2012年1月31日火曜日

「餃子の王将」で発電?

 「餃子の王将」を経営している(株)王将フードサービスが、今年から「発電店舗」を展開すると読売新聞が報じています。(1月30日付け読売オンライン

 中華料理店は、油料理用の鍋やギョーザを焼く鉄板など高熱を出す調理具が多いことから、排気用のフードに熱を電気に変えるパネルを張り付けるほか、換気扇の吹き出し口や敷地内に小型の風力発電機を置くことを検討するとのこと。
 また、井戸水を使っている約10店舗では、貯水タンク内に小型発電機を取り付け、タンク上部から落ちる大量の水で発電機に付いた羽根を回すそうです。

 残念ながら、これらによる節電効果は未知数とのことですが、餃子の王将ではテコの原理を応用して客がドアの前の踏み台に乗ると重みでドアが開閉する「節電ドア」を全国4店に設置している実績もあり、電力不足をアイデアで乗り切って、経費削減も狙う一石二鳥の取り組みにしたい考えだとのことです。

 こういうのは話題を作ったら勝ちなので、とにかく目立ってしまおうというイメージ戦略はけっこう効果的なのではないでしょうか。

 餃子の王将のようなナショナルチェーンはともかく、家族経営の飲食店や小売店といった小規模な店舗でも、省エネや再生可能エネルギーを導入したいという経営者の意欲は少なくないものがあると感じます。
 しかしながら、小規模な事業施設に対応した製品が少ないことや、製造業以外の商業、サービス業向けの省エネビジネスのバリエーションもまだまだ少ないことが課題のようです。

 太陽光発電などは設備も建築も過当競争になりつつありますが、小規模事業者向けの省エネコンサルティングも兼ねた提案ができれば、販売側にとっても差別化になり、まだまだマーケットはあるような気はします。

 いずれにしろ、消費者の意識の高まりと共に、同じものを買うなら省エネの店で、というムードがやってくるのはそう遠くないかもしれません。

とうとう給料が3%下がる・・・

三重県と三重県職員労働組合は、特例的・一時的措置として1年間、管理職以外の一般職員の月例給を3%削減することで合意したと発表しました。

 このことを職員の多くは冷静に受け止めていると思います。
 現在のトップ(忍びないので名は秘す)は人件費の2割削減を公約に当選した人なので、遅かれ早かれ給与カットは実行されると思われていましたし、県民や県内中小企業を取り巻く昨今の厳しい雇用状況と経済状況を見れば、このような措置もやむを得ないというのが大多数の職員のコンセンサスだと思われるからです。
 労働組合は県当局からの給与削減申し入れに対して、交渉の過程では絶対反対を唱えていました。しかし、世間の空気を読めば組合側の不利は自明であり、たてまえ的にファイティングポーズを取っていただけかもしれません。

 しかし、今回の件で2つのことは指摘できると思います。

 まず1つめ。
 職員とて木石ではなく感情のある人間です。いくら厳しい財政状況で給与削減は仕方がないと頭で分かっていても、いい気分なはずはありません。モチベーションの低下は避けられないでしょう。
 積極的なサボタージュはあり得ないにしろ、無意識的な抑制は必ず出てくるでしょう。それがどういう影響を招くのかはよくわかりませんが、先行して23年7月から給与をカットされている管理職の現状を見ると、給与は減らされても仕事の量は全く変わっていません。これは一般職員も同様で、仕事量の削減は見込めないので、仕事の質の劣化はかなりの確率で避けられない気はします。

 二つめ。
 そもそも今回の給与削減は、県財政が危機的なひっ迫状況であることに鑑みた「緊急避難」的な措置であることが県当局からは繰り返し労働組合に伝えられていたようです。いわば緊急事態ということです。
 このような時こそ、トップが職員全体に窮状を訴え、一致団結を力強く呼びかけることが使命なのではないでしょうか。そのためにトップとかリーダーと呼ばれる人がいるのです。
 しかしウチのトップ(繰り返しますが、忍びないので名は秘す)はついに全職員を集めて目の前で直接呼びかけることはありませんでした。力強いメッセージを語ることはありませんでした。
 交渉は労働組合を通じたもので、しかも基本的に下僚まかせでした。

 これは、ひょっとしてトップは「揉め事」を仕切れないタイプなのではないか、つまり修羅場から逃げ隠れするヒトなのではないかという不吉な予感を、心ある県職員に与えるに十分でした。これは1つ目のモチベーション低下よりはるかに深刻で、致命的です。

2012年1月30日月曜日

法制度が想定する「未来」

はんわしが自宅の周りをぐるっと散歩しているだけで、すぐに数軒の廃屋を見つけることができます。その多くは古い木造家屋で、デザインや様式からおそらく昭和30~40年代、あるいはそれ以前に建てられたものだと思われます。
  中には梁や柱が傷んでいるのか、傾いたり、屋根が大きく波打っているものもあります。これらの家の隣家にとっては、台風や地震のことが気がかりであることは容易に想像できますし、以前このブログに書いたように、わし自身も同じような経験をしたことがあります。(その時のブログはこちらを)

 成熟社会に対応するためには今までのような拡散志向の都市経営でなく、限りがある資源を一定のエリアに集中投資する「コンパクトシティ」の考え方が重要となることは明らかです。(もちろん、工場とか迷惑施設のように郊外立地がふさわしいものも残り続けるでしょうが。)

  一方で、このようなコンパクトシティの考え方は、商店街活性化とか都市計画の「業界」ではもうずっと以前から提唱されていた考え方です。これが進まない 大きな原因も、中心市街地になればなるほど土地や建物の権利関係が複雑で入り組んでおり、再開発などに対する地元の合意がなかなか取れないことにあるのも、いわば常識です。

 最近あらためて思うのは、法律制度には「来たるべき社会」とか、「社会の活性化」といった考え方を取り入れていないのではないかということです。
 もちろん、憲法のように普遍的な社会理念を高らかに掲げるものは確かにあります。また、土地基本法とかの「なになに基本法」といったたぐいの法律も、その分野での理念とか理想を掲げた法律です。
  しかし憲法はともかく、実際に直接個々の法律紛争に適用される民法とか商法、民事訴訟法などは、実務的で価値中立的な法律であり、総則では法の理念がうたわれているものの、法律自体からは「この法は、日本がどのような社会であることを想定しているのか」をうかがい知ることはできません。

 うまく言えないのですが、たとえば医療保険や年金などの社会保障制度が右肩上がりの人口増と経済成長を念頭に制度設計されているように、それなら民法は、いったいどんな社会を念頭に置いて制度設計されているのか、ということです。
  近代の契約法の前提は、法の主体である個人や法人は合理的な存在で、自己の利益を最大化するために行動するということです。当たり前ですが、これは事実で はない(人間は不合理な存在で、往々にして利他的な行動もとる)ので、それを補完するためにさまざまな社会的な立法が行われました。

 冒頭の話に戻りますが、しかし、町の真ん中で放っておかれている廃屋についてはどうでしょうか。廃屋もモノである以上、誰かが所有しているので、それを利害 関係を持つ誰かが、自分で費用を負担して調べ上げ、真正な所有者に処分を求めればよい、というのが現在の民法の考え方です。
 それは、
・いかなる財産でも(廃屋でも)価値はある
・隣家は自分の権利は(廃屋が自分の敷地に崩れ落ちてこないように)自分で行使しなければならない
 という大原則があります。

 しかし、21世紀の今、モノに価値はなく、自分の権利を行使しない(能力的にも経済的にも、意欲の面でも)人はたくさんいます。まさに民法が想定している社会とは異質の世の中になっているのです。
 これは、「廃屋処理法」といった特別法を作れば済む話とは、少々次元が違うように思います。今の日本の現状を打破するには、法律面でも何らかの革新が求められているように思います。

2012年1月29日日曜日

もう代案はありません

 藤沢数希さんの「日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門」(ダイヤモンド社)を読了しました。
 人気ブログ「金融日記」の記事をもとに書き下ろしたもので、文章が大変読みやすく、内容がわかりやすいのでおススメです。

 日本経済の行く末とか、グローバル競争下の日本の経済政策はどうあるべきか、みたいな本はたっくさん出ています。
 しかし藤沢さんの本は「各人が自由な市場で競争する資本主義の優位性は、現時点では認めざるを得ない。したがって、人、モノ、カネが世界中を移動する自由市場を前提に、その中でどうやって利益を上げていくかを考えなくてはならない」という主義主張で貫かれています。
(これは、日本では「市場原理主義」と呼ばれていますが、世界の先進国ではほぼコンセンサスを得た考え方です。)

 なので、各章のタイトルからして刺激に満ちています。たとえば、最終章(第5章)で本の題名にもなっている「もう代案はありません」はこんな構成です。

1 成長戦略が何もないのが一番の成長戦略
(要旨:政府が成長産業を見抜くことはできず、政府が成長分野を決めて後押しすることで民間投資の効率的な配分や、人々のインセンティブをゆがめる。)
2 税制を抜本改革してがんばる人に報いる
(要旨:日本の税制は超累進的で、頑張った起業家からむしりとる構造になっている。このため、税金は広く国民が負担する消費税を中心にし、税率は所得税も法人税も消費税もすべて10%にする。)
3 年金は清算して一度廃止する
(要旨:現行制度では40歳以下の人は支払う保険料が受け取る年金を大幅に下回ることが確実。このような世代間格差は解消し、あらためて公的社会保障制度の必要性を議論すべき。)
4 解雇自由化で労働市場を効率的にする
(要旨:日本の厳しい解雇規制がリスクを新規採用の抑制や非正規労働者に押し付けることにつながっている。労働市場を流動化して、斜陽産業から成長産業に労働力が自由に移動できるようにすべき。)

 などなど。

 詳しくは本書をお読みいただきたいのですが、「市場も失敗するが、政府による失敗よりも傷口は浅い。」という趣旨が貫かれています。

 藤沢さんによれば、政府(政治や行政)の役割は、特定の産業分野をターゲティングして保護したり支援したりすることでなく、日本の成長力の源泉となる「生産性」を上げることです。
 質の高い人材を育成するための教育の再生であったり、起業家が輩出するような金融システムの構築や、民間企業がイノベーションを生み出すような自由な競争を促進するための規制緩和であったり、といった「潜在成長力の強化」こそが求められているのです。

 ところが日本では、成功したベンチャー企業の経営者を格差格差と騒いでつぶしたり、ヘッジファンドや投資銀行をマネーゲームだハゲタカだといって追い出そうとしたりで、むしろ自ら潜在成長率を下げるようなことばかりやっているのです。(本書110ページ)

 傾聴すべき意見かと思います。

2012年1月28日土曜日

三重県内の起業支援情報二題

タイミング的にやや遅くなってしまいましたが、三重県内で実施される起業支援のイベントを2つご紹介します。両方とも素晴らしい企画だと思います。

1 企業人への閃きセミナー&交流会
 四日市市にあるIT企業 サイバー・ネット・コミュニケーションズ株式会社は、起業家支援のためインキュベーション施設「Biz SQよっかいち」を運営しています。

 このたび、不況だからこそ起業にチャレンジ と銘打って、就職活動中の人、定年退職者、主婦の方にそれぞれターゲットを設定した起業セミナーを開催しています。

 残念ながら、第1回目の退職者向けの回はすでに終了していますが、この後、2月4日(土)に就活中の学生向け、2月18日(土)には主婦など女性向けのセミナーが実施されます。
 詳しくは下記のリンクを参照してください。

 ■Biz SQ よっかいち  http://www.bizsq41.jp/index.html

2 K-Biz起業サポート移動相談会 in 松阪
 K-Bizとは「クシロビジネス」の略で、北海道釧路市で施行された「釧路市中小企業基本条例」の理念にのっとり、北海道中小企業家同友会釧路支部などが取り組む、中小企業による新しいチャレンジを支援するものだそうです。
 釧路と松阪の関係ですが、明治初めに「北海道」という名前をかの地に命名した、いわば名付け親である探検家松浦武四郎が松阪市(旧三雲町)の出身であった縁があり、今回の相談会が松阪市で開催されることになったそうです。
 日時は2月25日(土)で、コーディネーターは、何と起業支援のカリスマであり、現在は静岡県の富士市産業支援センターf-Bizのセンター長である小出宗昭さんです。
 相談は無料のようですが、完全予約制のようなので、詳しくは下記のリンクをご参照のうえ問い合わせてみてください。

 ■北海道中小企業家同友会 釧路事務所  リンクはこちら 

 ■三重県中小企業家同友会 リンクはこちら(チラシのPDFファイルあり)

2012年1月27日金曜日

起業家の発想、役人の発想

ここ何週間か、中小企業の経営者とお目にかかる機会が増えています。中でも特に、自分自身で事業や会社を立ち上げ、大きく発展させた創業経営者、いわゆる「起業家」の方々の発想には驚かされ、今さらながらその慧眼に敬服することがしばしばです。

 先日の貿易赤字のニュースに象徴されるように、工業製品を輸出して外貨を獲得するという発展途上国型の「貿易立国モデル」がほぼ破綻している我が国ですが、役人はどうしても「現状維持」と「今の延長線上」の発想から抜け出すことができません。
 その典型が、いまだに地域商工政策の柱が企業誘致、なかんずく「工場の誘致」であって、莫大な税金を投じて道路や工業団地を整備し、誘致企業に補助金を出す手法が踏襲されていることです。
 さすがにこれでは先がないとわかってきたので、最近は「撤退阻止」、つまり他の生産コストが安い地域に企業が流出することを防ごうと、なんやかんや税金を投入しています。

 しかし、合理的に考えて、設備投資や労働投入が生産性向上に直結する、装置型産業や労働集約型産業が海外に移転することは経済の力学的必然です。このことを ~「産業空洞化論」のような良い悪いの議論ではなく~ 具体的でリアルなイメージで捉えないと対策の立てようもありません。
 そのことは、わしもわかっていると自分では思っていました。

 しかし、ある起業家から「四日市から石油コンビナートが全部撤退した後のことを考えたことがあるか?」と問われたとき、わしも、はたと困ってしまったのです。
 数千人の従業員が雇用され、大量の原油が輸入され、大規模な装置と高度な技術で原油を精製して多様な化学製品を大量に作り出す石油化学コンビナート。
 これはいわば三重県産業にとって重要すぎて、あるのが当たり前になっているのがわしも含めて多くの役人の認識なのだと思います。これが数年後に撤退してしまうかもしれないなどとは想像することもできません。

 絶句しているわしに対して起業家が言った言葉は、これまた予想外のものでした。
 「そんなの簡単や。四日市からコンビナートがなくなることは、長らく積もり積もった公害の街という負のイメージが払拭されることでもあるんや。本来の豊かな自然や環境が取り戻せることで、農業や食品製造業や観光業にはずっとプラスになる。アンチエイジングのような医療サービスも可能性が出てくる。こんな発想が新しいチャンスの芽になるから、時代の変化を読んで、それに合わせてどう事業を作るかを考えるのが経営者の仕事なんや。」
 
 よく、中小企業の強みは、組織が小さいがゆえの柔軟性とか機動力とか言われますが、そのことはこのお話のような超ポジティブな発想から生まれるものであることを再認識しました。
 同時に、どれだけアンテナの感度が高く、時代の先を見据えられるかの能力が、優れた起業家と、その他の凡百の経営者や役人との(残酷なほどの)違いなのだということも思い知らされたのでした。

2012年1月26日木曜日

2月9日に「ソーシャルファイナンス・セミナー」

三重県主催のソーシャルファイナンス・セミナーが、2月9日(木)13時30分から、津市の三重県水産会館で開催されます。

 くわしくは三重県ホームページを。リンクはこちら

 もともと、金融とは、大商人とか中世ヨーロッパの教会とかの大金持ちが庶民に貸し付けを行ったスタイルのほかに、多くの庶民たちが少額のおカネを出しあって元手を作り、それを仲間内で貸し付けあったスタイルの2つがあります。
 後者は「講」とか「無尽」と呼ばれる庶民金融で、近代的な銀行制度が導入されてからもこのスタイルは生き続け、信用組合とか、かつての「相互銀行」も比較的規模の大きな「無尽」から始まった例は多くあります。(たとえば、第三銀行もそうでした。)

 しかし、特にこのスタイルが注目を集めたのは、東日本大震災で被災した中小企業を再建するために、一般の市民から資金を集めて融資(投資)する仕組みが大きな成果を上げたことです。
 もちろん、それ以前から、通常の金融機関からは借り入れが極めて難しいNPOの活動などを支援するため、市民の有志が出資する、いわゆる「市民バンク」の活動も活発でした。正確には、こういった市民バンクの、社会的に意義がある(=社会的な課題を解決する)事業にファイナンスする仕組みが、東日本大震災であらためて見直されたという捉え方が正しいのかもしれません。

 市民バンク(ソーシャルファイナンス)がこれからますます重要になるのは、これからの日本においてほぼ間違いありません。今のような成熟した社会、すなわち多様な価値観が並立し、分散し、せめぎ合っている社会では、営利活動、非営利活動を問わず何かのアクションをしようとする場合「市民の共感」が何より決定的な要素になるからです。
 共感の具現化が、市民の志が託されたお金(志金)というファイナンスになるわけです。

 このことは、わからない人にはさっぱりわからない話かもしれません。
 たとえば、日本という国を閉ざすことで農業を守ろうと考えている人々、工業製品をどんどん作り続けて貿易黒字を続けることこそ日本の生きる道だと信じている人々、市民は税金を払っているのだから困りごとややっかいごとはすべて政治や行政が解決すべきだと思っている人々などです。
 こういった人々は、世界は変化し、市民は自立し、社会は進んでいくということがどうしてもわからないのです。おそらく市民が儲かりもしない事業やビジネスに身銭を投資する意味も理解できないでしょう。

 そういう人は残念ですが、このバスに乗ってもらうことはできません。気が付くまでほっぽっておくほかありません。

 逆に、ソーシャルファイナンスに少しでも可能性を見いだせる人は、このセミナーは絶好の機会になることでしょう。誰もが最初から全知全能ではありません。こういった勉強のチャンスを有効に活用して、知識と見聞と、人脈を広げていくことが大事です。
 
 一方、ソーシャルファイナンスの主役である市民バンクは、以前、四日市商工共済協同組合の経営破たんが大きな社会問題となったような潜在的な危険性も持っています。セミナーでは、このあたりの説明や議論にも期待したいと思います。

2012年1月25日水曜日

羽毛のナンバーワン企業が三重にあった

今日、三重県明和町にある河田フェザー株式会社を訪問しました。
 失礼ながら、あまり予備知識がない状態でおうかがいしたのですが、ここは羽毛専門の加工企業として、日本最大規模の工場であることを初めて知りました。

 言うまでもなく、羽毛とは「羽毛布団」とか「ダウンコート」などに使われる水鳥の羽根のことです。しかし、原料としての「鳥の羽根」が、ダウンやフェザーといった中間商品になるためには、ほこりや泥を落とし、洗浄して完全に汚れを取り去り、よく乾燥して、部位や羽毛の性質ごとに分別し、さらにそれを布団やコートなどの原料になるようレシピに沿ってブレンドする、という多くの工程が必要です。

 河田フェザーは昭和50年代から羽毛の加工に取り組んでいる、我が国の羽毛業界の草分け的な企業であり、ヨーロッパなど外国での羽毛の仕入から、除塵→洗濯→乾燥→冷却除塵→選別という加工を、自社で編み出した独自製法と、それを実現するために自社開発した装置機器を使って、ほぼ自動化された工程で行っています。
 完成した羽毛は、原料としてアパレルメーカーに出荷されるほか、同じ敷地にある関連会社で羽毛布団に加工されています。
 会社の方のお話しでは、羽毛精製処理能力:平均7.5トン/日、羽毛布団生産枚数 平均150枚/時間という生産規模は日本最大といってよく、その高い品質は、最近市場でよく目にする中国製の羽毛とは天地ほどの差があり、絶対の自信を持っているとのこと。中国市場でも、富裕層向けの高級品は同社の製品が多いそうです。
 ただ、近年はヨーロッパでも羽毛の生産量が減少しているほか、新興国の需要が高まって、国際価格の高騰や羽毛の品薄が問題となっているとのこと。この点は気になるところです。

 ところで、同社の工場は明和町に立地しています。
 明和町は松阪牛で有名な松阪市と伊勢市の中間に位置しており、最近では古代の遺跡である斎宮(さいくう)跡から、平安時代のものと思われる「いろは」のひらがな文字が書かれた土器の破片が出土したことで一躍脚光を浴びていますが、あたりは一面に田んぼが広がり、全く農村といった趣です。

 この地に来た理由は、ここの地下深くを大台山系からの伏流水が流れており、繊細な羽毛を洗浄する水として最適の水質であったためと、羽毛は湿気があると丸まって洗浄しにくいため、前工程としてよく乾燥させる必要があるが、明和町は三重県内でも降水量が少なく乾燥工程に適した気候だから、という理由だったそうです。
 そう言えば、明和町近辺は「伊勢たくわん」(大根漬け)や、「伊勢ひじき」の産地であり、いずれも乾燥という工程が重要な産品です。しかもすぐ近くには酒造業者もあって、これも水質が良いことの証左と言えそうです。

 三重の隠れたナンバーワン企業を知り、何だか得した気分になった一日でした。

■河田フェザー株式会社 http://kwd.jp/index.html

2012年1月24日火曜日

これって高等戦術かも?

どっかの田舎の県の知事が、天下のNHK大河ドラマを批判したことが話題になっています。知事は、画面が汚らしいとか何だとか言っているようですが、昔のテレビの水戸黄門とか大岡越前みたいな、ある種の様式化した時代劇が好きな人には確かにそう見えるのかもしれません。
 しかしNHKの担当プロデューサーは、写実的な表現にこだわっているという趣旨の話をしているので、これはあくまで見ている人の美的感覚の問題です。

 うがった見方をすれば、こうも考えられます。

 田舎知事は、自分の県とゆかりがあり、ロケ地にもなっているこのドラマをもっともっと多くの人に見てほしい。見た人が、じゃあ今度の旅行はここに行ってみようか、という話になって、地元に観光収入が落ちるかもしれない。
 その話題作りには、なんか地元の知事が難癖つけている、みたいな話題がオモロイのではないか。だったらいっちょう、クレーマー役を演じてみるか。そしたらマスコミが面白がって騒いでくれて、タダでPRになる。しめしめ。
 ひょっとするとこんな高等戦術なのかもしれません。わかりませんけど。

 話は変わってTPP。
 一部の新聞が混合診療の解禁について報じています。
・アメリカの通商代表部(=日本の通商産業省に相当する役所)がTPPへの参加交渉や事前協議で、公的医療保険の適用対象となる診療と、適用対象外となる診療(いわゆる「自由診療」)を併用する「混合診療」の全面解禁を、議題の対象外にする方針を日本政府に伝えていた。
・これは1月22日に明らかになったもので、混合診療の全面解禁が国民皆保険制度の崩壊につながると主張をしている日本医師会などの関係者に配慮して譲歩したものとみられる。
 ということが要旨ですが、果たして本当でしょうか。

 日本経済の行き詰まりは、自動車や家電といった外需に過度に偏った産業構造が一つの原因なのは明らかです。その処方箋として、医薬品や医療機器の開発を核にして、医療技術や看護技術も総合化した「医療サービス」を次世代産業の柱に据えることがあげられます。
 これは、内需中心の産業構造へと転換する必要性と共に、人口の高齢化が進んで、間違いなく国内の実需が増加してくるためです。

 しかし、公的医療保険はわかりやすく言えば国家管理の社会主義経済であるため規制が多く、技術革新やビジネスモデル革新といったイノベーションが起こりにくい環境にあります。
 実際にニーズを持つ人が、それ相当の自己負担をしても革新的な医療サービスが受けられるようにしないと、せっかく進んだ技術やサービスが生まれてもなかなか普及せず、開発コストも回収できないことになります。つまり、医療が「産業」に育たないのです。

 仮に混合診療が解禁され、自由競争的な原理が働くようになれば、さまざまなイノベーションの芽が医療分野でも生まれてくることでしょう。このような局面になった時、日本という国の底力は計り知れません。

 これは困る。将来の医療イノベーションのイニシアティブを日本に取られることは、アメリカの国益に反する。
 ならば、規模的な将来性が低い日本市場への進出はあきらめるかわりに、イノベーションの起こりにくい公的医療保険制度を堅持させ、日本の医療産業が大きく飛躍して世界市場に展開することがないように今のうちにブロックしてしまおう。

 もちろんこれもわしの想像なわけですが、もしそうだったらすごい高等戦術です。
 日本は新興国という膨大な医療市場から、事実上締め出されてしまうのです。

2012年1月23日月曜日

三重県東紀州の田舎住込型インターンシップ

この時期になると、テストもしくは入試の関係なのか、「はんわしの評論家気取り」に大学ドメインからのアクセスが急増します。
 もしあなたが大学生ならば、ちょっとこの記事をお読みください。(大学生以外の方は読み飛ばしてください)

 奇妙なことですが、今の若者は周りの大人から非難されています。「指示待ちで、自分で考えない、行動しない」とか「海外に無関心で内向きである」とか。

 しかし、子どもは親や社会の鏡ですから、「指示待ち」で「内向き」なのは、実は今の日本社会の姿そのものです。
 現実に、職場や社会がこのような大人で溢れていることは世の中に出ればすぐにわかりますし、残念ながらこういったレベルの人が圧倒的に多いがゆえに、日本社会は出口が見えず漂流しているのだとも言えます。
 問題は、では、せめて若者はどのようにこういったガラクタを乗り越え、自己実現していけるかということです。

 目を地域に転じてみます。

 たとえば三重県の南部、東紀州と言われる地域は、豊かな自然があり、かつては林業や漁業で繁栄しました。
 しかし経済構造が変わって地場産業は衰退し、多くの若者が進学や就職で地域を去り、高齢化と少子化が深刻です。
 多くの住民は、その原因が正確に理解できませんでした。漁業や林業を再興すれば、すなわち、もっと生産量を上げれば、この地域は再び豊かになれると考えました。その結果、巨費を投じて漁港を作り、堤防を築き、山を皆伐して植林し、林道を作り、木材の加工場を整備しました。
 しかし、衰退は止まりません。漁民や林業従事者はどんどん高齢化し、後継者もほとんどいなくなってしまいました。

 いうまでもなく真の原因は、貿易が自由化されたのでコストの安い海外の冷凍魚や木材が国内市場を席巻したためです。
 問題なのは生産(供給)ではなく、消費者が何を求めており、何を作れば売れるのか、という「マーケティング」と、売れる商品を買い手に届ける「プロモーション」だったのです。
 今、全国の地域で展開されている「地域おこし」とか「地域特産品開発」のほとんどが失敗するか、停滞している理由もそこにあります。

 では、どうするか。
 第1次産業の後継者を育成することももちろん重要ですが、より本質的な問題の一つは、第1次産品を加工して付加価値を付けること。この場合の付加価値とは、モノ(ハードウエア)だけでなく、モノガタリ(ソフトウエア)も含むことに留意してください。
 もう一つは、その商品・サービスをプロモーションすること、すなわち売ったり提供したりしていくことです。

 このために必要なことは何でしょうか。
 先述したように、地域には若者が少ない。商品開発やマーケティング、プロモーションのセンスや知識がある若者はさらに少数です。
 一方で、地域を何とかしたいという熱意と、地域で暮らし、事業してきたことで蓄積したノウハウ、人脈、知識を豊富に持っている若手経営者は確かにいます。彼らは片腕を求めています。

 地域のために何かをしたいという若者(いや、もっと直接的に言えば、何でもいいので自分の力を試したいとか、何か未知のものに挑戦したいという若者)と、地域の熱い若手経営者とをコラボすれば、何が創発されるのでしょうか?
 それが東紀州の「田舎住込型インターンシップ」です。

 このプログラムは3年前から始まっており、すでに20名近くの大学生が東紀州に住み込んでインターンシップを行っています。
 もし地域おこしや自分磨きに関心がある大学生の方、特に、知識だけでなく学問を現場に応用してみたい方は、ぜひこのページをご覧になってください。チャレンジをお待ちしています。

■世界遺産「熊野古道」の地に生きる田舎住込型インターンシップ(NPO法人G-net)
 http://www.honki-i.net/mie/index.html

2012年1月22日日曜日

中小企業の海外進出 ~司法制度からの視点

*マニアックな内容なので法律に関心がない方は無視してください*

 月刊誌「WEDGE」を暇つぶしに見ていたら、中小の海外取引拡大 サポートできない日本の司法インフラ というレポートが目に留まりました。

 日本も国内市場の規模は縮小傾向であり、中小企業の生き残り策の一つとして、海外への進出がよく言われるようになっています。
 海外進出とは
1 自社の商品を海外へ輸出する
2 自社の事業を海外で展開する
 の2つがあります。
 このうち、1については、多くの場合、商社を経由したり、親会社の海外部門といった特定の顧客向けであったりと、中小企業が直接にかかわるような国際トラブルになる芽はまだ少ないと言えそうです。
 しかし、2の場合、すなわち、海外に工場や事務所を建設し、生産設備や販売設備を導入し、現地の人を雇い、現地の企業や消費者に直接販売(提供)する、というような場合、取引先とのさまざまな法的トラブルが発生する可能性は大きくなります。

 WEDGEによると、海外で法的紛争があった場合、日本企業の多くは「裁判」という解決手段をとります。しかし(意外なことですが)、海外では時間や費用が掛かる裁判ではなく、企業同士が「仲裁」という手段で、話し合って解決することが圧倒的に多いそうです。

 一般的に、仲裁とは、当事者間での話し合いである「調停」と、裁判所が判決を下す「裁判」の中間に位置し、公的に認められた仲裁機関がいわば裁判官の代わりとなり、杓子定規に法律論で白黒をつけるのでなく、それぞれの事情とかビジネス習慣といった法律外の事項も判断材料にしながら、紛争の解決を図るというものです。
 裁判に比べて簡単で早いので、国際ビジネスの紛争には国際仲裁機関が活用され、もし海外でビジネスの契約をするときは、トラブルがあったらまずは仲裁で解決すること、また、契約書の解釈でもめることがあった時は、どこの国の法律(契約に関する法律)に従って解釈するか、を決めておくことが常識なのだそうです。

 しかし、この分野で日本は遅れているというのです。
 一つには、日本の仲裁機関の利用率の低さです。無数にあるであろう海外ビジネスの法的トラブルについて、日本の仲裁機関(日本商事仲裁協会)が利用されるのは年間数十件ほど。これはシンガポールや韓国の仲裁機関に比べて2ケタほども少ない数字です。
 二つ目は、解釈の基準に日本の民法が使われることもほとんどないこと。これは、明治時代に民法が制定されてから、表記が現代文に改められたことや、小規模な修正をしているほかスキームはほとんど変わっておらず、現代のビジネスに対応できていないことが理由です。
 欧米の契約法は詳細な規定があるのに、日本の民法の契約に関する規定は解釈の幅が大きく、ビジネスの現場では利用しにくいということのようです。

 産業と法律は、当たり前ですが密接に関連していて、独占禁止法とか、特許法とかは基礎的な知識として重要ですし、その他、なになに振興法、といったたぐいの産業政策系の法律もごまんとあります。
 しかし、民法というのは、それこそ民事に関すること、つまり世の中のあらゆることの基本的な法律で、これが国際ビジネスの現場でほとんどプレゼンスがなく、使われてもいない、というのは初めて知りました。

 TPPは農業問題でなく、むしろ国際競争の機会がなかった建設業やサービス業などのほうが影響は大きいのではないかと以前このブログにも書きましたが、そもそも海外展開の上でのプラットフォームである法制度まで問題を抱えているというのは、法律サービス分野も超ドメスティックな産業なのである程度予想はしていたものの、ちょっとショックだったのでした。

(どうでもいいけど、有斐閣の「ジュリスト」の表紙デザインがリニューアルされていたのは驚きました。)

弁護士は余っているんじゃないのか?(2011年9月25日)

弁護士を定期採用する北陸銀行 (2012年1月18日)

2012年1月21日土曜日

ギャップイヤーを地域活性化のチャンスと捉える

今話題となっている、東京大学の「将来の入学時期の在り方について -よりグローバルに、よりタフに-」という報告書を読んでみました。
 これから、経済や社会のグローバル化はますます進んでいくはずです。国際競争が厳しくなる中では、大学にも、その環境に適応できる能力を身に着けた学生の教育が求められます。日本人学生の留学を進めるとともに、外国からの留学生の受け入れも重要です。学生でだけでなく、教員や研究者が国境を超えて活動できる体制づくりも必要になります。
 このような状況にかんがみ、日本のローカルルールである「4月入学、3月卒業」という慣行を見直し、国際標準である9月入学を進めていこうというのが報告書の趣旨です。(リンクはこちら

 もちろん、日本で長く定着した習慣を変えようというのですから、解決すべき課題も多く、さまざまなハレーションも予測されます。報告書では、9月入学にした際のメリットとデメリットを以下の表のように整理しています。

(東大ホームページから転載しました)

 論点がよく整理されていてわかりやすいのですが、特に問題なのは、高校卒業から大学入学までに半年ほどの空白期間ができることと、8月卒業となると、4月入社を前提としている現在の就職活動や公務員試験、実施時期が決まっている国家資格試験の受験などに不都合が生じる可能性があることです。

 報告書は、このうち入学前の空白期間については、「ギャップイヤー」の発想が有効であると提唱します。ギャップイヤーとは、高校卒業から大学入学までの間とか、大学在学中の休学期間、さらに大学卒業から大学院進学や就職までの期間を利用して、様々な有意義な体験を若者にさせる仕組みのことです。
 もともとはイギリスで始まったそうですが、日本でも政府の教育再生会議などで、「日本版ギャップイヤー」の導入が提唱された経緯があるとのこと。
<注>ギャップ「イヤー」とはいうものの、今回の場合、実際は半年間であるので、「ギャップターム」という呼び方がより正確なようです。

 イギリスでは、ギャップイヤーを選んだ学生が大学の全合格者の7.6%おり、ギャップイヤーを希望する学生は、その意思を大学入学願書に記入し、大学側は合否の判定の参考にするそうです。
 ギャップイヤーの主な過ごし方は、①職業・ボランティア体験、②特定技能の修得、③旅行・外国体験など。
 学生にとってはギャップイヤーによって、自分が何をしたいかが明確になるなどの効果があり、企業側も学生が社会体験をして見聞を広めた効果を認めており、採用の際にはギャップイヤーを体験した若者を評価しているという現状のようです。

 この「はんわしの評論家気取り」のブログでは、以前から三重県東紀州地域(三重県南部の、尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町、紀宝町の2市3町からなる地域)で、「東紀州を若者のチャレンジの聖地に!」を合言葉に取り組まれている長期インターンシップのことを取り上げてきました。
 もしギャップイヤー(ギャップターム)が制度化されるのであれば、東紀州のような若者の受け皿は、全国に意外と多くあるのではないかという気がします。
 日本社会は「成長」から「成熟」のステージに移っており、地域活性化のためには、今すでにある資源を捉えて内容を分析し、過不足を他の地域と連携して調整しながら、地域の課題解決に向けて、グローバルな視野を持ちつつ取り組んでいくことが必要になっています。
 たとえは不正確かもしれませんが、文化大革命時代の中国共産党による「下放政策」のように、地域と若者が半強制的にかきまぜられる創発のチャンスと考えられないでしょうか。

 ただ、残念に思うのは、東大は、学部の入試時期は相変わらず1月~3月を考えているように見えることです。
 報告書は「本学として入試日程をいたずらに遅らせることは適当ではなく、尐なくとも前期日程試験については現行日程を維持する方向で検討することが妥当であると考える。」とあるのですが、現行の入試は択一式のセンター試験と、記述式の二次試験と、いずれもパーパーテストであることは問題が多いのではないでしょうか。
 筆記試験は全国共通の大学入学資格試験とし、各大学(学部)の入試は論文と面接で、時間をかけて全人格的な評価で合格者を決める方がいいと思います。未来の日本を担うエリート予備軍の選抜には、それくらいの手間暇をかけることが本来必要なのではないでしょうか?

2012年1月20日金曜日

みんなが喜ぶ会社・組織とは

 今日は松阪商工会議所で、三重県経営品質協議会による「みんな喜ぶ会社になる講座」が開催されたので参加してきました。
 スキンケア製品のアウトソーシングカンパニーとして、そして、あの阪神大震災による壊滅的な被害から立ち上がって見事に再興を果たした会社として知られる、三重県多気町の万協製薬株式会社

 ここは、「顧客や社員にとって、かけがえのない会社となる」ことを目標に、素晴らしい経営に取り組んでおり、2008年度には三重県経営品質賞知事賞を受賞。さらに2009年度には日本経営品質賞を受賞して、その経営の質の高さが認められています。

 今日の講座は、その万協製薬で、実際に経営品質の向上活動に携わっている社員の方2名を講師として、万協製薬の松浦信男社長のリーダーシップの下で取り組みんでいる内容や様子、成果、そして苦労した点などを経営者でなく社員の目線から語っていただくという、非常に有意義なものでした。

 万協製薬の経営品質の取り組みは、ぜひ同社のホームページを見ていただきたいのですが、あらためて認識したのは、今のような姿になるまでには試行錯誤の繰り返しと、10年近くにわたる息の長い取り組みがあったということです。

 同社では、スポーツ大会などのさまざまな社内イベントが頻繁に開かれており、多数の社員が参加していますが、そこに至るまでには、やはり「仕事で毎日顔を突き合わせている同僚と、プライベートでも一緒にいるのはイヤ」とか、「自分の時間が削られるのはイヤ」という、至極まっとうな拒否反応も多くありました。
 その考え方は肯定しつつも、経営うんぬんは抜きにして、まずそのイベントが、参加しても企画しても社員にとって楽しいものにすることが大事だ、という話には説得力を感じました。楽しむ中で、コミュニケーションの重要性に気づき、少しずつ風通しの良い組織になっていく。万協製薬といえども一朝一夕に今の姿になったのではなかったのです。

 また、「社内提案制度」とか「プチコミファミリー制度」など、社員と経営陣、さらに社員同士のコミュニケーションをスムーズにするさまざまな制度があることに加え、管理職をジョブローテーションとし、年功序列的な人事を排して、誰もが管理職の苦労を体験する仕組みができていることや、ポイント制による社内独自のキャリア制度があり、自分の客観的な職務能力とスキルアップの過程が「見える化」できていることなど、社員のモチベーションを高めるための工夫が考え抜かれ、実行されていることに気づきます。

 このようないわば内輪の話は、松浦社長から講演を聞いたとしても、一社員・一被雇用者の立場からはつい聞き流してしまうと思います。しかし、同じ社員という立場の方から聞くと、たいへんに身近な問題として捉えることができます。
 実際にこの講座でも、参加者と講師の社員の方との意見交換があったのですが、「社内の経営品質への取り組みムードがなかなか盛り上がらなくて苦労している」とか、「自分は中間管理職の立場であるが、自分より年上の部下に対してどのように指導したらいいか悩んでいる」といったような、まさに組織の中にいる人間なら必ず一度は悩むような率直な問題が次々ぶつけられていました。

 やや結論めいたことを言えば、行政による産業振興、中小企業支援については、その究極目標は、地域の企業に素晴らしい経営を行ってもらうことです。言い換えれば、その会社・組織が地域で事業活動を行っていることに誇りを持ってもらえるようにしてもらうことです。
 その支援は、本来なら民間自身の力と市場原理によって成し遂げられるはずの(行政が介入しない方がむしろ望ましい)「企業誘致」とか「研究開発支援」、「販路の開拓支援」などとは全く異質のものです。
 企業自身が必要性を感じていてもなかなか取り組むことができない、経営品質向上の目に見えないノウハウやスキルの支援こそが、今のこの混迷の時代には強く求められているのではないでしょうか。

■三重県経営品質協議会  http://www.miequality.net/

2012年1月19日木曜日

「きほくラブめし決定戦」って何だ?

 「ラブめし」です。
 ラブ注入ではありません。

 今朝、中日新聞を見ていたら、紀北町観光協会で活躍している知人にそっくりな人が写っていたので、よくよく見たら本人でした。
 「きほくラブめし決定戦」なるイベントの告知のようです。

 記事の内容を要約すると、
・「きほくラブめし決定戦」とは、紀北町ならではの食材を使った紀北町らしいご当地グルメのオリジナル料理9品を来場者に食べてもらい、その投票によって、これぞ紀北町の一押しグルメという「ラブめし」を決定しようとするもの。
・紀北町観光協会が企画して初めて実施するもので、ご当地メニューは昨年11月に公募し地元の飲食店経営絵者などからエントリーがあった中から決定した。
・開催日は1月28日(土)9:30~13:30。場所は三重県紀北町の紀伊長島港。入場は無料ですが、ラブめしを食べるには1枚300円のチケット購入が必要。
 ということです。

 ちなみに、エントリーされるメニューは
・たまねぎ天ドッグ
・塩カマス丼
・カキのひつまぶし
・マンボーホルモン焼きそば
・カマスとカキマヨのきほく巻
・青さ・カキ丼
・海カレー
・私のじぶ鍋 みそ仕立て
・まんぼ~る
 の9品。
 お気づきのように、マンボウっぽいネーミングのメニューがいくつかありますが、言うまでもなく紀北町の町民の皆さんはマンボウを食べる習慣があるので、まさに珍味、正真正銘のご当地メニューといえそうです。(残念なのは、これらのメニューのもっと詳しい内容がホームページで見られないことです。)

 この手のB級グルメグランプリは異常な大ブームで、日本全国で開催されている感があります。
 しかし、いわゆるB級グルメをよくよく見ると、実はイベント狙いで無理やりストーリーを作った地元メニューであったり(したがって地元の人がほとんど知らないという不思議なご当地メニューがあふれている)、地元の食材を使っていなかったりするものも多く、紀北のメニューを見た限り、完全ご当地版なのは間違いなさそうです。

 「きほくラブめし決定戦」も、そのまんまB級グルメ対決をパクっていますが、そもそも「学ぶ」の語源は「まねぶ」、すなわち「真似る」ということです。まずやってみるのは大切なことです。

■紀北町観光協会 公式サイト http://kihoku-kanko.com/index.html

2012年1月18日水曜日

弁護士を定期採用する北陸銀行

 今日の日経新聞の一面は、都市機能を狭い範囲に集積させる街づくりである、いわゆる「コンパクトシティ」を推進するための法律が制定されそうだという記事でした。
 マスコミの奇妙なところは、法律を作るのは国会であって、政府(国交省)は法案を作るだけなのに、なぜか「国交省が法律を作る」みたいに読める書き方になっていることです。官僚崇拝なのは実はマスコミです。

 それはさておき。

 実は日経で注目すべき今日のニュースは、北陸銀行(本社 富山市)が新人弁護士を総合職の行員として定期採用する、というものです。(リンクはこちら

 記事によれば、弁護士の主流業務である法務(訟務)業務のほか、債権管理やM&A(合併・買収)の仲介などの業務で法務の専門知識を生かすことが目的だそうです。
 地方銀行の顧客は地元の中堅企業、中小企業ですが、これらの企業を取り巻く経営環境はますます高度化・複雑化しており、事業を行うに当たっての法的課題の検討やチェックはコンプライアンスの点からも欠かせないものになっています。
 ましてや、中小企業でも事業承継やM&Aなどは増加してくるはずです。行内弁護士の活躍の場は間違いなく増えるでしょう。

 弁護士も都市部と地方の格差が大きな職種の一つですが、産業振興の観点から深刻なのは、ビジネスや経営に精通した弁護士の絶対数が地方では特に少ないことです。
 特に地方ほど「知識集約化産業への構造転換」が生き残りに必要なので、弁護士や弁理士、会計士など高度専門家のプラットフォームは一種の知的インフラとして整備が必須となり、その差は産業競争力の地域格差に表れてくることでしょう。

 一方、法科大学院を卒業して平成22年度の新司法試験に合格した司法修習生(64期生)のうち、弁護士を希望しながら就職先が決まっていない人が昨年の9月時点で35%となり、就職先が未定の割合は年々増加しているとのことです。
 日経の記事も書くように、北陸銀行は就職内定率の低さが地元出身の優秀な弁護士人材の確保につながると考えているようですが、同時に、雇われる行内弁護士にとっては将来の独立開業に向けた経験を積む場と捉えているとみられる面もあることから、彼らにどのようなキャリア形成を提示できるのかも銀行にとっての課題になりそうです。

2012年1月17日火曜日

高速道路「海山~尾鷲北」間が3月開通!

紀勢自動車道の海山(みやま)IC~尾鷲北IC間の6.1kmについて、3月20日(火)に開通することが国土交通省から発表されました。
 現在、紀勢自動車道は海山ICから約25km手前の紀勢大内山ICまでが開通しています。
 今後、ここから、紀伊長島IC→海山IC→尾鷲北ICと延伸する予定ですが、途中区間の海山~尾鷲北間が暫定的に開通することになるのです。(通行料は無料)


 現在この区間は国道42号が並走していますが、通ったことがある方はご存じのように、馬越峠(まごせとうげ)とよばれる、急カーブが連続する険しい区間です。(ちなみに、世界遺産である熊野古道の人気ハイキングコースで、美しい石畳が残る馬越峠は、現在の国道の旧道に当たります。)
 高速道路は、この区間をほぼ直線で通るので、朝日新聞の記事によれば通行時間は11分から6分に短縮されるとのことです。
 実際、国交省ホームページの工事情報を見るとわかるように、この区間はほぼすべてが高丸山トンネルと馬越トンネルであり、実際に走るとほとんど「地下道」のようなイメージで、あっという間に着いてしまうはずです。
 しかしながら、尾鷲北ICは、以南の幹線である国道42号からやや離れた場所にあるため、ICから下車後、アクセス道路を通って市街地に出るには、所要時間は現状とほぼ変わりはないと思われます。

 むしろ国交省が強調するのは「安全性・安心度の向上」です。豪雨地帯である紀北町、尾鷲市は、大雨によって唯一の幹線道である国道42号の通行止めが頻繁に起こります。高速道路はそのバックアップの役目を果たすというのです。
 ただこれも、暫定2車線(つまり上下対面通行)であるため、乱暴な「あおり走行」といった危険運転が頻発する可能性はあります。繰り返しますがほとんどがトンネル区間であり、おそらく勾配もきついと思われるため、交通事故になれば大惨事の危険性もあります。くれぐれも交通ルールは守ってもらいたいと願います。

 はんわしが一番関心があるのは、高速道路の経済効果がどうなるかということです。当座は、高速道路に通過され取り残されてしまう形になる「道の駅海山」にどんな変化があるのか、さらに尾鷲北IC付近がどのように変化していくのか(新店舗の立地など)が注目されます。

 いずれにしろ、東紀州地域(三重県南部の、尾鷲市、熊野市、紀北町、御浜町、紀宝町の2市3町からなる地域)の悲願であった「命の道」がとうとう実現しようとしています。
 この瞬間のために着々と地元が取り組んできた観光振興策や地域振興策の種まきが花開く時がいよいよ来たのです。もちろんストロー現象のような逆風もきっと予想以上でしょうが、もう後戻りはできないのです。

<追記>
 紀勢自動車道が現在の終点である紀勢大内山ICから、紀伊長島ICまで延伸され、開通することが決定しました。開通日は平成25年3月24日です。くわしくはこちらはんわしの評論家気取り「紀勢自動車道「紀伊長島IC」が3月24日開通!」 2013年2月20日


さらに追記>
 紀勢自動車道のうち唯一工事中であった紀伊長島ICと海山ICの間が開通し、紀勢自動車道は勢和多気IC~尾鷲北IC間が全通します。開通日は平成26年3月30日です。
 くわしくはこちらはんわしの評論家気取り「紀勢自動車道が3月30日に全通!」2014年2月11日

2012年1月16日月曜日

のど元過ぎると

今日はわりあい暖かい一日でした。
 とある大型食品スーパーに買い物に入ったら、屋内の方が屋外より寒く感じて驚いてしまいました。

 よく見渡すと、それもそのはず。
 入り口のすぐ横は飲料コーナーで、棚一面に色とりどりのペットボトルや飲料のパックがずらりと並んでいます。これらは冷蔵ケースなわけですが、扉も仕切りもないので冷気が売り場にどんどんと放出されていることになります。

 しばらく進むとアイスクリームや冷凍食品のショーケースがあります。これらは冷蔵どころでなく冷凍なのですが、やはりカバーもふたもありません。マイナス何度かの冷気が放出されており、傍を歩くと寒気がしてきます。

 肉、魚の売り場も、漬物や麺類、豆腐、練り物などの日配商品の売り場もそう。青果の売り場もそうです。
 今さらながら気が付いたのですが、食品スーパーの売り場は「巨大冷蔵庫」なのであって冷気はダダ漏れです。

 これはもちろん、消費者の便宜を図ったゆえでしょう。コンビニの売り場のように、いちいちケースの扉を手で開けていてはお客さんに不便だということのなのでしょう。だからオープンなのはサービスだということなのでしょう。

 しかしよく考えると、これは一種の過剰サービスなのではないかと思い至ります。
 原発事故の影響による電力の不足は、夏場よりもむしろ冬場の方が平準化が難しいと聞きます。大型スーパーも、電灯を消したりエスカレーターを止めたりの節電をしきりにしていましたが、最近は~少なくともこのスーパーに関しては~のど元過ぎれば何とやらで、積極的な節電はしていないような気がします。

 その究極の姿が、この「巨大冷蔵庫現象」です。

 電力不足前、単なる省エネ(地球温暖化防止とかいうホントかいな?という理由で)を目的に、コンビニの深夜営業の禁止を条例化しようという動きがありました。
 その本音は商店街の保護であったり、深夜営業を止めても最大の電気消費装置である冷蔵ケースは24時間動いているから実はあまり節電にならないことで、すっかり沙汰やみになってしまいました。営業禁止は極端ですが、スーパーももう少し節電を考えた方がいいのではないかと思いました。
 スーパーの従業員や経営者はどうお考えでしょうか。

2012年1月14日土曜日

三重県起業家交流会 in 桑名

三重県起業家交流会 in 桑名が、桑名市にあるくわなメディアライブを会場に開催されたので行ってきました。
 これは三重県による委託事業で、受託者である株式会社アイエリアが桑名商工会議所などの後援を得て開いたものです。

 このブログで時々書いてきましたが、日本経済が停滞している原因の一つは、経済のプレーヤーである中小企業や個人事業主の新規起業(創業)が減少していることです。
 これはよく、廃業率のほうが、(新規)開業率を上回っていることで表現されます。

 経済活性化のエンジンはプレーヤー同士の競争・切磋琢磨にあるので、そのおおもととなるプレーヤー、すなわち起業者が減少するのは致命的なことです。
 
 三重県でも各商工会議所や商工会、さらにはアイエリアのような民間企業やNPOなどが創業希望者支援のためのセミナーや相談会を開催しており、三重県もそれをバックアップしています。

 今回の交流会は、起業するにあたっての起業志望者、あるいは起業直後の経営者は、どうしてもさまざまな経営課題に直面せざるを得ないことから、まずは多くの企業者同士や支援者と交流し、知り合う機会を作ることで、経営上の悩みを共有したり、情報交換や新しい販路につなげようということが狙いだと思います。

 交流会では、三重県内はもとより関西地方などで起業支援を行っている武田秀一さんの特別講演があり、続いて50名ほどの参加者のうち希望者10名ほどによる自社のプレゼン大会がありました。

 最後に1時間ほど、ブース展示を兼ねた名刺交換会がありました。

 いつも感じることですが、このような起業者の交流会は、わしが普段付き合いのある、一定程度ビジネスが軌道に乗っている経営者とはまた違った、ある種「青臭い」エネルギーに満ちています。
 このうちどれだけの方のビジネスが大成功するのかはわかりませんが、起業という夢をもって挑戦している姿は非常に刺激的でした。

 プレゼンや名刺交換を聞かせたいただいた方々をご紹介します。(順不同です)

中山建材(津市) 総合建設業として、建築やリフォーム、エクステリアなどに幅広く対応。「何でもお手伝いします」がモットーだそうです。(ホームページはこちら

ホットネクスト(菰野町) ホームページの作成や、その活用のためのコンサルティングを行っているそうです。「明日のビジネスを熱く変える」というキャッチフレーズが光ります。(ホームページはこちら

若石足もみ すこやか(桑名市) 足裏などの足もみにより全身を活性化させ、免疫力や自然治癒力を高めるそうです。経営者の高橋さんは元気がみなぎっていました!(ホームページはこちら

やるっち倶楽部(四日市市) 四日市市の中心にある諏訪神社で、毎月15日(今月は明日!)に手作りクラフトや雑貨のフリマを運営しているそうです。(ホームページはこちら

(株)ユナイテッドワークス(四日市市) ウェブ作成代行や経営コンサルタントの会社。2月からホームページのアクセス解析レポートの生成システムという新サービス「GAReport」を開始するとのこと。(ホームページはこちら

リンク トゥ アス(津市) 企業向けの英語研修、通訳、翻訳のワンストップサービス。2月17日にアスト津で英語学習に関心がある人向けのセミナーを行うそうです。(ホームページはこちら

(株)アイエリア(愛知県蒲郡市) 三重県のポータルサイト「ミエワン」の運営や、起業支援拠点である「桑名コミュニティ インキュベーション」の運営(ホームページはこちら

 これら以外にも多くの方々とご縁をいただきました。ビジネスのますますのご発展を祈念します。

2012年1月13日金曜日

ソーシャルビジネス・ケースブックが参考になる

 経済産業省が
 ソーシャルビジネス・ケースブック(震災復興版)~ 被災地の復興に向けたソーシャルビジネス ~
 を公表しました。(リンクはこちら

 阪神大震災は甚大な被害をもたらしましたが、災害復興ボランティアを中心として、日本のボランティア活動の歴史に新しいページを切り開くきっかけとなりました。

 昨年の東日本大震災は津波や原発事故など、非常に深刻な災害でしたが(そして今でもそれは続いているわけですが)、ボランティア活動と同時に、復旧や復興活動をビジネスの手法で持続していこうとするソーシャルビジネス(コミュニティビジネス)の有効性が再認識される機会ともなりました。
 これは確実に、日本の市民社会が成熟している証左でもあると思います。

 震災は極端な例ですが、言うまでもなく、日本各地では少子高齢化が進み、防災、防犯、介護、教育、外国人との共生、などのあまたの地域課題があります。何よりも画一性と公平性を重んじる行政による対応は、ほとんどの場合無力であり、地域住民が知恵や資金を出し合い、あるいはよそのステークホルダーと広域的に連携して課題解決に取り組んでいくことが必要でもあり、実際に一番有用でもあります。

 ソーシャルビジネス(コミュニティビジネス)はますます普及していくでしょう。

(関連リンク)
いま話題沸騰!「三重のCB(コミュニティビジネス)」 (2011年2月16日)

「コミュニティビジネス」と「ソーシャルビジネス」と「地域ビジネス」(2009年10月11日)

 さて、この事例集の中で、はんわしが最も関心を持っているのは、ミュージックセキュリティーズ(株)による「セキュリテ被災地応援ファンド」というものです。
 これは、全国各地の個人から1口10,500円の出資を集める仕組みで、出資金のうち手数料を除いた10,000円から、半分が出資金に、残り半分が寄付に回るという内容です。

 被災地で再興を目指す経営者や事業者にとっては、出資を受けることで資金調達が可能となるほか、復興支援という志を持った出資者がその企業のファンとなり、継続的に応援してもらえる可能性が生まれます。

 この事例はテレビ番組などで何回も取り上げられているのでご存知の方もいると思いますが、この事例集にも
・個人投資家は、約6~10年間のファンド運営期間中、出資先企業の特典(商品や工場見学会などのサービス)や決算を通じて、企業の復興を見守ることができる。

・2011年12月時点で、 立ち上がったファンドは28。全国的な被災地支援の機運の高まりと、顔の見える事業者を直接支援できる個人向けファンドの仕組みがマッチして、出資した個人は15,000人、調達金額は5億円以上にのぼっている。
 ことが書かれています。

 この仕組みは、いわゆるコミュニティバンク(市民バンク)とも共通している部分があり、今後の、特に過疎地や中山間地など条件不利地での産業振興に、大きな役割を果たすものだと思います。
 個人的にも、三重県のNPOや信用金庫などの金融機関のコラボができないか・・・などと思っているところです。

2012年1月12日木曜日

みんな喜ぶ会社になる講座

先行きの見えない混沌とした時代。企業経営者や団体・組織のリーダーの皆さんのご苦労はいかばかりかと思います。
 ついつい、「政府が国の進む べき方向を示せば・・・」とか、「政治家がビジョンを示せば・・・」といったような他力本願に陥ってしまいがちかもしれませんが、失われた20年が証明す るように、現在の社会状況は政治家や官僚、学者、大企業などが解決策を示せるほどに生易しいものではありません。

 特に地域に密着した事業活動を行っている中小企業やNPO組織などは、組織のミッションを経営者を含めたすべてのスタッフで共有するとともに、顧客の満足や、従業員の満足、地域への貢献といった「そこに立地する理由」を明確にした運営が強く求められます。

 しかし、そのためにはいったい何から取り組んだらよいのか?

 そのヒントを、実例を通じて学ぶセミナー「みんな喜ぶ会社になる講座」が、三重県経営品質協議会の主催により伊勢市と松阪市で開催されるので、その情報をシェアします。





















 三重県経営品質協議会は、素晴らしい経営(注:ここでいう経営とは企業経営だけでなく、学校や医療、社会福祉などの非営利法人や協同組合など、あらゆる組織や団体のマネジメントを含みます)を実現するために、「経営品質」というマネジメントツールを活用し、経営の革新に取り組む企業などを支援する目的で、約10年前に三重県や県内の企業・団体などが連携して設立した組織です。

 阪神大震災で壊滅的な被害を受け、三重県多気町で事業活動を再興。現在は外用薬の開発・アウトソーシング企業として卓越した経営を実践していることで有名な万協製薬(株)も、三重県経営品質賞三重県知事賞を獲得した経歴を持っているなど、数多くの三重県内の企業を支援しています。

 今回の講座では、その万協製薬(株)の社員をゲストスピーカーに招いて、取り組みの具体的な内容や、苦労した点、工夫している点などを直接聞くことができます。

 企業・団体の社会的な存在意義を再確認し、素晴らしい経営を目指している経営者、マネージャー、従業員など、あらゆる方にご参加してただきたいと思います。参加料は無料ですので、ぜひ三重県経営品質協議会に参加をお申し込みください。

■三重県経営品質協議会  http://www.miequality.net/

2012年1月11日水曜日

一年の体感速度の公式

今日は小ネタを。
 こんな話を聞きました。

 年をとると、一年があっという間に過ぎていきますが、月日を体感する長さは年齢に反比例するそうです。すなわち、「年齢分の1」という数式で表されるそうです。

 たとえば10歳の子供なら、1/10
 20歳の成人なら、1/20
 50歳なら、1/50

 つまり、50歳の人の一年のスピードは、20歳のスピードの2.5倍ということになります。
 10歳の時と比較すると、5倍の速さ。

 この話をしていた人も、「この公式が科学的に証明されることはおそらくないでしょうが、実感としてはほぼ妥当なのではないでしょうか。」と言っていましたが、その通りです。

 子供の時は、「1年」というようなスパンの長い時間観念はそもそもなかった気がします。
 20歳に時は、いろいろ楽しいこともあって忙しかったけれど、その一方で阿呆みたいにポカンと過ごしていた時間も相当ありました。そしてその時間が無駄になっていたわけでは決してありませんでした。

 今は、ただただ忙しいばかり。
 正月があって、ひな人形のCMが始まって、花粉症になって、桜がきれいに咲いて、新学期になって、連休があって、梅雨になって暑くなって、たまらなく暑くなって、どっかに家族旅行に行ったりして、夏休みが終わって、かぜ薬とかシチューのCMが始まって、キンモクセイの香りがどこかからしてきて、台風できれいさっぱり散ってしまって、秋風が吹いて紅葉になって、クリスマスが来て、また正月。この繰り返し。

 そのうち、人生に飽きてくるのかもしれません。
 幸いまだそんな境地ではないのですが。

2012年1月10日火曜日

地域産品を活かした商品を考える会in熊野

「第3回地域産品を活かした商品を考える会in熊野」が2月10日(金)に、三重県熊野庁舎で開催されるようです。(リンクはこちら


 三重県の公設試験研究機関(いわゆる「公設試」)である、三重県工業研究所、三重県農業研究所、そして三重県水産研究所の職員(研究員)が、食品事業者や関係者を対象に、新商品開発の課題解決に向けた話題提供や、個別相談会を開催するもので、尾鷲、志摩に次いで第3回目の開催になります。ぜひ多くの事業者にご参加いただきたいと思います。

 いわゆる「地域ビジネス」の主流は、地域の特産品を使った食品や土産物品の開発、自然環境や名勝・旧跡などを生かした観光商品開発といった、いわゆる「地域資源活用ビジネス」です。
 しかしこの種の事業は全国の至るところで取り組まれており、行政も支援しているものの、多くが採算的には苦戦しています。
 その最大の理由は商品力がない、すなわち消費者に訴えかける商品の魅力が低く、他の産地との差別化要因が弱いということです。

 この解決のためには消費者(顧客)が本当に何を望んでいるのかというマーケティングが不可欠ですが、もう一つの糸口になるのは、科学技術を応用することです。

・誰もやっていない農作物などを新たに栽培する。(アテモヤ熊野地鶏の事例など)
・すでにある産品の有効成分を生かした高機能製品を作る。(新種香酸かんきつである新姫の事例など)
・特殊な加工方法や調理方法により新商品を開発する。(サンマを使った魚醤の事例など)

 などが考えられます。
 今回の「地域産品を活かした商品を考える会」のコンセプトも、地域資源活用ビジネスへの科学技術の活用について、公設試の知見を生かした新商品や新サービスの開発支援ということだと思います。これはたいへん有意義なことです。

 しかし、問題もあります。
 科学技術を生かした商品開発には2つの重要なファクターがあります。公設試が事業者の身近にあることと、研究者と企業の経営者や開発担当者を仲介する媒介役(キャタリスト)が存在していることです。

 熊野市がある三重県東紀州地域に関しては、公設試のうち三重県農業研究所の果樹研究室が御浜町に、三重県水産研究所の分室が尾鷲市にあって至便なのですが、食品製造や食品加工といった製造業分野に関しては必ずしも身近とは言えません。
 今となってはどうしようもないのですが、(そして、それが必ずしも理想的に活動していたのかどうかはしばらく措くとして)、東紀州唯一の高等教育研究機関であり昨年移転してしまった近大高専の存在は大きかったのではないかという気がします。
 逆に言えば、その穴を埋め合わせるための地元企業と科学技術を結びつける補完策がより求められるのではないでしょうか。

2012年1月9日月曜日

辰年なので「竜ケ峠」に行ってみた

おっさんになると、新年だから干支にちなんだ山にでも登って幸運をつかもう、というようなベタな発想に陥りがちです。
 サラリーマンにとっては本当にありがたい三連休でしたが、体がなまってしまったので、南伊勢町の竜仙山に行こうかな、と思ったのですが、たまたま伊勢市街から南伊勢町に向かう道(通称 サニーロード)の途中に、竜ケ峠というものがあったのを思い出しました。

 竜ケ峠は、伊勢の宇治(伊勢神宮内宮の門前町。当然ですが平等院のある京都の宇治ではありません。)と、現在は南伊勢町である五カ所湾沿いの集落とを結ぶ街道にある峠の一つです。
 しかし、峠の登り口にあたる矢持(やもち)という集落は、平家の落人が隠れ住んだという伝承が伝わる地域であり、ちょうどNHK大河ドラマ「平清盛」が放映開始となる時期でもあるので、何かパッとした話でもあるのではないかと思い立ち、出かけてみることにしました。

 伊勢市街地から約15kmの山中に矢持町はあります。落人伝説とはなんだかおどろおどろしいですが、ごく普通の、全国どこにでもある、のどかな山中の集落です。



 集落の中心にあるのが、知盛山久昌寺という曹洞宗の古刹です。
 平清盛の四男で、壇ノ浦の戦いに敗れ入水したと言われている平知盛は、寺伝によれば実はそこで絶命したのではなく、何名かの従者を連れて、ここ矢持に逃げ延びました。
 その菩提を弔うため建立されたのが久昌寺であり、平家の赤い旗印などが寺宝として今に伝えられているとのことです。(伊勢志摩きらり千選のホームページ参照)


 周囲は山また山ですが、目を引くのは鷲嶺(しゅうれい)と呼ばれる、山頂部に石灰岩が露出した秀峰です。この周辺は鍾乳洞も多く、確かにいざというとき隠れたり、立て籠ったりすることは十分可能だったと思われます。
 このような平家伝説を利用して、かつてはキャンプ場や体験交流施設などが整備され、特に夏場はにぎわっていたようですが、受け入れ側の地元も皆さんの高齢化もあって、一昨年前だったかに閉鎖されてしまっており、今では空き地に看板だけが残っています。
 地域活性化が難しいものであることを痛感させられます。


 しかし、良くなっている面もあります。はんわしは20年くらい前にも竜ケ峠に行ったことがあるのですが、そのころは地元有志がすっかり荒れ果てていた峠道を再整備し始めたころで、知る人ぞ知るという感じのルートでした。
 ところが、今では平家落人伝説も含め、詳細な地図と、峠道の箇所箇所にまつわる伝承が書かれた案内板や標識が設置されています。
 この日はなんと、関西から平家の里と竜ケ峠を訪ねるバスツアーの一団、50名以上が峠を歩いていました。まったく隔世の感があります。 


 久昌寺から竜ケ峠までは徒歩約40分。気持ちの良い森林の中をサクサクと歩けます。
 以前は何にもなかった峠は雑木が刈り払われ、休憩できる東屋まで建っています。(写真には撮っていません)
 ハイカーの一団が休憩していて、思っていた以上ににぎやかでした。これから宇治の方へ下るそうです。

 わしはクルマを矢持に停めてきたのでUターンしてきました。
 帰りになにかお土産はないかと思い、矢持町の隣の集落、横輪町にある恵の郷・風輪に立ち寄ってみました。
 入り口には「新商品 御平家餅」と書かれたノボリがあったので、「おっ! ここにも大河ドラマあやかり商品が?」と思ったのですが、どうやら今日はこの餅は準備ができていないらしく(トホホ)、店番していた妙齢の御嬢さんたちが薦めてくれた、横輪町特産の干しイモを買ってきました。

 皆様も、意外に近く、しかも秘境ムード満点の矢持町を訪れてみてはいかがでしょうか。

■恵の郷・風輪  http://heart.pro.tok2.com/yokowa/

『平清盛』伊勢志摩地域宣伝協議会が設立 (2011年12月19日)

2012年1月8日日曜日

当然ながら、政治家の失敗のつけは選んだ国民が負う

今日(1月8日付け)の中日新聞朝刊「ニュースを問う」というレポート記事が、中小企業の信用保証の問題を取り上げていました。
 中小企業の公的融資問題は一見地味なテーマですが、国民生活に直結しているという点で、実は奥深い問題です。

 この記事の趣旨は

・派手なテレビCMで有名だった名古屋市内の宝石・時計店が、愛知県信用保証協会と名古屋市信用保証協会からの保証により、国がリーマンショック対策として創設した融資制度(景気対応緊急保証制度)を活用して7千万円の融資を受けた。2008年12月のことだ。

・しかし同社はかねてから経営不振で粉飾決算も恒常化しており、融資の返済も焦げ付いて、昨年の5月には倒産。

・景気対応緊急保証制度では、焦げ付きは全額を信用保証協会が弁済する(=貸し手の銀行に、協会が借り手の企業に代わって代位弁済する)ことになっており、この弁済額のツケは国民が(税金で)支払っている。

・中小企業の信用保証では、直接の貸し手である銀行は「信用保証があるから取り損ねはない」という甘い認識であり、信用保証協会側も書類の審査だけで借り手の中小企業に直接問い合わせたりすることはない。責任の所在が不明確だ。

 そして、この記事の記者は、融資と保証の審査が適切であったのかとの疑問を呈したうえで、こう書きます。
「(借り手の中小企業の経営が)苦しくても再建の道を促すのが金融機関、保証協会、国の本来の姿なのに、(景気対応緊急保証制度のような)全額保証は問題の先送りに終わったのではないか。・・・(中略)・・・今後、政府が似たような支援策を打ち出すにしても、金融機関にはある程度のリスク負担が必要だし、後で融資結果を検証できる透明性ある制度も求められる。」

 これは、確かに正論に聞こえますが、問題を単純化しすぎているとは感じます。

 いくら銀行や信用保証協会がプロだとはいえ、企業の粉飾決算を見抜くのは ~オリンパス事件でも明らかなように~ 生易しいことではありません。
 そのほか、国の景気対応緊急保証制度が、まさにリーマンショックという「ブラックスワン」をきっかけにして作られたように、経済情勢の急変による経営リスクも完全な予見は不可能です。
 そのために貸倒引当の制度があるのであって、いかなる融資でもリスクがゼロにはならないことは当たり前のことです。(審査の甘い辛いは枝葉の問題に過ぎない。)
 また、実際問題として多数の融資先がある中で、限られたマンパワーで個別企業の再建を支援できるというのでしょうか。また、どのような基準で、再建すべき企業、すべきでない企業を判断するのでしょうか。

 次に、この記事は政治と行政の役割分担を混同しています。
 リーマンショックで一時的に資金繰りが厳しくなった中小企業に何らかの資金手当てが必要であり、融資が焦げ付いても全額を保証協会が保証するという制度を作ったのは、弱者としての中小企業救済策という「政治」の決断です。
 信用保証協会・・・厳密には行政機関ではありませんが、行政が出資し、公的な使命を帯びている・・・は、単なる制度の執行機関であり、焦げ付きが出た場合に全額代位弁済するというスキームも、政治によって決定されたものです。
 当然ですが、国会で承認がなければ制度運用も始まらないし、予算も執行できないからです。

 政治家は国民が選挙で選んでいるのであり、その失政の責は国民が負うということは当然の原理です。
 個別の政治課題に落とし込むと、あまりにも漠然としていて役人の言い逃れのように誤解されるかもしれませんが、救済は政治決断しろ。でもそのツケに税金は使うな。というのはあまりにも「お任せ民主主義」ではないでしょうか?
 新聞記事ならこれでいいのでしょうけれど。

2012年1月7日土曜日

第10次産業とは・・・?

三重大学の児玉先生のブログ「希望開発」に面白い記事がありました。

 農林水産資源を使って新商品や新サービスを開発し、製造・提供するビジネスは、一般的に第6次産業と呼ばれます。
 農林水産業(第1次産業なので)=1
 製造業(第2次産業なので)=2
 販売業・サービス業(第3次産業なので)=3
 1+2+3=6
 で、6次産業。

 これは誰が言い始めたのかよくは知りませんが、すごくセンスがいいと思います。また、いわゆる地域おこしビジネスとしてもスタンダードな手法になっています。
 
 しかし、日本全国いたるところで取り組まれているわりには、大きな成功事例が決して次々と輩出はしないという非常に難しいビジネスでもあります。
 その地域で栽培が盛んな農産物とか、よく獲れる魚なんかを使った加工食品とかメニューの開発は、その地域の中では目新しいものだとしても、より広く地域外のマーケットにどんどん売れるほど魅力がある商品かというと、残念ながら必ずしもそうではありません。
 なので、「6次産業」の隆盛に乗っかって、行政が法律を作ったり、商工団体を経由して事業化を支援したりしている例は山ほどあっても、大成功しているのは、(皮肉なことに)実は行政とは一定の距離を保って、独立独歩でビジネスを進めている伊賀のモクモク手づくりファームだったりします。

 児玉先生の話は、第6次産業の高付加価値化を通じた差別化のために、特許や実用新案、意匠などの知的財産(児玉先生によると知財は第4次産業なのだそうです)を活用し、1+2+3+4=10の、第10次産業にしていこうというものです。
 非常に面白い視点だと思います。

 数年前は、アメリカが知的財産権を積極的に活用しようという、いわゆるプロパテントだったことを受けて、日本でも知財をもっと活用しよう、みたいな政治的スローガンが掲げられ、国や都道府県がこぞって「知財振興計画」だの「知財活用ビジョン」だのの作文を作り上げました。
 しかし、そのほとんどは「知財教育のために小学校で発明コンテストを行う」とかいったたぐいの内容だったため、リーマンショックで世界景気が冷え込むと、たちまち知財ブームが終わってしまった観があります。

 もちろん、どういう時代情勢であろうと、知財が重要なのは言うまでもありません。
 卑近な例では、せっかく中小企業が開発した新商品のネーミングが、事前に商標の調査を怠ったためにかぶってしまったとかいう事例も散見されます。事業者の無知が悔やまれます。
 また、商品やサービスにも、単に原材料に特産品を使ったとかのレベルでなく、その農産物の効用を生かし、たとえば特保にまでブラッシュアップするとかの、強い開発力が求められます。

 大学が技術革新の面で6次産業の10次産業化に貢献することはもちろんなのですが、それ以前の「前さばき」として、知的財産とはそもそも何か、何のために必要なのか、といった啓蒙から、知財を活用したいと考える中小企業者や生産者が、実際に専門家と相談できるような支援体制を作るなどの地道な基盤づくりが欠かせないと思います。

(補足) 
 もくもくの木村社長によると、6次産業を1+2+3=6で説明するのは正しくないそうです。
 そうではなくて1×2×3=6という「掛け算」であるべきだそうです。つまり、1も2も3も、どれが欠けてもゼロになってしまう。なので掛け算だ、という話を聞いてなるほどと思ったことがあります。
 そうすると、知財活用も「第24次産業」になってしまうのだろうけど、これではさすがにゴロが悪すぎるので、今回は「足し算説」に従って記事を書きました。

2012年1月6日金曜日

はんわし 初詣めぐり

今日も津市はかなり冷え込みました。
 昼休み、三重県庁周辺の散歩をしているはんわしですが、季節がら初詣ツアーをしてみました。

 まずは、比佐豆知(ひさずち)神社です。
 津市鳥居町にあって、スーパーマルヤスのある交差点を津市街地の方向へと曲がり(県庁からは左折にあたる)、100mほど行って左側の高台にあります。



 阜嵐健さんのホームページ「延喜式神社の調査」によると、祭神は火之迦具土神(ひのかぐつちのかみ)ほか。
 社宝の高麗狛犬に記されている年号によれば、約1300年前から現地に鎮座しており、平安時代初期に朝廷が幣帛していた神社のリストである延喜式にも名前がある、いわゆる式内社です。
 江戸時代に入ると、津藩藩主であった藤堂家の帰依が厚く、毎年の大祭には、藩主を始めとして領内の人民の多数の崇敬があったとのこと。
 
 実際にお参りしてみると、境内からは安濃川を挟んで津市街地が眼下に望め、いかにも神様がご鎮座するにふさわしい地勢であるように感じます。市街地から見ると、川の上にある高台のうっそうとした木立の中に神社が建っているのが仰ぎ見えたのでしょう。
 しかし現在は周辺もすっかり都市化してしまい、幹線道路が目の前を通り、向かい側は団地、どこかのレストランからランチの良い香りが漂ってきます。
近鉄電車が通過する轟音も響いてきます。


 境内隣は三重県神社庁のビルが建っています。
 ちなみに写真左に半分写っている石燈籠は、元は福山藩(広島県)の江戸屋敷にあったもので、縁あって比佐豆知神社に移築されたとの由緒書きが立っています。

 ここをお参りした後、安濃川沿いに三重県警察本部を通り過ぎ、左折すると、津市きっての古刹である塔世山四天王寺があります。


 四天王寺公式ホームページによれば、曹洞宗の中本山であり、推古天皇の勅願を受けて聖徳太子が建立したと伝えられており、実際の建立時期は7世紀頃のことだそうです。

 その後、度々の兵乱や戦火で焼失と再興を繰り返しましたが、元和5年(1619年)に安濃津城に入国した藤堂高虎が改築、二代目藩主高次が寛永14年(1637年)に寺領を寄進したことにより、寺勢を取り戻したそうです。
 現在の本堂は、太平洋戦争で焼失後、当時の住職により托鉢行にて再建されたものでとのこと。
  
 本堂には釈迦如来と思われる施無畏印のお姿の立像があり、これを参拝することができます。
 寺宝として薬師如来像や聖徳太子像、藤堂高虎の肖像画など多数の重要文化財もあるそうです。
 
 ちょうど寒の入り。
 境内に鮮やかに咲いていたサザンカも記念に撮っておきました。
 
 山門を左手に曲がって進めば、三重県勤労者福祉会館や三重県合同ビルなどがあり、県庁はすぐそばです。この間、約1時間ほどの散歩です。

2012年1月5日木曜日

産業創出というまぼろし

1月3日付けの日本経済新聞に
 産業創出へ新法 経産相  子育て・介護・省エネ分野
 という記事が載っていました。枝野幸男経済産業大臣が日経新聞社の単独インタビューに答えたものです。

 概要は
・枝野経産相は「子育て」「医療・介護」「省エネルギー」の3分野で新産業を創出するため、新法を制定する方針を表明した。
・少子高齢化やエネルギー制約といった日本経済が直面する課題の解決を目指すとともに、新産業創出を支援して潜在需要を掘り起こす。政府が今年半ばにまとめる日本再生戦略の柱と位置付ける考え。
・枝野大臣は将来への不安が高まっている現状を踏まえ、「攻めの経済政策が必要だ」と強調。今月中に召集される通常国会に「課題対応型事業の促進法案を提出する」と述べた。

 具体的には
・支援対象とする新産業は、医療機関と民間企業が連携した高齢者向けの健康維持サービス、都市部の24時間保育サービスなどを想定。介護ロボットの開発など製造業も対象とする。
・省エネ分野ではスマートメーター(次世代電力計)を使った家庭向け節電サービスなどを支援する。
・まず経産省と厚生労働省などの関係省庁が製品・サービスの安全性、教育訓練などに関する指針を策定。これに沿って対象事業を認定し、政策金融機関の融資などで事業者の資金調達を支援する。新商品やサービスの品質評価制度も整える。
 とのことです。(日本経済新聞Web刊より)

 いかにも素晴らしい法案のような気がします。
 しかし、やや先走って結論めいたことを言えば、おそらくこれによって新産業は創出されないでしょう。このことは断言できます。

 バブル崩壊から今まで営々と20年間、経済産業省によってベンチャー支援だのの新産業創出と称する法律が作られ、成長戦略といったたぐいの、国の産業政策が目指すべき方向性なるものが提唱されました。
 その結果はどうか。
 ことごとく失敗の連続です。
 あまりにも早い世界経済の変化、科学技術の革新、ビジネスモデルの進化などに着いていくことはできず、いたずらに税金を投入しただけに終わっています。

 理由は、言うまでもなく、政府が(もっとはっきり言えば経産省の官僚が)これから「成長する産業」などを予見することはできないからです。
 政府の役割は、すでに多くの民間企業が取り組んでいる「子育て」「医療・介護」「省エネルギー」の3つの分野にターゲティングすることなく、意欲と能力のある誰もが事業を起こし、継続できるように、過剰な公的負担や法規制を見直し、合理的な水準にすることです。
 これならおカネもかかりませんし、政府が唱える前からこれらの3分野に着手していた企業の先行者利益を失わせる不公平も起こりません。何よりいったん国民から税金を集め、また恣意的に再配分するという政府の非効率が発生しません。

 野田首相は消費税の引き上げに意欲を示しています。日本の財政は破たん寸前で、先進国で最悪の水準なので、消費税の引き上げは万やむを得ない感は確かにあります。
 しかし、国家公務員の人件費削減は手付かずだし、ダムや新幹線の建設続行など、危機的状況にある財政状況を正確に理解しているのか疑わしい支出も数多くあります。
 やはり経済の活性化は(名古屋市のような)減税が王道であり、企業や経営者の活動をなるべく自由にさせることが結果的に新産業創出の近道であることを銘記すべきです。

2012年1月4日水曜日

三重県護国神社でしんみりする

今日は仕事始め。
 津市は晴天でしたが大変寒い一日で、夕方からは小雪がちらついていました。

 昼休み、散歩がてら県庁近くにある三重県護国神社に立ち寄ってみました。


 お参りして、ふと横を見ると社殿の右横に「遺品資料館」という看板が出ています。

 護国神社には何度か来ていますが、こんな資料館があることは知りませんでした。お正月のような期間限定の公開なのでしょうか?

 中に入ると、日露戦争から太平洋戦争までの、勲章、感状、軍服、出征記念の日の丸の寄せ書き、写真などが所狭しと陳列されています。
 三重県は香良洲や明野に航空基地があったためか、戦闘機操縦士の軍服(飛行服)が展示されていたのが目を引きました。

 しかし、圧巻なのは手紙、葉書などの郵便物です。
 靖国神社のように大量の遺書は展示されていませんでしたが、兵隊さんが戦地から家族に近況を送った手紙や、部下の戦死を悼む上官から遺族への手紙など、実物なのでものすごい迫力があります。

 おそらく上官は高等教育を受け、かつたくさんの戦没者家族に同様の手紙を書いたでしょうからやや形式的な(しかも妙に美文調の)文面に感じました。
 しかし、兵隊さんたちが書いた手紙は兵舎や戦場での限られた時間に書いたためか乱筆乱文、しかし大変な苦労がしのばれます。

 多くの写真も展示されていましたが、当然ながら写っている兵隊さんは20代と思われる青年たちばかりです。
 三重県ホームページ(歴史の情報蔵)によると、第二次世界大戦による三重県出身の陸海軍の軍人・軍属の戦没者は46,383人(なんという人数!)。
 写真のうちの少なくない兵隊さんは、ここ護国神社に祀られているのでしょう。

 見学を終えて鳥居から道路に出ると、ちょうど正面にある予備校のビルから、午前の授業を終えたのであろうたくさんの受験生たちが、にぎやかに出てきたところでした。
 65年前の若者と、今の若者の、鮮やかな対比でした。

2012年1月3日火曜日

「人生、ここにあり!」を見た

 ぽっかり丸一日休みになったので、久しぶりに伊勢市にある名画座「進富座」に行ってきました。ここは通常のシネコンでは上映しないようなややマイナーな映画とか、ヨーロッパ映画、アジア映画、ドキュメンタリーなどが多くかかる小屋です。
 今日はイタリア映画の「人生! ここにあり」に行ってきました。
 この作品を選んだのは完全に偶然で、たまたま進富座のサイトで見て面白そうだと思ったので足を運んだだけだったのですが、なかなかの佳作でした。

 ストーリーは、映画の公式ホームページをご覧いただきたいのですが、はんわし的にコメントすれば、これは間違いなく「ソーシャルビジネス(コミュニティビジネス)」をテーマにした作品です。

 30万人以上とも言われる日本の精神疾患による入院患者数は、世界的に見ても非常に高い人口比率であることが特徴です。そのほとんどは社会的入院といわれるもの・・・自宅に帰っても家族がケアできない、患者に仕事がなく自立できないなどの理由で、仕方なく入院している・・・です。

 イタリアは1978年、精神病棟を閉鎖して入院を禁止し、患者を地域に戻すことを進める法律(バザーリア法)が制定されました。しかし、社会の偏見もあって就職できない患者、職業訓練が受けられない患者も多く、どのように彼らの自立を促すかが大きな社会的課題となっていました。

 映画の主人公は労働組合の闘志ですが、執行部との意見の食い違いから、ある協同組合のマネージャーに転勤させられます。
 そこは精神病棟の中に事務所があり、精神疾患者の自立のために封筒の切手貼りのような軽作業を請け負っている組合でした。日本でいうと授産施設のようなところだと思います。
 ある日、主人公は組合員(精神疾患を患っており、ひと癖もふた癖もあるメンバー)の中に、デザインの才能がある人間がいることを発見します。
 切手貼りのままでは未来がない。自分たちの才能を生かして床(フローリング貼り)の工事請負に進出することを組合員の総会で決議するのですが・・・
 実際の工事現場に行くと、あれやこれやトラブルとか失敗の連続。
 もうこれ以上の事業継続は不可能かと思われたところで、瓢箪から駒、一発逆転のサクセスストーリーが始まる、という筋書きです。

 映画そのものはコメディタッチで、テーマがテーマだけに日本人から見るときわどい描写やサイドストーリーもあり、「現実はそう甘くはいかんやろ・・・」という展開ではあります。
 しかし、この物語は北イタリアのトリエステという町に実際にある「ノンチェッロ協同組合」の実話がベースになっているとのことなので、イタリアは精神医療の分野でも、患者や障がい者の雇用確保の分野でも、日本とは比較にならないほど進んでいるのは事実のようです。

 患者の雇用確保という社会的な課題を、患者自身のマンパワーで、建築業というビジネスの手法によって解決しているこの協同組合は、まさに「ソーシャルビジネス(コミュニティビジネス)」そのものです。

 イタリアは、スペインとかポルトガルと並んで国民がお気楽なラテン系で、経済的な繁栄は今一つ、社会秩序も今一つ、というネガティブなイメージがあるものの、ファッションや皮革製品、スポーツカーなど高付加価値の職人仕事が強く残っており、日本との貿易収支はしっかり黒字になっています。何より(行ったことないけど)国民がみんな楽しそうに暮らしています。

 軽々には言えませんが、日本もイタリアのような「成熟社会」を大いに参考にすべきです。
 日本国内にはまだまだ解決すべき課題が多い。何が何でも経済成長し、パイの拡大で解決を先送ってきた「日本方式」の破たんは誰の目にも明らかです。

■人生、ここにあり! 公式ホームページ(リンクはこちら

2012年1月1日日曜日

2012年 あけましておめでとうございます

伊勢市の元日。朝は薄曇り。
 しかし、伊勢と鳥羽、志摩の中心にそびえる霊峰 朝熊岳(あさまだけ)の稜線から、初日の出を拝むことができました


 今年はどんな年になるのか。
 それは恐らく誰にもわかりませんが、自分としては全力を尽くし、納得できる一年にしたいと思います。
 ただ「全力を尽くす」といっても、わしはド根性とか、信念は岩をも通すとかの精神論は大キライな人間なので、体と心のバランスが壊れない程度に、ぼちぼち行きたいと思います。


 伊勢神宮外宮に初詣に行ったのですが、式年遷宮の展示普及施設として4月7日にオープン予定の「せんぐう館」が、参拝客の休憩施設として開放されていました。
 壁はガラス張りで、勾玉池(まがたまいけ)を臨むことができます。(中央には神楽などが奉納される水上舞台があります。)
 以前も書きましたが、着工前にはうっそうとした木立だったものが刈り払われ、妙にきれいに整備されていました。勾玉池もだいぶ護岸が前出しされていましたが、大雨の時に水は溢れないのでしょうか?