処理を行うことで、撮影した範囲の任意の点のピントを撮影後に再現できるそうです。
 つまり「このカメラが実現すれば、ピンぼけからは永久におさらばできることになる上、オートフォーカスの合焦時間の遅れにイライラすることもなくなる。」ということです。

 もうひとつ。
 GIGAZINEによると、カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者と、サムスン高度先端技術研究所のJongmin Kim氏が率いる研究チームとが、映像に合わせた匂いを発するテレビを開発中だということです。
 「X-Y matrix system」という技術により、小さな装置からさまざまなにおいを精製することが可能となり、映像で流れたピザやコーヒーなどの食べ物のにおいや、アイドルや女優が映し出された際にその人をイメージした香りを放出するなど、色々な用途が検討されているそうです。
 においの元となるのはアンモニア水溶液のような液体で、細い金属のワイヤーに電気を通すことによって液体をガス化し、匂いを放出する仕組み。
 これらは無害で非可燃性のシリコン製ケースの中に収納され、熱と匂いのガスの圧力が発生した際にケースのごく小さな穴が広が り、においが放出される仕組みとのことです。

 家電では、世界中でさまざまなイノベーションが起こりつつあるようです。
 イノベーションは「技術革新」ではなく、科学技術を応用した新しいビジネスモデルの開発です。この二つが単なる目先の変わったデジカメ、機能が追加されたテレビ、という従来の延長線上にある新商品でなく、これによって写真という分野そのものが、あるいは番組というコンテンツそのものが革新するような製品になれば面白いと思います。
 

2011年6月22日水曜日

三重県版事業仕分けへの疑問(文句ではない)

 三重県版事業仕分け なるものが今秋実施されるようです。無駄遣いが排除されるなら結構なことです。
 三重県庁の全事務事業1900件が対象なのですが、よく制度を見ると、このすべてが仕分けられるのではありません。
 外部仕分け人による政治パフォーマンスとして楽しくショーアップされる「仕分け」の俎上に載せられるのは、1900件から

1 三重県の各省庁にあたる「各部局」で6月から8月にかけて、妥当性・必要性・有効性・効率性・緊要性の五つの観点から評価、検証を実施し

2 それを三重県の財務省に当たる「総務部」が聞き取りをした上で100件程度に集約し

3 さらにその後、外部有識者の意見を聞き、40~60事業を選定

 するという3段階の「選抜」を経た上でのエントリーです。結局仕分け(ショー)の対象となるのは、全体事業のわずか2~3%に過ぎません。
 これを仕分けるというのですから、事業廃止の成果はせいぜい1%くらいでしょう。
 それ以前に、都合の悪い事業は「自己検証」によって廃止され、生き残らせたい事業はそもそもエントリーから外されることでしょう。誰だってそれくらい考えます。

 しかも、各部局だの総務部だのが自己評価、選定するに当たって、根本の哲学となるべきはずの「仕分けに当たっての基本的な考え方」は、(現時点で)示されていません。

 一体誰がリーダーシップを取って、どのような基本理念で仕分けられるのでしょうか。このようなブラックボックスで、適正に仕分けの目的が達せられるのでしょうか?
 非常に不可解です。

 国の事業仕分けの限界や課題を指摘していた有識者や市民は多数いたはずですが、そのミニ版ともいえる地方自治体の事業仕分けに無関心なように見えるのは、結局、草の根の民主主義が日本では脆弱だということなのでしょうか?

2011年6月21日火曜日

なぜか全然PRされない「中小企業ネットワーク強化事業」

 中小企業応援センター事業が、「国が税金で委託するまでもなく、これらの中小企業支援は商工会、商工会議所などの本来業務である」という主旨で事業仕分けされ、廃止判定されたのは昨年のことでした。
 しかし経済産業省は、この事業をしぶとくも換骨奪胎して生き返らせ、中小企業支援ネットワーク強化事業なる新規事業として今年度は約40億円もの予算をつけました。

 経産省関東経済産業局のHPなどによれば、この中小企業支援ネットワーク強化事業は

○中小企業が抱える経営課題が高度化する中で、個々の中小企業支援機関の日常的な相談のみでは十分な対応が困難なことから、幅広い支援機関から成るネットワーク(全国で約3,000機関目標)を経済産業局を中心に構築。支援機関の連携の強化、支援能力の向上を図ることにより、中小企業が抱える経営課題への支援体制を強化する。

○具体的には、経済産業局が、中小企業支援の専門知識だけでなく豊富な実績を有する専門家を中小企業支援ネットワークアドバイザーとして選定。
 アドバイザーが、ネットワークを構成する支援機関を巡回し、支援機関の相談対応の一環として、高度専門的な相談に直接対応。必要な場合はさらに専門家の派遣により、中小企業が抱える高度・専門的な課題の解決を図る。

○支援機関の相談員はアドバイザーの相談対応に参加し、現場の経験を通じて能力向上を図るとともに、相談対応による知見・ノウハウ等をネットワーク内で広く共有し、支援機関の能力向上を図る。


 というものです。要は、商工会や商工会議所などは頼りないので、国が専門アドバイザーを雇って巡回してあげる。だから中小企業や商工会なんかは、アドバイザーの指導を仰いで勉強しなさい、ということです。

 いや、これは意地悪すぎる表現でした。
 三重県でも財団法人三重県産業支援センターや三重県商工会連合会、津商工会議所、三重大学、百五銀行など、主要な支援機関が47団体、このネットワークに加盟しています。この連携は力強いものです。
 そして、ネットワークを巡回しているネットワークアドバイザーも、はんわしの知っている限り、能力の高い方ばかりです。

 しかし、この事業自体、やはりコンセプトが間違っているような気はします。
 ここまで国が支援機関に助力しなくてはいけないのでしょうか。まさしくパターナリズムです。

 しかも、中小企業に対してネットワークアドバイザーが行うアドバイスは、一種のOJTとして支援機関職員のノウハウ向上に利用されます。一石二鳥のようではありますが、悪く言えば中小企業は実験台です。
 実際に、支援機関の職員からも、このOJTのためにネットワークアドバイザーに同行しなくてはならず、時間が割かれてしまうという悩みをよく聞きます。

 そのせいかどうか、三重県を管轄している中部経済産業局は、この事業のパンフレットすら作っていません。中小企業は、場合によってはアドバイザーとは別の専門家の無料派遣を3回も受けられるシステムなのにです!

 PRもしない事業なら、本当にやめたらいいのにと思うのですが。
 40億円も予算があるなら、各地方自治体や支援機関、コンサルタント会社、NPOなども含めて、地域で最適な支援ネットワークの構築をコンペさせればよいのです。
  

2011年6月20日月曜日

自動車業界の節電「足並みに乱れ」

 ホンダが東日本大震災で落ち込んだ工場の稼働率を上げるために、今夏の木曜日に一部の工場で自動車部品などを生産することが分かったとのことです。

 福島原発事故に起因する全国的な原発運転によって深刻になると見られる電力不足に対応するため、自動車メーカーで構成する日本自動車工業会(自工会)は先月、節電対策として全国の自工会会員メーカーの工場で7月~9月の三ヶ月間は木、金曜を休業することを申し合わせていました。

 鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)のエンジン部品、浜松製作所(浜松市)の変速機の製造に携わる計約150人と、熊本製作所(熊本県大津町)の発電機部門の約150人が対象で、7月の木曜日2日間を稼働日とするとのことで、8月以降は未定だそうです。

 ホンダは「部品製造が追いつかず、操業しないと完成車の生産に支障が出る。生産継続のため、やむを得ないと考えた」と説明しています。
 新聞各紙は、「自工会の申し合わせにもかかわらず、自動車メーカーの足並みが乱れた格好だ」といった主旨の報道をしていますが、実際に自動車は現在猛烈な品薄であり、ホンダとしては背に腹は代えられない事情なのだと思います。しかも操業する木曜日はたった二日間です。

 大阪府の橋下知事も言うように、電力会社が原発停止のためとして呼びかけている節電は、実は根拠が薄く、「原発が必要という議論の土俵に載せようという意図を感じる」部分があるのも事実だと思います。
 おそらくホンダのようなグローバルな大企業も、そのへんの需給の情報を正確に握っていて、このような挙に出たような気がします。
 知らないのは田舎の人だけだったりして・・・。

2011年6月19日日曜日

(不定期連載)おかげ横丁で見かけた新商品

 高速道路無料化社会実験の最終日ということもあってか、伊勢神宮内宮前のおはらい町は時おり雨が振る梅雨空ながらけっこうな混雑でした。
 大震災の影響で一時は観光客の落ち込みが深刻だった伊勢志摩ですが、内宮前に関する限りは例年並みの賑わいのようです。

 ぶらぶらと歩いていると、伊勢盆栽とか、萬金飴の屋台も頑張って営業していて、赤福とか何とかの超メジャーな伊勢みやげもさることながら、新商品や新サービスでチャレンジしている地元伊勢の若手経営者の姿に、何だか元気づけられたりもします。

 さて、今日は2つ新ネタをゲットしました。

 一つは、鯛をまるごと一匹蒸し焼きにした「めでたい焼き」で有名な、尾鷲市のめでたい屋(三和水産)が作っている「鯛だしつゆ」です。おはらい町の魚春商店で購入しました。


 鯛のアラと昆布をベースに、サバ、いりこも使って独特の甘味と旨みを引き出しただし汁で、オビにもあるように、これからの季節、そうめんや冷麦のつけ汁としてもぴったりです。
 350mlで、550円。2倍濃縮タイプ。
 めでたい屋のホームページによると、夏の新商品として「鯛どれっしんぐ」なる和風ドレッシングをリリースしたそうなのですが、残念ながら魚春商店にはまだ入荷されていないようでした。

 2つ目は、おかげ横丁内にある、美杉の郷 八知玉屋「こんにゃくレモン水」です。


 八知玉屋はこんにゃく専門店で、冬場は店の周りで、串に刺したこんにゃくの田楽を食べ歩いている観光客をたくさん見かけます。
 しかし、夏場はどうしても、こんにゃくはしんどいイメージがあります。(刺身こんにゃくのように涼味を楽しめるものもありますが)
 そのせいかどうか、こんなレモン水を発売しているようです。(はんわしは、少なくとも今日初めて見ました。)


 細かく砕いたこんにゃくがブレンドされているというレモン水です。なんとも不思議なノド越しで、酸味と甘みが程よくサッパリ感があります。みなさまも一度お試しください。一杯250円です。 

2011年6月18日土曜日

「全国展開事業」を本当に全国に展開するには・・・

 やや古い話になってしまいますが、5月頃だったか、日本商工会議所(日商)全国商工会連合会(全国連)が、平成23年度 地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト(小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援事業・中小企業庁補助事業)の採択プロジェクトを決定し、公表しました。
 この事業は、全国にある商工会議所や商工会が管内の中小企業などと協力して行う、地域資源を活用した特産品や観光資源の開発など、全国規模のマーケットを視野に入れた取り組みに対して幅広い支援を行う事業です。
 18年度に「地域資源∞全国展開プロジェクト」という名称で支援制度が始まり、平成23年度からは名称を「地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト」に変更。
 地域が抱える課題を解決するビジネスである「コミュニティビジネス」も支援対象に加えられたほか、成果のあがっている取り組みについては複数年度の支援も可能なように制度変更されました。
 *商工会議所と商工会の違いについてはこちら

 ちなみに、日商のホームページ(http://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2011/0428141938.html)によると、三重県内の商工会議所の採択事例は以下の3つです。

●四日市商工会議所
【産業都市・四日市の観光資源発掘・商品化調査研究事業】
 人気が高まってるコンビナート夜景観光や工場見学を核とし、地場の伝統産業である陶磁器「萬古焼」、高級茶「伊勢茶」などの外部評価、調査等を通じ、観光資源となるものを研究し、公害を克服して発展し続ける産業都市・四日市の現状を国内外に示すため観光事業の確立を目指す。
●尾鷲商工会議所
【『道の駅おわせ(仮称)』を核とする尾鷲市周遊プランづくり】
 高速道路開通を機に建設される道の駅おわせ(仮称)を、地域との共存共栄を推進する拠点施設とし、更に、世界遺産熊野古道を有する当地域の中で「東紀州の道の駅」あるいは「世界遺産の道の駅」と位置付けていくための、市内・東紀州周遊プランづくりを進める。
●鳥羽商工会議所
【御食国答志島が再現する天平の御食料理を食す旅調査研究プロジェクト】
 古より、朝廷や伊勢神宮に魚介類を献上し、万葉集に御食(みけつ)国と詠まれる答志島産の魚介類と平安を代表する果樹やまとたちばなの花酵母を活用した天平の御食料理を式年遷宮と合わせ再現、疲弊する島経済の活性化を目指す。

 ちなみに、平成22年度は、亀山商工会議所【東海道坂下宿の観光プラン策定と自然薯を活用したグルメ産品開発】、鳥羽商工会議所【島のかあちゃんオススメの“味と小さな島旅”全国発信プロジェクト】及び上野商工会議所【伊賀の里 観光創出事業】の3つが採択されています。

 また、全国連のホームページ(http://www.shokokai.or.jp/top/Html/shinko/shinko-349.htm)によると、三重県内の商工会の採択事例は以下の3つです。

■津市商工会
【三重県津産高品質ブルーベリー活用製品の事業化と販路の調査研究】
■菰野町商工会
【里山の四季「ふるさと再発見」着地形新観光サービス開発】
■度会町商工会
【お伊勢参りに新伊勢街道・“度会宿”名物グルメ研究開発事業】
■志摩市商工会
【「志摩いつきさば」クラスター形成によるサバ価値力アップ事業】

 ちなみに平成22年度は、志摩市商工会【英虞湾の夕陽と潮風が育てた「きんこの黄金焼酎」開発プロジェクト】、紀北町商工会【紀北町ご当地銘品&グルメランチ創造コンソーシアム】の2つの商工会が採択されています。

 さて、率直に言ってどうでしょうか。
 このブログをご覧の方でも、この全国展開事業の存在や、身近な地域の商工会議所・商工会がこのような事業に取り組んでいることを知っている人は少数だと思います。
 三重県内だけでもこれだけの採択数があるのですから、他の46都道府県全部で採択されている事例は、毎年毎年膨大な数に上ります。

 地域資源の活用、そしてその商品(製品、サービス)を全国に売り込もうという意気やよし、ですが、個々の事業を見ていると、現実問題として果たしてこのスケール、この種の商品開発で、全国の消費者に通用するのか、本当に事業として、ビジネスとして成功するのか、については疑問があることも正直な感想なのではないでしょうか。

 商工会議所や商工会が地域の中小、零細企業の頑張りを支援するのは美しい話です。一市民として、一消費者としては応援したい気持ちでいっぱいですが、果たして毎年採択される何百もの全国展開事業で実際にビジネス的に成功するのはいくつあるのでしょうか?

 そんなことを考えたのは、先日、尾鷲市でサンマ寿司などを製造販売している株式会社橋本屋が中小企業地域資源活用促進法に基づく「地域産業資源活用事業計画」の採択を受けたというニュースを見たからです。

 全国の産地間の特産品開発、観光資源開発競争はますます激化しています。
 その中で本当に地域資源を地域ビジネスにするためには、全国展開事業による商品開発を成功させ、試作とマーケティングを繰り返して製品化し、量産し、全国市場に流通させなくてはなりません。これは激烈で、苛烈な競争です。
 ある意味、この橋本屋のように、法認定という次のステップに進んでいく意欲的な中小企業者を数多く輩出させなくては、とても地場産業化や地域産業の再生などおぼつきません。

 いったい県内のいくつの全国展開事業が成功事例となるのか、支援する側の商工会議所、商工会の力量が問われているはずです。(厳しいことを言えば、平成18年度から今年度まで、全展事業の採択をまったく受けていないような会議所、商工会はもはや不要なのではないでしょうか?)

2011年6月17日金曜日

異文化交流パーティーで考える

 異文化交流パーティーなるものに参加してきました。
 これは、三重県が実施している「グローバルビジネス人材育成事業(Mie-OJT事業)」の受講生たちが自ら企画して開催したもので、ホスト役の受講生が20名あまり、ほかに外国人、日本人の参加者が老若男女30名ほどが参加。立食形式でしたがけっこう盛大なものでした。

 グローバルビジネス人材育成事業は厚労省の緊急雇用創出事業を活用したもので、新規学卒未就職者などの求職者を対象にした人材育成事業です。

 製造業など「ものづくり産業分野」の中小企業において、これから特に必要とされる国内外への販路開拓、プロモーションが担える人材を育成する目的で、Webスキルや外国語、知的財産権などの座学研修を3か月、さらに、実際に三重県内の中小企業でインターンシップ研修を3か月、行うものです。

 以前のブログにも書きましたが、この座学研修は相当にハードなもので、はんわしのような中年男性では気力的・体力的にキツイほどの充実した内容です。 
 実際には受講生は6ヶ月間正規雇用され、いわば仕事として研修に臨んでいるので、受講態度も真剣そのものです。

 4月からスタートし、間もなく3ヶ月の座学を終え、それぞれがインターン研修に巣立っていくという、まさにそのタイミングでの開催でした。
 カリキュラムではビジネス英語も学んでいるので、その実習も兼ねて「異文化交流」というテーマのパーティーになったのでしょうが、実際にはアジア、ラテンアメリカ系の外国人が多かったように思いました。

 パーティーの間、何人かの受講生や外国人の方と話ができました。
 表現は悪いのですが、受講生(求職者)は昨今の労働需給のミスマッチによって苦労している人々、外国人の参加者の何人かは日本経済を下支えしている立場の方々やそのご家族です。

 つまり、日ごろ県庁では会ったり話をする機会がほとんどない方々です。いや、知事や議員や上司しか意識していない県庁職員からは「見えない」人々といっていいかもしれません。
 だからこそ、このような方々からお話を聞ける機会は貴重です。世の中の真実は、おそらくこのようなパーティーの空間でこそ見ることができるのだと思います。

 地方公務員だからこそできる仕事は何か。
 そんなことをしばし考えさせてくれる、意義深い、そして楽しいひと時でした。

 受講生の皆様、いろんなクイズの企画、お疲れ様でした!

2011年6月16日木曜日

伊勢道・紀勢道でも無料化社会実験が終了

 ネクスコ各社は、全国の高速道路の一部区間で実施されていた「無料化社会実験」を平成23年6月19日をもって終了することを発表しました。

 三重県内では伊勢自動車道の津IC以南の区間、伊勢ICまでと、途中の勢和多気JCTから紀勢自動車道の紀勢大内山ICまでの区間で無料化実験が行われていましたが、これらもこの日をもって終了となります。

 はんわしが伊勢志摩や、東紀州地域の関係者に聞いた話としては、


無料化実験のメリット
 ・明らかに通行量が増え、来客数が増加した
 ・無料化とタイアップした観光キャンペーンなどで観光客の一定の囲い込みができた

という意見が非常に多かったです。
 割引よりも何よりも、区間限定にしろ、タダというのは強烈なアピールです。

 一方で
無料化実験のデメリット
 ・交通渋滞(特にIC付近から観光地までのアクセス道路)
 ・交通事故の増加(特に紀勢道のような対面通行の高速道路では、事故で完全通行止めとなってしまう)
 ・日帰り客が増加し、逆に宿泊客は減少した
 ・並走する鉄道やフェリー航路などの利用者の激減
 などが上げられると思います。

 いずれにしろ、一長一短あり、しかも当事者にとってはそれぞれ非常に深刻な問題ですので、これを軽々には評せない気はします。
 しかし、はんわしは日本以外の先進諸国では常識であるように、道路のような公共財の利用は原則として無料であるべきだし、建設費を回収するために一定期間は有料とすることもやむを得ないにしろ、料金を全国でプールして、次々に各地に高速道路を作っていく現行の方式はいかがなものかと思っています。
 その意味では、民主党政権の公約であった高速道路無料化が(社会実験という不完全な形にしろ)一応は果たされたことは評価できるとは考えます。

 しかし、それにしても、この中途半端な終わり方は、迷走し、ぶざまな失敗を繰り返して国民から見放されつつある民主党政権を象徴するものでしょう。

 最も大事なのは、この実験によってどのような効果が生まれ、課題が浮かび上がり、したがって将来に向かって高速道路行政をこうしていく、という方向性を国民に示すものでなくてはならないはずです。
 しかし、政府が行ったのはしょーもない通行量調査だけで、民間シンクタンクのほうがずっと突っ込んだ調査と分析を行っています。もともと乗り気でなかった高速道路会社は最後まで評価について沈黙を通しました。

 その昔、経済対策として、地域振興券とか、定額給付金とかの究極のバラマキとも言える奇策(愚策というべきか)が行われました。
 それでも、定額給付金は2兆円の財源を使って、成長率を0.13%高めたという内閣府による評価は一応行われています。(つまり、定額給付金をばら撒く意義はほとんどなかったということです。)

 高速道路はどうなのでしょうか。
 瓦解寸前の政権なので、もう検証する余力も残っていないような気もしますが・・・

 

2011年6月15日水曜日

コミュニティ・ユース・バンクmomo融資申し込み受付開始

*業務連絡です*

 コミュニティ・ユース・バンクmomoでは、2011年6月1日より7月27日まで、 第10回融資申し込みの受付を行っています。
 コミュニティ・ユース・バンクmomoは、2005年に若者が中心となって設立した、市民による市民のための金融システム(NPOバンク)です。
 豊かな未来を実感できる持続可能な地域社会を目指して、市民からの出資金を原資に、NPOやコミュニティビジネスなどの、地域課題を解決する事業に対する融資業務を行っています。

 「わたしたちの子や孫がこのまちでずっと暮らしていけるように」。そんな想いが込められたみなさまのお金を、同じ想いをもつ東海3県の事業に届けていきたいと思います。
 貸す側、借りる側といった枠を超えて「ともに地域で暮らす仲間として一緒に創っていく!」。
 そんな事業を募集いたします。

 というmomoの事業理念に、はんわしも賛同していますので、この場を借りてPRいたします。

◆対象事業
  豊かな未来を実感できる地域社会をつくる事業。
◆審査方法
  必要書類の提出後、面談、訪問調査を踏まえた上で融資審査委員会にて審議を行い、理事会で決定。
◆審査のポイント
  ・地域性(地域の問題を解決する事業)
  ・市民性(市民参加を促進する事業)
  ・独自性(他に先駆けて挑戦する事業)
  ・継続性(融資実行後も継続する事業)
  ・成長性(人や組織が成長する事業)
  ・発展性(他のモデルとなる事業)
  ・浸透性(人びとの暮らしに浸透する事業)
◆融資対象
  個人、任意団体、NPO法人、社団法人、財団法人、有限会社、株式会社、生活協同組合など
  ※融資は正会員(出資者)のみ。ただし、正会員となるのは、融資決定後でも可能。
◆連帯保証
  融資対象は個人でも法人でも、個人の連帯保証を2名以上必要。うち1名は代表者が保証人となることは必要。
◆対象地域
  愛知・岐阜・三重の東海3県。
◆資金使途
  起業資金、設備資金、運転資金などを想定。
  ※つなぎ融資(補助金などが交付されるまでの資金のつなぎ)は常時募集。その場合、融資額は出資額の40倍まで。
◆返済期間
  最長3年、毎月返済を想定。
◆融資金額
  1件最大500万円を想定。融資額は原則、出資額の10倍まで。
◆貸出金利
  年2.5%(つなぎ融資の場合は2.0%)の固定。
◆詳細はホームページで http://www.momobank.net/

 なお、プロセスマネージャー(資金を事業者につなげるだけでなく、事業者の課題を適切に把握し、問題解決の糸口をともに考えられる役割の人)の養成講座も行うみたいですので、詳細はこちらを
 http://www.momobank.net/news/post_276.html

2011年6月14日火曜日

中小企業に必要な処方箋(その2)

(承前) 中小企業に必要な処方箋(その1)(2011年6月13日付け)

 第1は、国内市場で生き残るためには、潜在需要を見出し、新製品・新サービスの開発や供給による「新規市場の創造」です。
 記事の中では、事例として食の安全安心をキーワードに食品製造に乗り出した卸売業者が挙げられています。

 第2は、徹底的な海外資源の活用と現地化により、「海外市場」に展開することです。
 事例として、受注先からの値下げ要請にこたえるため中国に子会社を設立し、地元中国の企業との連携する中で業績を伸ばしているプレス加工企業が挙げられています。

 第3は、規模の拡大か、あるいは規模の維持かを明確にした対応の必要性です。
 事業規模を一気に拡大した例として、板金加工中心から機械メーカーに事業転換した企業の例が挙げられています。
 要は、中小企業を取り巻く経営環境は大きく変わる中で、多面的な戦略で進んでいくこと、多面的な戦略の中から自社に合った戦略を選択して具体化していくことが必要になっているのです。

 いっぽうで、努力が求められるのは中小企業だけではありません。
 地域雇用や経済波及効果の減少を食い止めるため、行政(地方自治体)や商工会議所、商工会はもちろん、大学や金融機関、住民との協働が不可欠です。
 その協働の中で、地域資源(はんわし注:ここで言う地域資源とは、インフラとか人的資源など、その地域が持つ経営資源を指していると思われます。)を活用して地域での循環を強める事業活動を行う企業を地域で育てること、あるいは誘致することが必要です。
 具体的には、企業の自立を前提とした行政によるある程度の財政資金投入は効果があると植田さんは言います。一例として、地方自治体が住民がマイホームのリフォームを行う場合、地元の工務店などに発注するならリフォーム代の一部を補助する、いわゆる「リフォーム支援」などを高く評価します。いわば需要の創造の呼び水というわけです。

 リフォーム支援は、民主商工会などが強力に進めていることもあってか、県庁内部ではネガティブな評価なのが現状のような気がしていますが、官公需対策といった地域版の需要創造も、一定の効果はあるのではないかと、わし自身も考えています。

2011年6月13日月曜日

中小企業に必要な処方箋(その1)

 週刊エコノミスト(2011年6月7日号)に掲載されていた、植田浩史慶応大教授の「岐路に立つ中小企業に必要な処方箋」を興味深く読みました。
 地域産業振興に従事している方には参考になると思いますので、ご紹介します。

 植田さんは、現在の中小企業が直面する課題を、「中小企業の数」という切り口で整理します。
 戦後の高度経済成長は、大企業と並んで、無数にある中小企業によっても支えられたものです。しかし、大企業の設備や賃金等の労働条件と、中小企業のそれとの格差は大きく、強い少数の大企業と、弱い多数の中小企業という「二重構造」が日本経済の特徴であり、これをどう克服するかがその当時の中小企業政策の大きなテーマでした。
 過少過多、つまり零細な企業が多すぎるので、事業の協同化や事業規模の拡大が行政による支援策の内容だったのです。
   
 その後、紆余曲折はありますが、1990年代になって日本の企業数は減少傾向に転じます。

 卸・小売業では80年代から減少傾向が始まり、次いで製造業、建設業も減少を始め、2000年代になるとサービス業も企業数が減ってきます。

 その主な原因は行政による過少過多対策ではなく、新規創業の減少でした。

 ちょうど欧米がITベンチャーや金融ベンチャーなどによって産業構造を転換させた時期と重なります。
 日本も中小企業イコール弱者という認識でなく、新産業創出の担い手として再認識が始まった時期に、皮肉にも中小企業数は減少し始めたのです。

 大企業が少なく地域雇用の多くを中小企業に頼っている、地方都市や郡部(いわゆる「田舎」)において、企業数の減少による影響は深刻なものがあります。

 ではどうすればいいのか。
 植田さんは、経営環境の変化は、①国内市場の縮小(はんわし的には「成熟化」と呼ぶべきと考えますが)と、②グローバル化の進行の2つがあると言います。
 この2つの条件下で生き残るためには、従来の延長線上に答えはなく、目指すべき市場と自社のポジションを明確にした経営戦略が必要です。
 もちろん、この戦略は経営者自身が知恵を出して作り上げるべきものですが、戦略にも大きな方向性が3つあると言います。(つづく

2011年6月12日日曜日

それは、誰がやるつもり?

 東日本大震災がもたらしたサプライチェーンの寸断は、日本の製造業に深刻な影響を及ぼしました。福島原発の事故が「想定外」によるものだとしたら、自動車大手メーカーが何ヶ月かの間、生産停止や大幅減産に追い込まれたこの事態も、まさに想定外だったのではないでしょうか。
 つまり、下請とか系列取引の構造は、大手メーカーを頂点にしたピラミッド構造だったのではなく、基盤的な部品のうち特定のものは、ごく少数の下請企業によって寡占的に生産が担われていた(=コモディティ化した無数の下請企業が同じ部品を横並びで生産していたのでは決してなかった)のであり、構造は「つぼ型」とか「樽型」と呼ぶべきものだったことが明らかになったのでした。

 常識的に考えて、この対策のためには、結果的に寡占状態となっているジャンルの下請企業数を増やし、ボトルネックを解消することが最優先になるでしょう。さらに、すべての組み立て部品について、最初の個々のパーツからどのような工程を経て組み立て部品になるのかの履歴(こういうのもトレーサビリティというのでしょうか?)を解明する動きが起こるでしょう。
 さらに、為替の円高基調は完全に定着しているので、生産拠点を海外に移転する動きがこの秋以降、加速度的に増大することも確実です。

 日本の人口は長期的に減少していくうえに、消費者の年齢構成も高齢化するので市場は成熟化していきます。モノが欲しい人は減って、医療や介護・福祉などマンパワー中心の高付加価値なサービスが消費の中心になるので、大量生産型の製造業が産業の主役になることは今後非常に考えにくくなります。(もっとも、一定規模の製造業は引き続き重要だし、地域経済を支える担い手の役割は残ります。この点は押さえておくべきです。)

 しかし、そういった外部環境以前に、はんわしがもっとも痛切に思うのは、そもそも製造業で働きたいと思う人が国内では激減していくのではないかということです。
 震災はさまざまな日本の矛盾を噴出させました。原発事故で決定的になった科学技術へ幻滅、エネルギーの有限感、モノやカネは永遠ではないという(村上春樹氏的に言えば)「無常観」などが時代思潮になってきます。
 いくら政府や大企業が「日本は貿易立国であり、ものづくりで貿易黒字を稼ぐしかない。製造業の国際競争力を維持しなければいけない。」と叫んでも、今や日本は所得収支の大幅黒字国であり、長期トレンドでは貿易黒字が重要だとしても、短期的にはモノの輸出でどんどん儲ける必要性は低いのです。

 地味で、(悪く言えば)辛気臭い製造現場で懸命に働いても、その対価はいったい何でしょうか。
 父親や祖父の世代のように、家庭を顧みず、近所に友人もおらず、趣味もなく、マイホームやマイカーの購入によって自己の存在意義を認識する、ただ忙しいだけの産業戦士の生活が待っているのです。
 終身雇用が可能だった高度成長期ならともかく、こんな生活を今の価値観の世代は望んでいません。たったひとつ、ジャパニーズドリームを求める発展途上国の若者たち以外は。

 はんわしの周囲でも、最近の日本経済は「デフレ」とか「景気低迷」とかでなく、構造的な変化が始まっていることが広く認識されてきました。景気対策を何十回やっても効果が出ないことは、不承不承ながらもコンセンサスになってきています。
 三重県内の産業振興についても、第一義的には企業家の自主自律性を基礎にしながらも、戦略的な建て直しが必要です。

 しかし、この戦略を「ものづくり産業(広義の製造業)」の再生策と捉えている限りは、大きな限界に突き当たるでしょう。
 貿易黒字維持が必要→輸出型製造業が重要→そこを行政が支援(具体的には研究開発支援や営業活動の支援、製造業に対応する人材の教育・育成)
 という流れではなく、
 やりがいや満足度を重視し、社会貢献を求めている若い人材
 を出発点として、彼らが進んで就職・就業し、能力を発揮でき、やりがいを強く感じられるような産業を中心とした構造に日本は転換していくべきです。
 というか、これは当たり前のことで、若い働き手が魅力を感じないような産業は、行政がどれだけ支援しても衰退していくことは避けられないのです。

 反対に、あり余る国民の資産を有効に活用するために、世界中の成長企業や成長地域を目利きしてそこに投資し、リターンを挙げるような投資立国に向けて、優秀な人材育成を行うべきです。そのキャピタルゲインを財源に、医療・介護の充実や新エネルギーの開発などの社会課題解決を行うのです。

 かつて「知識集約型の産業構造転換」を標榜していた三重県ですが、究極の知識集約型産業である国際金融産業に構造転換する前に、前知事が交代してしまったのは残念なことではあります。(もちろんギャグです。)

2011年6月11日土曜日

原発大国を選んだ私たち日本国民

 書店には災害対策マニュアル本と並んで、いわゆる原発ネタ、放射能ネタの書籍が大量に平積みされています。

 タイムリーな話題なので、本でも読んで基礎知識はお勉強しておきたいと思いながらも、色々なジャンルのものがありすぎて、題名で選んだのが恵泉女学園大学教授の武田徹氏の 私たちはこうして「原発大国」を選んだ(中公新書ラクレ) です。

 放射線や放射能に関する豆知識本ではなく、太平洋戦争敗戦後から日本政府が進めた原子力政策や世論に関して、「ゴジラ映画」「ウラン爺」「鉄腕アトム」「大阪万博」などといった世相のエピソードに絡みながら持論を展開してゆくエッセイといった内容です。

 村上春樹さんが先日、カタルーニャ国際賞でスピーチした「非現実的な夢想家として」でも言っているように、日本は世界で唯一、核爆弾の被害を受けた国民であり、核エネルギーに対して強烈な拒否感を抱きながらも、経済的な繁栄を追い求め、効率的な社会を研ぎ澄ませていった結果、地震の巣である日本列島に53基もの(世界で三番目に多い)原発を作り、稼動させました。

 村上さんのスピーチは「我々は原爆体験によって植え付けられた、核に対するアレルギーを、妥協することなく持ち続けるべきだった。核を使わないエネルギーの開発を、日本の戦後の歩みの、中心命題に据えるべきだった」と続きます。

 この本の著者である武田さんも、原発賛成派と反対派の論争が、ともすれば争点がかみ合わない不毛なものであって、多くの国民が原発問題全体に無関心になってしまったことに危機感を持っています。
 そのうえで、原発を止めるなら、人工呼吸器や人工透析器の使用者など立場の弱い人に配慮した別の選択も用意する必要がある。つまり、本当に重要な問題は「核か、核ではないか」ではなくて、「弱者を虐げる社会か、そうではないか」であることをまず押さえるべきだと説きます。
 
 そして、技術が高度化し、社会の構造も複雑化している現在では、放射能汚染のような大規模な社会リスクについても、自分の命を守りながら、同時に社会全体のリスクを減らせる社会的行為は選択可能であることを(国民にも)もっと知ってほしい、考えてほしい、と主張します。

 現実問題として、電気のない(あるいは電気の供給が極度に不安定な)社会に戻ることはもはやできません。だとすれば、長期的に原発を維持するのか、廃止の方向性で行くのかの国民的な合意をまず作り、その上で事故のないように、あるいは事故の際のリスクが最低限になるような対応を取っていくほかないように思います。
 その意味で、本書に出てくるエピソードはそれぞれ今となっては象徴的で示唆的なものです。興味深く読むことができました。

 中でも特に印象深かったのは、ある種オカルトじみた次のような話です。(結構有名な話のようですが、はんわしは知らなかったので慄然としました。)

 新約聖書の中に、世界の終末を予言したとされるヨハネの黙示録という部分があります。この第8章御使いの吹く7つのラッパという箇所に
 第3の御使いがラッパを吹き鳴らした。するとたいまつのように燃えている大きな星が天から落ちてきて・・・川と水源に落ちた。この星の名は「苦(にが)ヨモギ」と呼ばれ、川の水はヨモギのように苦くなったのでその水のために多くの人が死んだ。
 という記述があるそうです。

 1986年5月に放射能漏れ事故を起こした、旧ソ連の原発の名は「チェルノブイリ」。
 地元ウクライナ語でチェルノブイリとは、「苦ヨモギ」の意味なのだそうです。
 ひえー。

(注)ウィキペディアによると、苦ヨモギはロシア語でポルィーニ (Полынь / Polynʹ) であり、チェルノブイリにはそういう意味はないそうですが。 

2011年6月9日木曜日

ニセモノの臭い

 いかにも大物然として、その講師は現れました。半強制的に参加させられた講演会でのことです。

 聞いてる側は大多数がスーツ姿なのに、講師センセイはTシャツにロン毛です。
 センセイは映像などのアート作品による地域起こしを生業としておられ、各地でアートイベントを成功させる仕掛け人として全国的に有名な方だそうで、昨日もどっか遠くの街に招かれており、その前もどっか有名な企業に、さらにその前も中央省庁のキャリア官僚に招かれて講演してきたそうです。
 それどころか世界中にアーティスト仲間がいて、全地球を股にかけて活躍されているとのこと。

 そのお説では、
 地域には魅力的な人、魅力的な産業、町、自然、風景などの、いわゆるコンテンツがたくさんある。
 そして今はインターネットやSNSで世界中がつながっており、たった一人でも全世界に向けて瞬時に情報発信できる。
 しかし、県や市町村などの行政はバカなので、いかに自分たちの故郷が素晴らしく、魅力的かということを発信できていない。
 自分だったら近鉄の沿線から見た四日市の古い工場も魅力的な動画作品にして発信し、世界中から観光客を何万人と呼んできてみせる。
 公務員ももっと情報発信の能力を磨き、場合によっては自分のような専門家を活用すればよい。
 自分もボランティアで地域おこしに従事しているが、心ならずも有名になってしまい、政治家や官僚から話を聞かせてくれ、協力してくれと次々オファーが来て困ってしまっている。
 と、まあ、こんな話でした。

 この人の言うことは半分は当たっています。
 一般的に役所の広報やPRには魅力がありません。住民が見ていようが見ていまいが、役所側にはインセンティブがないので当然です。PRのプロでもなく、ましてや財政窮乏の折、真っ先に広告費は予算が削減されるからです。
 また、役人は保守的なタイプが多いので、動画を使ったPRとか、SNSの知識は多くの人が持っていません。
 最新の常識を持っていようが持っていまいが、年功序列で給料は上がっていくので、これまた知識を仕入れるインセンティブがないのです。

 しかし、このセンセイが、「発信側による情報の管理度と受け手側が持つ信頼性はトレードオフの関係にあります」とか、「写真は単に画像としてでなく、適切なキャプションを付けるといっそう印象深くなり効果的です」とかを誇らしげに言うのを見ていると、さすがにここまで「初歩的な」ことまで教えてもらわなくてはいけないのか、とやや不安になってきます。

 「満員のバスに乗ると席に座れない可能性が高い」とか「料理は味だけでなく盛り付けも大事」というのとまったく同じこれらの理屈は、コンテンツの特性でもなんでもない、単なる「常識」です。
 しかし、アートだの、SNSだのという議論がまぶされると目くらましされてしまうようで、わしの隣で聞いていた人もセンセイのお言葉を必死でメモしていました。

 もちろん本質的に問題なのは、このセンセイのレベルでなく、このような人(失礼!)を講師に呼ぶ主催者の側のレベルです。
 もう5年も前、これからはインターネット販売が重要になるから、中小企業向けのネットショップ講座で、ホームページ用の写真のテクニックとか、カラーコーディネートなどの「視覚的な効果」の講座をやる必要がある、とわしが提案した時、ウチの幹部職員はECの無限の可能性はもちろん、イメージ効果さえもビジネスやマーケティングと結び付けて考えることができませんでした。
 やっと5年遅れで、こんな「コンテンツの専門家」に高い(おそらく)ギャラを払って講演させているのです。まあ、マクロ的には事態は改善しているので、良しとするべきでしょうか。

 行政機関は色々な意味で面白いところです。(ホンモノにもニセモノにもたくさん出会えるという点で。)

2011年6月8日水曜日

経産省が「電子商取引に関する市場調査」を公表

 経済産業省が例年実施している、インターネット販売などのいわゆる電子商取引(EC)に関する市場調査の、平成22年度の結果を公表しています。(リンクはこちら

  日本国内の企業間のEC(BtoB)の市場規模は約169兆円で、前年比28.6%増となり、市場規模はリーマンショック前の水準を回復するとともに、 ECの浸透を示す指標であるEC化率(全ての商取引における、ECによる取引の割合)については、15.6%となり、前年比1.9ポイント 増と従来のトレンドに比べて大きく上昇しているとのことです。


 また、消費者向けのEC(BtoC)の市場規模は、7.8兆円となり、前年比16.3%増。ECの浸透を示す指標であるEC化率についても、約2.5%、前年比約0.4ポイント増と上昇しているとのことです。

 ネット取引やネット販売は、このように右肩上がりで成長している、現在の日本では数少ない市場です。
 このため実際に多くの中小企業が参入はしていますが、その一方で、これで採算が取れている事業者は決して多くないというのがはんわしの実感ではあります。

 さすがに昔のように、ホームページを作ったけど客が来ない・・・みたいな甘い考えの方は少なくなりました。ECでも客対応の手間や商売の工夫はリアル店舗と同じか、それ以上に必要です。
 その一方で、SEO対策は日進月歩ですし、最近はSNS活用が主流になるなど、ショップオーナーにとっては日常の研鑽がますます重要になってきています。

 さて、今回のEC調査の特長は、日本、アメリカ、中国の参加国における越境ECの実態調査を行っている点です。日本とアメリカ、アメリカと中国、中国と日本、という三カ国間のモノとおカネのやり取りが分析されているのは大変興味深いものです。

 これによると、中国の消費者が日本サイトから購入する市場規模は968億円。さらにアメリカのサイトから購入する市場規模は1,209億円となっており、EC市場としては相当規模に成長しており、魅力ある販売先になっていると指摘しています。
 中国のインターネット利用者数は、毎年5000万人以上も増加しており、BtoC市場規模も毎年100%近くの増加(!)を見せており、今後も一層の拡大が見込まれています。
 調査結果はいくつかのシュミレーションをしていますが、日本から中国の消費者へのEC市場規模を最も拡大すると仮定した場合、約1兆2600億円に達し、今後の日中間における越境EC市場規模の大幅な拡大の可能性を有しているそうです。
 もっとも、アメリカによる中国消費者向けのECは日本以上に売り上げているので、今後も競争は熾烈になってくると思われます。

 日本国内市場が成熟化する中、中小企業の生き残り策の一つは海外市場への展開です。
 ネットを活用した積極的な海外展開が事業者には求められますし、行政や支援機関も、大手ネットショップモールとの戦略的な提携や、海外市場のマーケティング、消費者の嗜好調査、テスト販売の支援などのEC支援策が求められていると思います。

2011年6月7日火曜日

ママも喜ぶ「パパ好み」

 今日は三重県庁1階の県民ホールで、がんぱろう宮城!復興応援フェアという物産展が開かれました。
 東北関東大震災で深刻な被害をこうむっている東北地方を応援する主旨で、三重県が重点的に復興支援している宮城県の、社団法人宮城県物産協会が主催して行われたものです。

 宮城県というと、お米、特にササニシキが有名です。他に仙台味噌とか、笹かまぼことかもあったでしょうか。
 今日は会場に冷蔵設備もなかったことから、牛タンのレトルトカレー、しぐれ煮、せんべいやおかき、三陸産のりなど、日持ちのする加工食品が販売されていました。

 販売しているスタッフは三重県の職員です。
 なぜか仕事ではなく、あくまでボランティア参加になるそうで、みな休暇を取得しての参加です。役所って、こういう不思議なところです。

 昼休みには県庁職員が多数やって来て産品を買い求めていました。マスコミの取材もたくさん来ていて、ハッピを来て大声で客呼びをしている目立ちたがりの人がいるので、誰かなあと思ったら、あのお方でした。
 
 わしも牛タンラー油と、ママも喜ぶ「パパ好み」なるあられを購入しました。ネーミングに何となくエロい雰囲気を感じてしまうのはわしだけでしょうか。


 ちなみに、このパパ好みというあられは、宮城県では超有名で、パパ好みの歌というコマーシャルソングもあって、誰でもそらんじられるそうです。
 名古屋人における「青柳ういろうの唄」、京都人における「かわみち屋そばぼうろの唄」と同じようなポジションでしょうか。
 パパ好みはなかなかおいしいあられでした。明日も買おうっと。

2011年6月6日月曜日

四天王会館のノビ文具店に行ってみた

 三重県庁は吉田山と言われる小高い丘の上にあって、権力の象徴よろしく下界の県民を睥睨しています。
 吉田山の付近一帯には、農協、漁協をはじめ、行政の外郭団体や関連団体、労働組合が入居しているビルが林立していますが、その一つに四天王会館というビルがあります。

 四天王寺は津市きっての古刹であり、塔世山という山号は、近くを走る国道23号が安濃川をまたぐ「塔世橋」という大きな橋の名前にもなっています。
 最近は、幕末期の写真師として上野彦馬(高杉晋作など幕末志士の肖像写真を多数撮影した写真師)と共に活躍し、若くして没した堀江鍬次郎の墓所としても歴史マニアの間で有名となっています。微妙なポジションではありますが。

 さて、その四天王寺が(たぶん)オーナーだと思われる四天王会館は、おそらく昭和40年代に建築されたであろう鉄筋コンクリート3階建ての建物。
 今ではほとんど見かけない鋼製のサッシ窓やタイル張りの外壁など、古き良き高度成長期のレトロな雰囲気が漂っています。

 わしも、ここの前はもう何百回も、数え切れないほど歩いていますが、実際に中に入ったことは一度もありませんでした。
 昔は大手建設会社の事務所がいくつも入居しており(県庁近くで公共工事の入札に便利なせいか?)、幼稚園もあったりしたのですが、オフィスは多くが撤退し、幼稚園も何年か前に閉園してしまいました。

 そんなひっそりとしたビルの2階にノビ文具店はあります。
 今年4月にオープンしていたようですが、今日はじめて実際に店内に入ってみました。はんわし四天王会館デビューです。

 明らかに耐震性のないレトロな階段を上っていくと、ひっそりとお店が戸を開けています。ノビという名前からしてなんだか地味です。

 中に入るとさまざまなデザインの便箋やカードがたくさん並んでおり、大小のマトリューシュカとか、革製のペンケースや筆記用具など、小洒落た雑貨の数々が展示されています。奥には天然木の積み木とか、子供服なんかもあります。
 昼休み時間だったせいかOL風のお客も何人か品定めしています。
 来店記念に、一番安いガーゼハンカチを購入しました。デザインはわりと洗練されていて、満足の一品ではあります。

 なんてことのない雑貨店ですが、恥ずかしながら、県庁近くの、しかも四天王会館にこんな素敵なお店があるなんて知りませんでした。
 
 シマダ輪店と並んで、塔世橋かいわいの七不思議のような感覚にとらわれたのでした。

 ■雑貨屋Novi http://d.hatena.ne.jp/novi-hiro/
 

2011年6月5日日曜日

三重県グローバルビジネス人材育成事業

 先日、四日市市内で開かれている、三重県グローバルビジネス人材育成事業の講座を見学してきました。
 この事業は三重県が、人材派遣会社大手のパソナテックに委託して実施している人材育成事業です。
 
 日本の人口は平成16年12月の1億2783万人をピークに減少を始めています。しかも長寿命化と少子化が両方進んでいるので、人口総数が減少していくのに加えて、その構成も子ども(15歳未満)や生産年齢人口(15歳から64歳まで)の割合が減少し、4割以上を65歳以上の高齢者が占めるようになります。
 普通に考えて、子どもの養育費、教育費、マイカーやマイホームなどの耐久消費財の購入など、お金を一番使う30歳代から40歳代の人口が絶対的にも相対的にも減少していくので、国内市場は縮小していきます。

 中小企業が国内市場が縮小や高齢者の割合が増える成熟化に対応するには、新しいビジネスモデルの創造、製品やサービスの高付加価値化などと並んで、海外展開が非常に重要になります。

 製造業は、一般的には国際競争がすでに激しく、他の産業に比べて国際化が進んでいるようにも思えますが、実際に海外にどんどん進出していくのはほとんどが大企業であり、それをサポートしている中堅規模以上の中小企業でした。
 しかし今や、仕事も下請けに出していた大企業の海外進出は完全にトレンドとなっており、防ぐ手立ては事実上ありません。これに伴って、第1次下請けの中堅企業も海外に出て行くことになるため、いままでそこに製品を納めていた中堅以下の比較的規模の小さな中小企業も、自社が海外に出て行くか、海外の販路を自分で開拓することが求められるようになってきています。

 しかし中小企業にとって、最大のネックになるのが人材の不足です。
 そもそも下請けに頼ってきた中小製造業企業は、営業担当の社員を持っていません。外国語に堪能な社員や、外国の商習慣、貿易実務などに詳しい社員もほとんどいません。
 せっかく技術や商品は優秀で海外に伍していけるとしても、それをプロモーションできなければ、海外ビジネスの足がかりさえ作ることはできません。

 その一方で、若年者の雇用は相変わらず低調です。東日本大震災がそれに追い討ちをかけており、通常なら短期間のうちに災害復興の特需が見込め、人手も必要になるはずではありますが、まだまだ予断は許さない状況です。
 実際に、学卒未就業者も相当な数に上っており、企業側と若年者側で一種のミスマッチが見られます。

 前置きが長くなりましたが、このミスマッチを解消しようとするのが三重県グローバルビジネス人材育成事業です。
 若年求職者を対象に、主に製造業、ICT関連産業などで、国際化業務や営業(プロモーション業務)が担える人材を育成するのが狙いです。
 カリキュラムは、通常の社会人としての心構えやビジネスマナーなどの一般教養に加え、ビジネス英語、ICTスキル(ビジネスソフトのスキル、WEBデザインなど)、さらにマーケティングや知的財産権の初歩などの研修を三ヵ月間行います。

 次に、OJT研修として、実際に三重県内の中小企業で社員として三ヶ月間仕事をし、実践を通じてスキルアップを図ります。
 最終的には、受講者が身につけた能力を生かして、三重県内の企業に就業、就職してもらうことが目標です。

 はんわしが見学した日は、午前中が英会話、午後はクラス別にWEB製作実習と、知的財産権の講義がそれぞれ行われていました。
 受講生はいったんパソナテックに就職することになるので、いわば給料をもらって、仕事として研修を行っているような立場になります。
 そのためか、皆さん非常に前向きで真剣に取り組んでいました。朝から夕方まで勉強、勉強の詰め込みスケジュールです。わしのようなトシの人間には体力的、精神的にキツイと思います。

 英会話の時間では、講師の先生(外国人の男性)に「今日は見慣れない奴が後ろに座っている」と思われたためか、いきなり指名され、例文(私は、なになにの要件で電話しました)の、なになに、のところに適当な動詞をはめて答える、ということをやらされてしまいました。

 英語って、長らく話していなかったので、さび付いたアタマにCRC556が吹き付けられたように、とは行かず、めちゃめちゃな和製英語を連発してしまい、講師、若い受講生の皆さんの失笑を買ってしまったのでした。
 
 それはさておき。
 この事業はグローバル化がテーマですが、中小企業にとって優秀な人材の確保、能力育成は、ますます重要になってきます。
 県など地方自治体の重要な産業政策は人材育成(特に若年者の)になってくるでしょう。
 三重県グローバルビジネス人材育成事業の受講生にも、ぜひ頑張って勉強を続けていただき、希望を叶えていただきたいと思います。 

2011年6月4日土曜日

高校生レストラン「まごの店」見学ツアー

 三重県松阪市の青木バス(株)が、高校生レストラン「まごの店」&心のふるさと伊勢神宮ツアーという企画旅行を催行しているようです。

 同社のホームページに紹介されているツアーの内容を見ると

・現在NTV系で放映されているドラマ「高校生レストラン」のモデルとなった、三重県多気町(たきちょう)にある「まごの店」の見学

・まごの店がある、多気町の五桂池ふるさと村に隣接している「ふるさと食堂」にて、三重県立相可高校食物調理科の村林新吾先生が指導して完成した、「まごの店」と同じ味の「まごころ御膳」の食事

・その後、伊勢神宮内宮参拝と、鳥居前にあり昔ながらの建物が軒を連ねる「おはらい町」の散策

・ツアー参加者には、食物調理科がある相可高校の生産経済科の生徒と地元の製薬会社が共同開発した「まごころTeaハンドジェル」のお土産つき

 というもの。

 午前11時に近鉄松阪駅前を出発し、午後5時に近鉄宇治山田駅で解散というスケジュールで、旅行団金は一人5千円とのこと。
 詳しくは、青木バスのホームページをご覧ください。

 ■青木バス http://aokibus.net/

 ドラマを見て実際に高校生レストランに行ってみたいと思われる方も多いはずですが、実際の高校生レストランはあくまでも教育施設であり、学校が休みの日の昼間だけの営業、しかも提供できる食事の数にも限りがあり、店に行っても売り切れていることが多々あります。
 また、レストランがある五桂池ふるさと村は公共交通機関の便が極端に悪く、事実上、マイカーかタクシー利用でないと現地に行くことすら困難な立地です。(全国どこでも田舎は自動車依存社会なので、地元の人はそれを不便とも不思議とも思っていません。)
 このため、このようなツアーを上手に利用するのも一法であるような気はします。

 さて、三重県立相可高校はテレビドラマの放映によって全国ブレークの予感がします。もっともドラマのストーリーはまったくのフィクションなので、現実とはかなり違いますが、県立高校が高校生によるレストランを運営していることや、地元の町役場が全面協力していること、さらに地元の農家や企業などとタイアップしてていることなど、地域経済活性化の面からヒントになることが多い事例だと思います。

 もうひとつ、はんわし的にぜひブレークしてほしいと思っている三重県の高校が、三重県立北星高校です。
 ここは、教育機関でありながら、三重県経営品質賞の2010年度奨励賞を受賞したという、卓越した学校経営を実践している組織です。
 経営品質の公的な賞を受賞している学校組織は、おそらく全国初なのではないでしょうか。
 機会があれば、北星高校のこともブログに書きたいと思います。

 ■2010年度三重県経営品質賞奨励賞
   http://www.miequality.net/award/2010/hyousyouriyuu.htm

2011年6月3日金曜日

JA伊勢が移動購買車「買物くん」の運行を開始

 伊勢農業協同組合(JA伊勢)は6月2日から、管内での「移動購買車」の運行を始めました。

 冷蔵ケースと簡易冷凍庫などを装備した小型トラックの移動販売車は「買物くん」と名付けられ、野菜や果物、鮮魚などの生鮮食品を中心に、パン、乳製品、インスタント食品など250~300種類の食品をを積んで移動販売を行うとのことです。

 JA伊勢は、三重県南部の伊勢市、度会(わたらい)郡から尾鷲市までのエリア、2市5町を管轄しています。
 この地域は、観光業や製造業が盛んな伊勢市などの地域を除いて、農林水産業や建設業が主要産業であり、過疎化、高齢化が進んでいます。

 今回、買物くんの運行が始まる度会郡南伊勢町は、旧南島町と旧南勢町が合併して誕生した町ですが、高齢化率(2009年10月現在)は42・8%で、これは三重県内で最高です。
 同町によれば4月末現在、38行政区(自治区)のうち9地区は、住民の半 数以上が65歳以上で、共同生活の維持が困難になりつつある「限界集落」。小売店も多くが閉店してしまっており、JA伊勢は町内に9ヶ所の生活店舗を構えてはいるものの、車の運転ができなくなる高齢者も増えており、買い物や生活サービスを受けることが難しくなっているそうです。
 買物くんは、週1回~2回、町内の計15地区の公民館などに出張して販売を行います。
 JA伊勢の加藤専務理事は「採算は非常に厳しいが、地域の人たちが必要な食品を守ることもJAの大きな役割」と述べたと報じられています。(読売オンライン 6月3日付け

 三重県には俗に南北問題と呼ばれる地域格差の問題が抜きがたく存在しています。自動車や家電などの輸出型製造業が好調な三重県北部に比べ、県南部は生産・消費という経済活動が停滞しており、人口の減少も顕著です。
 インフラ整備などの分野はともかく、経済活動に関して行政の施策はほとんど無力です。やはり企業家の活力によって、コミュニティビジネスの手法も取り入れながら経済原理に沿って自主的に課題解決することが重要です。
 JA伊勢の取り組みには大きく期待したいと思います。
 また、住民も積極的にこのサービスを利用し、支えてもらいたいと願います。

(関連リンク)
 熊野市で始まる「過疎地有償運送」って何だ(2010年5月16日)

 「コミュニティビジネス」と「ソーシャルビジネス」と「地域ビジネス」 (2009年10月11日)

2011年6月2日木曜日

「亀山モデル」の終わり

 日経新聞などが今日報じたところでは、シャープは亀山第2工場を、従来のテレビ用大型液晶パネルの製造からスマートフォンやタブレット端末に使う中小型パネルの製造に転換させるとのことです。

 この亀山第2工場は、平成18年から、当時世界初の技術であった「第8世代」と呼ばれる大型ガラス基板を使った液晶テレビ用パネルの生産を行っていました。ここのテレビは「亀山モデル」と名付けられ、シャープのブランドイメージを決定付けただけでなく、その頃に社会問題となっていた製造業の海外移転の流れに抗して国内生産を続けるシャープの「ものづくり」の心意気が大いに賞賛された、まさしくその象徴でした。

 しかしながら近年は、薄型テレビは市場で飽和状態となり、値下げ競争によって利益が出にくくなっていたことと、韓国・台湾などの海外電機メーカーが相次いで生産設備を増強し、大型液晶パネル自体の過剰感も強まっていたそうです。

 むしろ最近は大型の液晶テレビに比べてスマートフォンやタブレット端末がヒット商品となっており、それらに必要な中小型液晶は、画面の精細度やタッチパネルのなめらかな操作感など、テレビ用に比べて高い性能が求められているため、日本メーカーの競争力が高い分野になってきていました。

 このため、シャープは大型から中小型液晶へのシフトを急いでおり、昨年にはアップルからiPhone用のパネルを受注。それまでテレビを作っていた亀山第1工場の設備を転換し、平成24年から量産を始める予定になっています。
 日経新聞は、「第1に続き、第2工場も中小型に転換することで、テレビ用パネルの中核拠点だった亀山工場は実質的に携帯端末用の拠点に変わる。」と報じています。

 シャープ工場を亀山市に誘致するについては、三重県と亀山市が莫大な補助金を交付したことは以前にもこのブログに書きました。
 浮き沈みの激しいビジネスの世界。特に技術進歩の早い電機などの分野は競争も激烈で、経営戦略を柔軟に変化させていかなければトップ争いから脱落してしまいます。
 そのような厳しいグローバルビジネスに対して、基本的には静的な存在の行政機関である県や市が補助金を出しても、その思惑が大きく狂ってしまう可能性があることは止むを得ません。今回はシャープが工場を閉鎖するというわけではなく、むしろ増強するようなので地域経済への悪影響もないのかもしれませんが、やはりこれは一種の結果オーライに過ぎないと言えるでしょう。

 それにしても、アップルの商品力というか、マーケティング、商品の企画力、ビジネスモデルには感服せざるを得ません。独自商品をなかなか生み出せない=イノベーションを起こせない日本企業は、アメリカ企業の部品下請けが、やはり一番ふさわしいポジションなのでしょう。

(注)下請けがダメだと言っているのではありません。高い技術力を持つ下請け企業は、発注企業の立派なパートナーであり、場合によっては価格決定権さえ握っています。
 しかし、技術に勝ってビジネスに負ける、と揶揄されるように、突き抜けた新商品開発や新ビジネスモデル構築ができない日本企業は、いくら「技術」を持っていても結局、利益を外国に吸い上げられ、忙しいだけでちっとも儲からないのです。悔しいことです。

2011年6月1日水曜日

WHOが携帯電話を「発がん性危険有害物質」に指定

 GIGAZINEによると、国際連合の専門機関 WHO(世界保健機関)が、携帯電話を「発がん性を持つ危険有害物質」に指定したとのことです。アメリカのCNNが報道しました。

 アメリカを含む14ヵ国、31人の科学者で構成されたチームが行った携帯電話の安全性に関する研究で明らかになったもので、脳実質あるいは脊髄実質から発生する瘍「神経膠腫」や「神経腫」といった、脳におけるがんを引き起こす可能性がある証拠を発見したとのこと。

 ちなみに、WHOが指定した「発がん性を持つ危険有害物質」には、エンジンの排気ガスやクロロホルムなどがあり、携帯電話はこれらに匹敵する危険性があるということのようです。

 携帯電話からは電磁波が出ており、会話するために耳にくっつけているので脳腫瘍の原因になるという話は、携帯電話が広く普及を始めた1995~2000年ごろにはよく聞いた話です。原理としては電子レンジと同じで、つまりは脳ミソを電子レンジに入れているようなものだ・・・などと雑誌などにもよく書かれていました。

 しかし、文明の進歩には不可逆的な「楔(くさび)」があって、携帯電話がまさしくそれです。一度その利便性にはまると、元の状態に戻ることはもはやできません。少々の危険性は顧みられなくなります。
 また実際に、電磁波がすべて危ないというわけではなく、もし携帯の電磁波が危ないのなら、電車も社内には電磁波が充満しているのに、なぜ電車に乗ったらガンになると言わないのか・・・というような反論も多くあって(もちろん実際にはもっと科学的な検証でしたが)、次第に批判や懐疑は下火になっていった感があります。

 今回のWHOの行為が、すでに生活インフラとして完全に定着した携帯電話のユーザーにどのような影響を与えるのか、注目されます。

 それにしても、このような「後出しジャンケン」のようなことがあるので、科学の信憑性や信頼性はますます揺るいでしまうのでしょう。
 真に科学的な立場とは、次々と新しい研究成果が生まれたら、その成果を踏まえて見解を変えていくということなのでしょうが、一般の消費者、生活者としてはなかなかそのようなスピードの変化には着いていけません。
 最初は警戒し、悩んでいても、やがて考えるのに疲れ、心配し続けることに耐えられなくなり、危機感を放棄してしまうことが人類の歴史と言ってもいいかと思います。

 放射線による食品汚染もそうで、今は東北地方を助けよう、風評被害に惑わされないようにしよう、というスローガンのもと ~そして、その美しいスローガンには誰も反論できない~ 福島県の野菜や海産物をもっと買おう、食べよう、みたいな取り組みも各地で行われています。

 しかし、その一方で、今週の週刊朝日の特集記事 放射能汚染「食べてはいけない」見分け方 のように、実は科学者によって、野菜は相当汚染されているものもあるとか、魚も近海魚は危ない、みたいな説を主張している人も多いことを知り、慄然とすることがあります。

 自分の身は、自分で守らなくてはならない。それは当然のことです。
 しかし、これだけ正反対の情報が、しかも「科学者」という立場の人たちから出てくる。
 いったい、何を信用したらいいのか、というのが正直な実感ではないでしょうか?